【目次】
知りたいことを優先するのでなく、相手の言いたいことをまず聞こう
仕事をしていく上で人の話をどのように聞くかというのはとても大切なことだ。そんなことは当たり前と思われるだろうが、実際、その聞き方というのは人によってまちまちで、上手い人、下手な人いろいろいるのが現実だ。
立場を変えてみて、どんな人になら話しやすいだろうか。タイミング良くうなずいてくれる人、キーワードを繰り返してくれる人、やさしい笑顔を振り向けてくれる人、最後まで口を挟まない人…、いろいろあると思うが、これらに共通するのは、こちらの聞きたいことを聞くのではなく、「相手の言いたいことを聞く」という姿勢だろう。
その半面、現実の話し手によくあるのが「自分の知りたいことを情報収集する」という姿勢だそうだ。特に渉外の担当を経験したことのある人は、日頃から情報収集力、ヒアリング力を磨いているため、つい尋ねる、確かめるという話し方になるのは当然かもしれない。しかし、それより先に必要なのは、繰り返しになるが「相手の言いたいことを聞く」という姿勢、意識だ。
なかなかできない、最後まで聞く
聞き方のポイントにはいくつかあるようだが、コーチングでは以下の6つのポイントを大切なものとして挙げている。
①最後まで聞く(途中で遮ったり、話を取ったりしない)。
②うなずいたり多様なあいづちをしながら聞く。
③アイコンタクトをしながら聞く。
④言葉をリピートしたり、要約・確認をしながら聞く。
⑤自分とは異なる意見でもいったん受け止め、それから自分の考えをいう。
⑥相手が何を言おうとしているのか、その背景まで聞き取る姿勢で聞く。
いかがだろうか。特に起業したばかりの頃は、目先の売上高が欲しくて、なかなか人の話を聞くような余裕のないことが多い。自分の話を相手に理解してもらおう、納得させてやろうという気負いばかりが先走ることはないだろうか。それだけだと、なかなか相手に受け入れてもらうこともできず、気負いが空回りするばかりになってしまう。成果を焦る気持ちは分かるが、思うような結果が得られていない時など、少し立ち止まって、まず相手の話をじっくりよく聞くことからやり直すと、また仕事の流れも変わってくるかもしれない。
あいづちにもいろんなバリエーションがある
それでは話の聞き方を実際に向上させる上で、具体的な方法を挙げてみよう。
これまで「聞き上手だなあ」と思われる人と接した経験は誰にもあるだろう。「この人の前では気持ちよく話ができる」「つい多弁になってしまう」という人のことだ。こういう人に共通していることに、「あいづち」がある。「聞き上手」の人は例外なく「あいづち上手」であると言える、また、あいづちのバリエーションも豊富で、タイミングも上手い。
例えば、一般的なあいづちには、「はい」「へー」「そうですよね」「なるほど」といったところだろうか。それが相手の話に感心する時には「へー、そうだったんですか」「すごいですね」「驚きました」となり、さらに相手の話を促そうとする時は、「それで」「それから」「はいはい」「うんうん」…となっていく。相手が目上の人だったり、とても大切な顧客だったりすると、なかなか使いづらい言葉もあるだろうが、それより気持ちを自然に乗せるようにしていこう。
自分のあいづちをよく振り返ってみると、いつもワンパターンだったりするものだ。相手の話の内容、タイミングによってあいづちのパターン、速さ、声のトーンなどを使い分けると、もっと話をしようという意欲が湧くものだ。
キーワードを繰り返す
また、相手の話の中に出てくるキーワードを繰り返す(リピート)ことも効果的だ。相手と同じ言葉を使うことで、相手と同じ世界に入り込み、共感することにつながる。しかし注意しなければいけないのは、相手のキーワードを繰り返す必要にばかり心が奪われ、話を真剣に聞いていないと的外れの繰り返しになってしまい、かえって逆効果になってしまい勝ちなことだ。
例えば、
「私は10年前にこの料理で○○賞を2度受賞したことがあるんです」と相手が話した時、
①へえー、すごいですね。
②○○賞ですか。
③2度も受賞したんですね。
と返したとする。この時、①はあいづちで、②と③は相手の言葉の繰り返しをしている。仮に「10年前」という言葉を繰り返したとしても、それは相手が言いたいことではないはずだから、その繰り返しの効果はない。逆にそこを強調すると、「今はそこまで大したことがない」というようにも受け取れるため要注意だ。
要約して正確に理解する
繰り返しに慣れてきたら、長いセンテンスや会話を要約して繰り返す「要約のスキル」もテクニックとしてあることを覚えておくとよい。
「なるほど、つまり、○○○といったことなんですね」といった具合だ。
長い文章を要約して繰り返すことができると、相手との共感を深めるだけでなく、相手の言っていることを正確に理解できるようになる。これは特に話の長い人に効果がある。話が長いと、途中で何を言おうとしているのかが分からなくなることがある。ビジネスの世界ではそうならないように、結論を先に簡潔に話すのが基本だが、この要約するというアプローチをすることで話の趣旨や方向性がずれることがなくなる。
一度試してみてはいかがだろう。