メールやチャットが頻繫に使われるようになった現代においても、電話対応は、ビジネスシーンにとって欠かせないものです。
その電話対応の中でも、今回は「正しい折返しの方法」 をご紹介します。
【目次】
電話の折り返しが必要な場面
折り返しの対応をすること(自分以外の人宛の電話で、その人が電話に出られない時の電話対応)に苦手意識がある方も、正しい方法を知っておくことでネガティブな気持ちが軽減されて、相手に好印象を持ってもらうことができます。
まずは、ビジネスシーンにおいて、どういった場合に折り返しの電話が必要になるのか、例文とともにポイントとして押さえておきましょう。
不在の社員宛の電話を受けた
担当者がたまたま席を外していたり、外出中だったり、会議中や打ち合わせ中、もしくは別の電話の対応中などの理由で、電話に出られないことは必ず起こります。
もし会社で「○○(名前)さんはいらっしゃいますか」と、不在の担当者宛の電話を受けたら、基本的には伝言を承るか、折返しの対応になります。
「あいにく○○(名前)は不在です」と、状況だけ伝えるのは不親切と言えるでしょう。顧客から「不在なのであれば、○○(名前)さんからあとで折返しお電話ください」と、折り返しの電話を求められる前に、自分から「申し訳ございません。あいにく○○(名前)はただいま△△中のため、戻り次第(終わり次第)(□時頃に)、折り返しご連絡いたします。よろしいでしょうか」と、提案するといいでしょう。
回答に時間がかかる質問を受けた
電話相手から質問を受けることも、ビジネスシーンではよくあることです。しかし、その場ですぐに回答ができる質問もあれば、別部署に確認を取らなければ分からなかったり、上司の了承を得る必要があったり、しっかりと調べてから回答したいということもあるのではないでしょうか。
電話相手を長く保留で待たせておくことは、時間を奪っていることになります。時間がかかるとわかった時点で、すぐに折返しの提案をすると良いでしょう。
「申し訳ございません。確認に少々お時間をいただきたいので、○分後に私から折返しのご連絡をさせていただいてもよろしいでしょうか」と、具体的な折返しの時間を提示すると、電話相手も「いつ電話がかかってくるのだろう」と思わずに済みます。
もしかしたら「○分後は都合が悪いので、1時間後にお電話ください」などと、時間の指定が入る場合もありますので、お互いの都合の良い時間帯を決めてから折り返すようにしましょう。
不在着信、もしくは留守番電話に折り返しを求めるメッセージが入っていた
営業時間外に会社の電話に着信が残っていた、もしくは会社用のスマホに着信が残っていた時も、ケースバイケースで折返しが必要です。着信番号が知っている顧客や取引先だったり、知らない番号でも短時間で複数回着信が入っていたり、留守番電話メッセージが入っている場合は、折返しの電話をした方が良いでしょう。
相手から改めて電話がかかってくる可能性もありますが、特に知っている顧客や取引先であれば、こちらから折り返し電話をすると印象が良くなります。
知らない番号からでも短時間で何度も着信がある場合は、新規顧客の可能性もあれば、既存顧客や取引先がいつもとは違う番号でかけてきているか、何かしら急ぎやトラブルの可能性がありますので、確認のためにも折返し電話をしてみると良いでしょう。
ただし、知らない電話番号、特にフリーダイヤル番号や050番号などからの着信の場合は、1度インターネットで番号検索をしてください。営業電話などの可能性もあります。
留守番電話メッセージが残っていた場合は、伝言だけで済む場合もありますので、メッセージの用件にあわせて折り返しの有無を決める必要があります。 着信が何度もある場合は留守番電話メッセージに何か入っていないか確認を
相手の電話代が気になる
法人同士の電話であれば基本的に気にする必要はありませんが、個人のお客様の場合、こちらがフリーダイヤル番号でなければ、個人の方に通話料が発生します。
いただいた電話の用件が長引くような内容であれば、折り返しの電話を提案する方がベター。中には通話料を気にして「早くして!」と苛立ってしまう方や、話を聞き終わる前に切ってしまう方もいるので、焦って間違ったことを言わないためにも折り返しの電話を提案してみましょう。
「お電話代がかかってしまいますので、こちらから折り返しお電話を差し上げてもよろしいでしょうか」と聞いてみると良いでしょう。
折り返しが必要な時にやるべきこと
折返しの電話を相手へ提案する際に、「確認して折り返しご連絡いたします」や、「○○から折り返しお電話させていただきます」と伝えるだけでは不十分と言えるでしょう。
折り返しの電話を提案するにあたってのポイントを押さえておかないと、場合によってはクレームに発展して新規契約が破断、既存契約が解除なんていう可能性もあります。
大きなトラブルにならないためにも、折り返しの電話が必要な時にやるべきことのポイントをご紹介します。
ポイント1:社名、名前、連絡先を確認してメモをとる
メモを取ることは、電話を受ける際の基本と言えます。電話の内容を記憶にとどめておくには限界がありますので、受電する前にメモとペンを用意して、会話をしながらメモに残す癖をつけましましょう。
特に、折返し先の「社名」「名前」「連絡先」は、最低限の情報として必要です。忘れずに確認して、メモに残す必要があります。「折り返しご連絡します」と伝えておきながら、どこの誰に連絡するのかわからない・・・なんていうことが起こってしまうと、折返しの約束を破ってしまう結果に。わざとではなくとも、顧客や取引先から信頼を失ってしまいます。
パソコンのメモ帳を使ってもOKです。担当者のメールへそのまま報告することも出来ます。
ポイント2:用件を確認する
不在の担当者宛の電話を受けたとき、折返しの電話を提案してから、電話相手の社名、名前を再度確認して、連絡先をメモして・・・完璧!ではありません。相手がどのような用件で、不在の担当者宛に電話をしてきたのかを確認する必要があります。
用件によっては、担当者から早急に折返しの電話をしたほうがいい場合もあります。
また、担当者が折返しの電話をしてから初めて用件を聞くことによって、「その件は確認を取ってからじゃないと回答できないので、もう一度かけ直します」と、二度手間になる可能性も高いのです。
ただし、用件の聞き方にも注意が必要です。「ご用件は?」なんて聞き方をしてしまうと相手を不快にさせてしまいます。不在の担当者宛の電話を受けた場合は、「もしよろしければ、簡単にご用件をお伺いして担当者に申し伝えます。いかがでしょうか」と、丁寧に確認しましょう。用件を言うか言わないかは、電話相手が判断します。
「用件は○○さんに直接言うので結構です」と断られた場合は、それ以上は聞かないようにしましょう。
ポイント3:用件によっては、別の担当者で対応できないか確認する
用件によっては、不在の担当者でなくとも返答できる場合があります。担当者以外でも解決できるなら、折返しの手間も時間も不要になりますので、双方にとって効率的ですし、相手の方は、聞きたい内容がすぐに聞けるので満足度の向上につながります。
用件を聞いて別の担当者、もしくは自分でも対応できそうだと判断できれば、「もしよろしければ、社内の別の担当者に確認をとりますが、いかがでしょうか」や、「もしよろしければ、私が代わりに対応させていただきますが、よろしいでしょうか」など、電話相手に確認をとるといいでしょう。
ポイント4:担当者のスケジュールを確認し、いつ折返しの電話が出来るのかを具体的に伝える
不在の担当者宛の電話を受けた場合、電話相手に「いつ折返しが出来るのか」を伝えることも大切です。
たとえば、担当者が長期休暇の場合、取引先や担当顧客には前もって「△日~□日は不在にしております。」と自分から連絡をしていることも多いと思いますが、事前の連絡を忘れている可能性もあります。そんなとき、顧客から「早急に対応してほしい事案があるのですが、○○さんはいますか」と電話があったらどうでしょうか。
担当者の予定を確認せずに、「○○は不在のため、折り返しご連絡いたします」のみ伝えて社内にメモを残してしまうと、担当者は、メモを確認することが出来ず、顧客はひたすら折り返しの電話を待つことになります。
待つ時間が長ければ長いほど、焦りから担当者への不信感や怒りの感情が強くなり、クレームに発展する、もしくは最悪の場合は取引解除になってしまいます。
また、顧客が急ぎであることを伝えてくれないケースもあります。特に普段から担当者の対応が早い場合は、顧客はわざわざ急ぎである旨を伝える必要がないので、話してくれないことも多々あります。
こちらから折り返しにかかる時間を伝えなければ、「折返しは5分後くらいだろう」と思っている人もいれば、「遅くとも2~3時間なら折返しがあるだろう」と思っている人など、人によって想定する時間が異なり、その時間と異なれば不快に感じられてしまうのです。
まずは、担当者が「席を外している」のか、「外出中」なのか、それとも「商談中」や「出張中」なのかしっかり確認をしましょう。不在理由が明記されていない場合は「席外し」で良いでしょう。「○○はただいま席を外しておりますので、戻り次第ご連絡いたします」でOK。外出中の場合は、「○○はただいま外出しておりまして、◆時頃に帰社予定です。戻り次第、お電話させていただきます」と、具体的に折り返しができる時間を伝えるようにしましょう。
折り返しの電話を提案するときには、担当者のスケジュール確認が必要
ポイント5:相手の都合の良い時間、都合の悪い時間を聞く
ポイント4で「戻り次第、折返しお電話させていただきます」と伝えた後、続けて相手の都合の良い時間帯、もしくは都合の悪い時間帯を確認できれば更に良いでしょう。
せっかく具体的な時間を伝えていても、電話相手がその時間に電話に出られるとは限りません。
また、戻り次第の連絡では間に合わないという、緊急事態の場合もあります。
「戻り次第、折返しお電話させていただきます。よろしいでしょうか」もしくは、「戻り次第、◆時以降に折り返しご連絡いたします。◆時以降で、△△(電話相手の名前)様のご都合の悪い時間帯はございますか」など、一言添えることで電話相手も自分の都合を言いやすくなります。
電話相手の予定や都合も確認できていれば、担当者も折返しの電話の優先順位がつけやすくなります。
折り返し電話をしたら今度は相手が不在だった・・・というような、何度も電話をかけあう手間もなくなるでしょう。
ポイント6:相手の方の気持ちを汲んで返答する
電話相手の気持ちや状況を汲むこと、そのうえで相手にあわせて返答することも大切です。
たとえば、電話相手の方が急いでいる様子であれば、こちらも真剣な声のトーンで「なるべく早急に確認させていただきます」等と、急いで対応する気持ちがあることを言葉や声のトーンで表現します。
相手が困っている様子にもかかわらず、淡々と「私ではわかりかねますので、担当者が戻り次第、折り返しご連絡いたします」と伝えてしまうと、「この会社は顧客(取引先)を大切にしていない」と思われてしまう可能性もあります。
クレームの場合は、自分が担当者でない場合でも「申し訳ない気持ち」を声で表現しましょう。「大変申し訳ございません。私では状況がわかりかねますので、○○に確認を取り、必ずご連絡いたします。このお話は私、◇◇(自分の名前)が承りました。お待たせしてしまい、本当に申し訳ございません」等、自分ではすぐに解決できないことを謝罪しつつ、責任をもって担当者に伝言し、折り返し電話をすることを伝えます。
電話相手の気持ちをしっかり汲んで表現するか否かで、その後の解決速度、印象も異なると言えるでしょう。
電話の折り返しのマナー
折返しの電話になることを相手に伝えるだけでも、ポイントがいくつかありましたが、実際に折返しの電話を実行するときにも気をつけるべきマナーがあります。
折返しの電話をかけることが苦手な人も、前もってマナーを知っておけば安心材料になるでしょう。
マナー1:できるだけ早く電話をかける
電話相手が「急いでいる」と言わなかったとしても、もらった電話にはなるべく早く折返し電話をすることが基本です。急ぎの案件じゃなさそうだからいいか・・・と、自分の判断で勝手に折返しの電話を翌日にする、なんていうことはNGです。
たとえば、午前10時に電話をもらっていて、「確認次第、折り返しご連絡いたします」と伝えた後、実際に電話をしたのが翌日の午前10時だったら、相手はどう思うでしょうか。
急ぎであっても無くても、電話相手からは何か聞きたいことや確認したいこと、言いたいことがあって連絡が入っているはずです。後回しにされればされるほど、電話相手は「自分のことはどうでもいいんだな」と判断するでしょう。
電話問合せは、急ぎもしくは気持ちが高ぶっていることが多い、というのが最近の傾向です。新規顧客であれば成約に近づいている可能性や、決断タイミングであることが多く、既存顧客であれば、クレームや隠された不満であることが多いのです。だからこそ、折返しの電話は、出来る限り早く対応することがベストと言えます。
マナー2:電話するときの環境を整える
折返しの電話は、いわゆる架電です。電話をするにあたって、環境を整えておくことは大切です。「急いで折返ししなくては!」と思っても、出先の駅のホームから電話をしてしまっては、会話がままなりません。
また、社内であっても、電話の後ろから談笑や怒っている声などが聞こえてくることは好ましくありません。
また、周りは静かであっても走りながら電話をするなども控えましょう。相手との会話に集中できる環境や状態で、発信することがマナーと言えます。
他にも、会話中に大切な内容はメモ出来るように、メモとペンをしっかり用意してから電話をかけることも大切です。
マナー3:理由や状況の報告をしっかり行う
不在の理由や、折返しの電話が遅くなってしまった理由は、折返しの電話の時にもしっかり伝えて、更に一言お詫びすることが大切です。
「私が外出しているときにお電話をいただいていたようで、すぐに対応できず申し訳ございません」や、「会議が長引いてしまい、折り返しの電話が遅くなってしまい大変申し訳ありません」など、お待たせしてしまったことに対して、一言お詫びを入れると好印象です。
また、「確認して、◇時頃に折り返しご連絡いたします」と伝えた後、確認作業が◇時までに間に合わない場合でも、1度、約束の時間までに状況報告で連絡をしましょう。「誠に申し訳ありません。予定よりも確認作業に時間がかかっております。本日中には確認できると思いますので、わかり次第、改めてご連絡させていただいてもよろしいでしょうか」など、お詫びと状況の説明をしっかり行いましょう。
まだ確認ができていないから・・・と、自分の都合で折返しの電話をしないのはマナー違反になってしまいます。
マナー4:相手が不在であれば改めてかけ直す
折返しの電話をした際に、たまたま相手も不在のケースがあります。そんなときは「では、そちらから折り返し電話をください」とは言わず、自分から「改めてお電話いたします」と伝えるのがマナーです。相手から先に電話をかけてもらっているので、相手が不在であっても、もう1度こちらから電話をかけるようにしましょう。
その際に、「何時ごろに戻られるかご存知でしょうか」と確認しておくと、こちらから何度も電話をかけ直す必要がなくなります。
まとめ
折り返し電話を提案する、もしくは実際に折返しの電話をするにあたって、大切なポイントをいくつかご紹介しました。
昔にくらべて、電話を受けたり架けたりすることは明らかに少なくなりました。メールやチャット、SNSメッセンジャーなど、現在の連絡ツールは多岐にわたり、ビジネスシーンにおいても大変便利になりました。しかし、面倒ではあっても、自分の言葉で、自分の声で、自分の感情をのせて伝えられる連絡ツールは電話しかありません。
顧客や取引先との良いコミュニケーションを取るためにも、しっかりポイントを押さえて、相手の気持ちに寄り添った対応を心がけていきましょう。