パソコンやスマートフォンの普及により『プライベートで固定電話の電話対応をする機会が減った。』という人も多いかと思います。

しかし、ビジネスでは、顧客との接点となる様々なツールが増えてきたとはいえ、まだまだ電話対応は健在です。

また、他のツールで上手く意思疎通が出来ない時、トラブルや緊急時に取引先や、顧客は代表電話等の固定電話へ問合せをします。

特に、このコロナ渦で訪問客が減った分、『会社の電話が鳴る回数が増えたかも…。』と感じておられる方も多いのではないでしょうか。

訪問ではなくても、会社の代表電話を受けるということは、その電話対応が“会社の顔”となるということです。

また電話は、いつ読んでもらえるかわからないチャットやメールではない直接のやり取りになるので、急ぎの用件やトラブルなど、ビジネスにおいて影響を与えかねない用件である場合が多いので、電話対応は、非常に重要だと言えます。

電話では、相手の顔が見えず、相手からもこちらの顔が見えないので、声と話し方で、会社の印象の良し悪しが評価されることになります。

明るく、感謝の気持ちを込めて話すことが大切です。

今回は、会社の印象をよくするための電話対応の基本マナーを例文付きで解説します。

【例文付き】電話対応の正しい言葉遣い

ビジネス上の電話対応では、敬語をうまく使いこなすことが大切です。

顧客を敬い、自分はへりくだることで、相手への尊敬の念を表すことができるため、正しい言葉遣いをするということは、信頼関係の構築において、必要不可欠な要素なのです。

また、その信頼関係が顧客はもちろん、様々な取引先とのスムーズな取引へとつながります。

・尊敬語…敬う相手の動作や状態を表すときに使う。
お客様のことを表すときや、社内では、上司など目上の人のことを表すときに使用する言葉。

・謙譲語…自分や自分の身内のことをへりくだるときに使う。
顧客と話すときに、自分のことや、(上司も含め)社内の人の動作や状態につけて表す言葉。

例文①:「言う」の例文

・尊敬語:「○○様がおっしゃったように、Aの商品はBのセットにも入っております。」
・謙譲語:「部長の田中が、そのように申しております。」

例文②:「来る」の例文

・尊敬語:「本日、御社営業部の田中様が弊社にお越しになられたのですが、その際~…」
・謙譲語:「今週中に必要書類を揃えて、御社に参りますので、ご都合をお聞かせいただけますでしょうか。」

例文③:「する」の例文

・尊敬語:「住所変更をなさるとのことですので、新しい住所をお伺いさせていただいてもよろしいでしょうか。」
・謙譲語:「早急に資料を揃えて返送いたします。」

例文④:「いる」の例文

・尊敬語:「広報部の加藤様はいらっしゃいますでしょうか。」
・謙譲語:「私より詳しい者がおりますので、お電話代わらせていただきます。」

例文⑤:「見る」の例文

・尊敬語:「弊社HPをご覧いただき、ありがとうございます。」
・謙譲語:「御社の資料をただいま拝見しているのですが、~…」

例文⑥:「知っている」の例文

・尊敬語:「Aの商品が4月から、リニューアルすることはご存じでしょうか。」
・謙譲語:「はい。存じております。」

上記のように、動作をする主語が誰になるのかによって、言葉の形が変わりますので、咄嗟に正しい言葉遣いが出るように、普段から使い慣れておくことが大切です。

特に、敬語の使い分けに慣れていない新入社員がやってしまいがちなのが、敬称の使い方です。

顧客と応対するときは、社内の人は、自分の身内と考えた言葉遣いをするのが正しいので、敬称は不要です。

例え、上司であっても社内の人間のことを言うときには、謙譲語を使いましょう。

また、社長や部長といった役職名は、名前の後ろに付けると、敬称と同じ役割を果たすことになるので、役職名は付けない、もしくは、名前の前に付けて「社長の山田」と表現するとよいです。

×間違った例:「山田社長は只今、外出していらっしゃいます。」
〇正しい例:「社長の山田は、只今、外出しております。」「山田は只今、外出しております。」

【一覧付き】接遇用語を上手に使いこなして、好印象の電話対応に!

接遇用語とは、顧客と応対するときに使用する言葉です。
下記では、ビジネス上の電話対応で使用頻度の高い接遇用語を、一覧でまとめています。

★電話対応でよく使う接遇用語一覧表★

★電話対応でよく使う接遇用語例★
・お待たせするとき:「申し訳ございませんが、少々お待ちいただけますでしょうか。」

・お待たせしたとき:「申し訳ございません。大変お待たせいたしました。」

・名前を聞くとき:「恐れ入りますが、お名前をお教えいただけますでしょうか。」

・用件を聞くとき:「差し支えなければ、どのようなご用件かお聞かせいただけますでしょうか。」

・お願いをするとき:「お手数をおかけいたしますが、よろしくお願いいたします。」
「恐れ入りますが、資料のご郵送をお願いできますでしょうか。」

電話対応で信頼を深める言葉遣いの例

電話対応で、相手からの信頼を得るためには、いくつかのポイントがあります。

電話対応では、特に言った・言ってないでクレームに発展することもありますので、この電話での対応の責任は自分で持つという心構えが必要です。

ですので、電話対応をしているのは誰なのかをしっかりと名乗ることで、相手からの信頼を得られやすくなります。

・名乗りの例:
「私、田中が確かにお伺いいたしました。」
「私、田中が担当させていただきます。」

次に、時間や期限を明確にしてお伝えするということです。

特に、電話対応では、すぐに結果が知りたいなど、お急ぎの用件でお電話をされている場合が多いですので、分かる範囲で、いつまでに・いつ頃など、時間をお伝えするとよいでしょう。

・返事の期限を告げる例:
「誠に申し訳ございませんが、その件は只今、わかりかねますので、お調べいたしましてお返事をさせていただきたいと存じます。〇分ほど、お時間を頂けますでしょうか。」

「只今、詳しくわかる担当の者が外出しております。このお電話の後すぐに、私から担当の者にその旨連絡いたしますが、担当の戻り予定が午後3時頃になりますので、午後3時以降に、担当の者から折り返しご連絡させて頂いてもよろしいでしょうか。」

最後に、当然ですが、説明が明確であることが相手からの信頼を得るためには、大切です。

普段から、問い合わせの多い内容は特に、明確に説明できるように練習をしておくとよいでしょう。

自分では対応できるか分からないのに、咄嗟に対応しますと言ったり、明確な答えがわからないのに自己判断で回答してしまったりすると、逆に顧客の信頼を大きく落とすことになります。

わからないときは「申し訳ございませんが、私ではすぐにお答えできかねますので、確認後折り返しご連絡を差し上げてもよろしいでしょうか。」など、正直に対応することが大切です。

その時は、相手の方も頭に血が上っていて、「わからない。」と対応することで怒ることもあるかもしれませんが、それでも、その場しのぎの回答をしないことは、あとあとの問題に繋げないためにも、しっかりと心がけておきましょう。

また、電話対応の際に気配りの一言をプラスできると、より良い印象を相手に与えることができます。

・気配りの一言例:改めて電話すると言われて、特に伝言もなかった場合
「○○様よりお電話いただきましたことは、担当の鈴木に申し伝えます。」

電話対応で好感を持たれる話し方のコツ

感じが良い電話対応のポイントは、上述した敬語や接遇用語だけではありません。
声の出し方や話すスピード、話し方そのものによっても、印象は左右されます。

いくら正しい敬語を使っていても、小さい声でぼそぼそと話してしまっては、印象はよくないでしょう。

聞き取りやすい、ハキハキとした明るい声で電話対応をすることが、好印象の電話対応には不可欠です。

ハキハキとした印象の良い話し方をするためのコツは、まず、姿勢にあります。

メモを取るのに、顔を下に向けてしまえば、声がこもって暗い印象になってしまうので、通常の接客対応時のように前を向いて正しい姿勢で電話対応を行なうとよいです。

なぜなら、前を向いて、目に言葉が届くように話すためには「呼吸」が重要だからです。

呼吸を整えるためには「姿勢」を正すことが必要。「姿勢」という言葉が「姿に勢い」と書く理由が、ここに表れているともいえるでしょう。

また、姿勢と同じように、表情も通常の接客時と同じように笑顔で電話対応をすることが大切です。

お互いに顔が見えないのだから、『笑顔でいる必要なんてないのでは?』とお考えになる方もいるかと思いますが、意外と表情は、感情となって声に乗って相手に伝わるものなのです。

どんなに丁寧な話し方をしていても、無表情であったり、しんどいといった表情で電話対応をしてしまえば、心のこもっていない対応だと思われてしまいます。

良い笑顔は相手に安心と信頼感を与えます。
実際に笑顔で対応すると、笑声となって相手に真心が伝わるものです。

良い笑声を出すためには、良い笑顔で電話対応をすることが大切。

良い笑顔の条件とは、

・心から笑うこと
・感謝と歓迎の気持ちを持つこと
・表情筋を使うこと
・歯を見せること
・口角を上げるだけではなく、目も一緒に笑うこと

です。

これらを意識して、電話対応をすることで、安心と信頼感を得られる、好印象の電話対応をすることができるでしょう。

マニュアルはあくまで一例。いつでも自分の言葉で、相手に気持ちを伝えられる電話対応をすることが大切です!

今回、電話対応の基本マナーを例文を交えてご紹介しましたが、これらは、あくまでも一例です。

どんな状況・気持ちでお電話をかけられるかは、お客様次第ですし、その時にどんな言葉をかけるのかに、正解はありません。

けれども、不正解の電話対応はあります。

間違った対応をしないためにも、数々の状況を想定して、いつでも自分の言葉で、正しい言葉遣い・マナー・思いやりで電話対応ができるようになるのが理想です。

しかし、どんなに練習をしたとしても、電話対応は実践しないと身につかないものです。

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