「ダイバーシティ」という言葉を聞いたことはありますか?
「ダイバーシティ」とは「多様性」という意味で、「ダイバーシティ・マネジメント」というと、従業員の多様性を競争力として活かしていく経営・人事戦略を指しています。
日本では90年代から注目されはじめた概念で、当初は「ダイバーシティ・マネジメント=女性活用」でした。
しかし、社会情勢が大きく変化しつつある現在では、ダイバーシティ・マネジメントの示す意味も変わってきています。
【目次】
現在のダイバーシティ・マネジメントとは
一昔前まで、ダイバーシティ・マネジメントといえば女性活用とほぼ同義でした。
採用において男女差別をしない、育休や産休制度を導入したり、託児所をオフィスに併設したりといった施策をダイバーシティ・マネジメントと呼んでいたのです。
しかし、現在におけるダイバーシティ・マネジメントはさらに拡張された概念となっています。
女性だけでなく、高齢者や障害者、外国人やLGBT(性的マイノリティ)などの活用を含んだ経営・人事戦略を指してダイバーシティ・マネジメントと呼ぶように変化してきました。
ダイバーシティ・マネジメントが拡張された4つの背景
このように意味合いが変化してきた背景としては、以下のような社会情勢の変化が原因として挙げられるでしょう。
1.少子高齢化による労働人口の減少
少子高齢化によって労働人口が年々減少しつつあります。そのため、従来は日本人男性しか労働力として考えてこなかった企業でも、女性や外国人を活用しなければ人手を確保できなくなってきています。
出典:国立社会保障・人口問題研究所 日本の将来推計人口(平成24年1月推計)Ⅱ推計結果の概要 図1-3
2.外国人労働者の増加
ここ十数年にわたって日本で働く外国人労働者は増加の一途をたどっています。
先に述べた労働人口の減少のよる人手不足でニーズが増加していることも一因ですが、企業のグローバル化が進んで海外市場の知識や語学に堪能な人材が求められていることも要因のひとつといえるでしょう。
文化の違いから軋轢を生んでしまうこともありますが、従業員教育や受け入れ環境の整備によって定着が進んできています。
3.人権意識の高まり
男女雇用機会均等法の施行をひとつのきっかけとする男女差別の禁止は元より、障害者や外国人、性的マイノリティへの差別が許されないことだとする人権意識がかなり浸透してきています。
これまで労働市場を支配してきた男性中心主義的な価値観は、いまや消費者に受け入れられません。
企業が社会的責任(CSR)を果たす上で、ダイバーシティ・マネジメントへの取り組みが欠かせなくなりつつあります。
4.消費者の価値観の多様化
高度成長期やバブル時代にあったような大量生産・大量消費のモデルはすでに通用しなくなっています。
消費者の価値観は多様化しており、市場は無数のニッチが組み合わさって存在するようになりました。
そんな環境下では、ひとつの価値観しか持たない企業は、消費者の多様なニーズに合う製品・サービスの提供ができません。
企業の内部にも多様な価値観を持つ人材を招き入れ、細分化された消費者のニーズに答えていくことが必要だと考えられはじめています。
ダイバーシティ・マネジメントの実践事例
「ダイバーシティ・マネジメントなんて一部の大企業だけの取り組みで、うちのような中小企業には関係ない」と思われる方は、少なくありません。
しかし、ダイバーシティ・マネジメントへの取り組みは、大企業の専売特許ではありません。大企業が導入している施策であっても、中小企業が参考にできるものはたくさんあります。また、実際に既に導入し成功している中小企業、零細企業もあります。
企業や経済団体が取りまとめている事例集を紹介しますので、自社に活用できそうな事例を探してみてください。
中小企業のためのダイバーシティ推進ガイドブック(東京商工会議所)
東京商工会議所が発行しているダイバーシティ・マネジメント導入のガイドブックです。
女性や高齢者、外国人など、さまざまな人材の活用事例を紹介しており、ケーススタディにぴったりの資料となっています。
参考:ダイバーシティ | 調査・ガイドライン |東京商工会議所
新・ダイバーシティ経営企業100選(経済産業省)
経済産業省が運営する「ダイバーシティ経営によって企業価値向上を果たした企業」を表彰する事業です。
大企業の表彰が多いですが、従業員数数十名規模の企業も少なくありません。
平成24年から続いている事業で、多数の事例が紹介されているので、自社の参考にできそうな事例を探してみましょう。
ダイバーシティ促進に向けた取組み事例集(経団連)
経団連が取りまとめたダイバーシティ・マネジメントを促進する企業の事例集です。
幅広い規模や業種の企業におけるダイバーシティ・マネジメントの事例がまとめられており、各社の施策について詳細に述べられています。
おわりに
いかがでしたか? 現在の社会情勢を踏まえると、ダイバーシティ・マネジメントに無関係でいられる企業はもはや存在しないと言っても過言ではありません。
自社には関係ないと思わず、できることから取り組みをはじめていくことをおすすめします。