【目次】
お金を借りるよりビジネスを工夫する選択肢も
金融機関などから融資を受けるまでには数多くのステップを踏む必要がある。用意する書類も多く、慣れない複雑な作業が求められる。このため、借りたい金額がわずかな額であるなら、そこまでして借りる必要が本当にあるのか、再検討した方が良い場合も出てくる。お金を借りるための労力を新たなビジネスの工夫に集中し、お金を借りずに済む工夫ができるかもしれない。融資の手続きはそれほど煩雑であることを覚悟しておかねばならない。
面談は恐れることなく堂々と
まず日本政策金融公庫で創業融資を受ける場合、どんな手順が必要か一般的な例で見てみよう。
①日本政策金融公庫の支店窓口に相談に行き、パンフレットや申請書類などを入手する。
②公庫指定の創業計画書、根拠となる事業計画書を作成する。
③借入申込書に記入し、指定された添付書類などを準備する。
④飲食業や美容業などの場合、都道府県知事の推薦状を入手する。
⑤公庫の支店窓口に借入申込書、添付書類を提出する。
(正式な申し込みはこれで完了)
⑥面接に持参するように指定された資料を揃える(源泉徴収票、住宅ローンの返済明細表、固定資産税の領収書など)。
⑦融資担当者との面談(⑤の1週間程度後)。
⑧審査結果の通知がくる(⑦の3日~3週間後)。
⑨審査に通った場合、公庫の支店で金銭消費貸借契約書の契約手続きを行う。
⑩融資の実行(⑨から2,3日後)。
このうち⑦の面接ではビジネスモデル、自己資金、資金の使い道などの質問を受ける。融資担当者との1対1の面談で、専門家など第三者の同席は基本的に認められていない。気を付けねばならないのは、あなたが経営者にふさわしい、信頼できる人物であるかどうかを見られるわけだ。
当日は服装はもちろん、態度や話し方についても注意しなければならない。といっても特に構える必要はないのだが、話す時は相手の目を見て話せているか、口では良いことを言っていても、自信のなさそうな気持ちが態度に出たりしていないか、逆に、自分の気持ちに酔っていて、会話が成立しないようなことはないか。痛いところを疲れても、決してウソをついたり、ごまかしたりしないようにしなければならない。相手の融資担当者はその道のプロだから、ウソやハッタリは簡単に見抜かれると思っておかねばならない。言い訳めいたことを言うと、「信用できない人物」「不誠実な人物」という烙印を押されてしまう。
信用保証協会の審査も
一方、自治体の制度融資を受ける時の流れは大体以下の通りだ。
①自治体の相談窓口で相談し、申込書を入手する。
②自治体に融資の斡旋の申し込みをする。
③自治体から斡旋書が交付される(郵送など)。
④選択した金融機関に融資を申し込む。
(金融機関は信用保証協会に信用証書を申し込み、協会側は金融機関に保証引受の可否を通知する)
⑤金融機関から融資実行の可否の通知がくる(自治体は金融機関から結果の連絡を受ける)。
⑥金銭消費貸借契約書などを締結する。
⑦融資の実行。
これを見ても分かるように、自治体と金融機関、信用保証協会の三社による審査を受けるため、それだけ時間がかかってしまう。
生活費も計算に入れておこう
それぞれの手続きを箇条書きにしてみたら分かるように、とても大変だ。「こんなことなら諦める」という人も出てくるかもしれないが、そんなことのために税理士や経営コンサルタントなどの専門家はいる。適切なサポートを受けることができれば、慣れない作業を大幅に省略できるだけでなく、審査にパスする確率も上がる。しかし、それでも100%というわけにはいかない。融資の申し込みは基本的に一発勝負とされる。審査に通らなかったからと、時間を空けて再びチャレンジしても、ほぼ門前払いを食らうことになる。だからこそ、万全の準備をして臨むことが求められる。
最後になるが、自己資金はどのくらい必要なものか。業種による例を見てみると、まず大きな金額が必要なのが飲食店。店舗を借り、内装工事にテーブルや椅子、厨房設備までそろえると、少なく見積もっても1000万円近くはかかることになる。一方、少ない自己資金で起業できることから目が向きがちな一つが、フランチャイズへの加盟。開業資金の目安としては500万円前後が多いのではないか。仮にフランチャイズを選んだ場合、利用できる融資制度は限定される。なかにはフランチャイズ加盟は対象外とされる場合もあるので注意しなければならない。
ネットショップならさらに少ない自己資金で始めることができそうだ。何をどのように売るかにもよるだろうが、開業資金の目安としては300万円までが多いとされる。事務所も特別に借りることなく、自宅を仕事場にできるからだ。
見てきたようにそれぞれによって必要な開業資金は異なるが、見落とし勝ちだがどうしても必要なお金として、最低でも3か月~半年程度の生活費を見ておく必要はある。余裕を持とうと思えば、1年程度見ておく方が良いかもしれない。事業がスタートダッシュよろしくうまくいけば良いが、実際には思ったようにはいかないものだからだ。追い詰められてから慌てても、良い考えは浮かんでこない。余裕が肝心と心得よう。