100%の情熱があるか

起業が成功するかどうかは、その人の持つ熱量次第なのかもしれないと思っている。無一文から始めてアメリカンドリームを叶えた人の言葉に、「99%の情熱はゼロと同じ」というのがある。10%や20%の情熱ではうまくいかないことは想像もできるが、たとえ99%あったとしても、最後までやり遂げられなければ結局やらなかったことと同じといったことだ。「やる気はあった」「惜しかったんだけど…」と言っても、それは言い訳になるだけ。本当にそのことが大好き、あるいはそのことに使命感を感じて、カッと熱くなるほどやりたくてウズウズしている。成功する起業家にはそれくらいの熱量が必要なのだろう。

結局、それくらいの熱量があれば、自然とアイデアも湧いてくるだろうし、自ら手を抜こうなんて考えも起きないはず。周囲もその熱量に魅了されるがごとく、応援したくなるものだ。それがまた結果を出しやすくしてくれるし、成功する確率も高くなるというもの。そして多少時間差はあっても、お金もついてくるだろう。だから必要なのは100%の情熱ということになる。

人生でも必要な「選択と集中」

例えば、飲食店を開業しようとしたら、まずは立地の検討、店舗を探し、家具や什器、備品を揃え、メニュー、看板づくり、人材確保、資金繰り…など、具体的にやらなければならない項目は100を優に超すだろう。そのリストを一つひとつクリアしていくことでやっと1件の店が開店する。リストを見ただけで「面倒くさい」と思うようなら、もちろん店は開店できないし、途中でトラブルが起きて、「やっぱり自分は向いていない」「運がなかった」などと投げ出せば、そこで終わりになる。飲食店に限らず、どんな職業でもそれを実現するまでにすでに狭き門で、そう簡単には実現しないものと覚悟をしておかねばならない。

全米経済研究所(NBER)が世界51か国・130万人を対象に「人生満足度調査」というのをやったそうだ。それによると、ほとんどの人が50歳前後で人生のどん底を迎えるのだという。「どん底」というのは言葉が適当かどうかとは思うが、そういわれてみれば50歳前後というのは体力の低下もあるし、記憶力や集中力などの衰えも気になる頃だ。私の妻もその頃に更年期も重なったせいか、抑うつ症状に悩まされたりしていた。多くの人が自分の限界に気付かされるのもこの頃だ。しかし、「人生100年」と言われる時代。「もういい年だから」といって、簡単にあきらめることはない。自分の限界を把握できたのなら、人生でも「選択と集中」に取り組み、得意な分野だけに集中すれば可能性は広がる。

未来から流れる時間

新しい一歩を踏み出そうとする時に、何かと邪魔をするのが「過去の記憶」だとされる。「親があの程度だから、自分もその程度で当たり前」「有名大学を出たわけでもないのに、これ以上の出世なんてできっこない」「自分の弱気な性格ではどうせ無理」…こんな理由で尻込みすることはないだろうか。普段はそうでなくても、何かちょっと躓いた折りなどに、こんな考えが頭をよぎることもあるかもしれない。過去の延長上に未来を見て、自分で自分の限界を決める典型的な例だ。

経営コンサルタントの本田健氏は、そんな時間の概念を変えることを提唱している。つまり、普通は過去から現在、そして未来へと流れるとされる時間を、「未来から現在、そして過去へ」と流れるものと考えようというのだ。過去はすでに遠ざかったものだからそれに縛られる必要はない。ネガティブな過去に囚われて劣等感を持つ必用もない。その反対に、未来にはたくさんの可能性があり、どうなりたいかは自分次第だ。自分が思う最高の未来を設定しさえすれば、そのために「今すべきこと」がハッキリ分かるため、時間はそこから逆走し、今の自分を自由に変えてくれる。

デジャブは過去に想像した未来の状況

本田氏は既視感(デジャブ)についても解説している。過去に見たことも行ったこともないはずなのに、ある瞬間に「以前ここに来たことがある」「この状況は以前にもあった」などと感じるのが既視感と呼ばれるもの。こうしたことも、「過去に想像した未来の状況がすでに脳の中にあり、たまたまその状況が現実化した時に起きる現象ではないか」としている。つまり脳には、「現実と創造上の出来事、そして過去、現在、未来の出来事を等価なものとして扱うという側面がある」というのだ。

もしこれが本当なら、起業して素晴らしい仲間たちとワクワクしながら働いているという未来をイメージすると、脳はそれが実際にあることと思い込み、その実現に必要な情報や人脈をキャッチするなど、そのイメージにふさわしい行動を起こすようになる。そうやって未来が現実化する。スポーツ選手が、完璧なフォームで夢の記録を実現する時のイメージを頭に思い描き、現実の競技に臨むのに似ている。

HOWよりWHAT

「私たちは『HOW(どうやって)?』ということをまず頭に浮かべ勝ちだが、それが多くの人が夢を実現できない理由だ」と本田氏。「脳は知りたいこと、見たいことだけを選別する」と言われる。「年収1000万円になる」でも「世界中の人たちを幸せにする」でもいい。とにかく自分で何をしたいのか、どうなりたいのかをまず決めなければいけない。そして「大切なのはそれを紙に書き出すこと」なのだという。「ああなってみたい」との想いをどんどん紙に書き出し、詳細なイメージをつくり、幸運を手繰り寄せよう。

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