3年間で6,7割が脱落する世界

起業の際、優れたアイデアや技術があるからといっても成功が約束されているわけではない。夢の実現に「会社を創業」したり「店を持つ」ことを大きな目標に掲げる人が多いが、勝負はその先にある。事業をうまく軌道に乗せ、利益を生み出さなければ資金は間もなく枯渇し、せっかくの夢も終わりを見せる。中小企業庁が出す「中小企業白書」によれば、起業して3年後まで残る会社は3、4割程度とされる。実際私の周囲を見渡しても、ほぼその程度。厳しい現実が待っている。何が問題になっているのだろう。

「魔の川」「死の谷」「ダーウィンの海」

新たな事業に取り組み始めた場合も、最初の2,3年間が一番危ないといわれる。ベンチャー企業が事業を軌道に乗せるまでに直面する課題を表す言葉として、「魔の川」「死の谷」「ダーウィンの海」というのがある。

「魔の川」は基礎研究から製品化のための開発段階に進む際の課題。企業や大学で行われる基礎研究で技術シーズが生み出されるが、その中で市場のニーズに合った製品化が可能なものは多くない。そのため「魔の川」を越えられないことも多い。
それでも「魔の川」を越えると製品開発段階に移るが、次に待っている課題が「死の谷」だ。「死の谷」は製品開発段階から事業化段階に移る際の障壁を表す。
さらに「死の谷」を渡って新商品が無事開発できたとしても、その商品を市場に投入し、販売網を整備し、競合に打ち勝って事業として起動に乗せていく必要がある。この困難のことを「ダーウィンの海」と呼ぶ。

走りながら考える

逆に言うと、たとえ資金を確保できたとしても、3年も続けて芽が出ない場合は、一度考え直した方が良いということになる。創業して3年目が近づいてきたら、いったん立ち止まって足元を固める作業に入るのが得策かもしれない。

先の3つの障壁を越えるには、何が必要なのか。もちろん、それまでの経験に基づいた入念な準備は重要だろうが、それさえあれば誰でも成功するのかとなれば、そんな単純なものでもない。周囲を見渡しても、頭の中で準備にばかり時間を割いている人は、勝負するタイミングをつかみ損ねている。走り始めて初めて見える景色というものもある。私などもそうだったが、特に起業したての頃は、せっかく立てた計画も修正に次ぐ修正を求められる。どんなにじっくり考えたとしても、物事はそうそう思い通りに運ばないものだ。

自分を過信していないか

意外かもしれないが、大企業で活躍してきた人ほど足元をすくわれやすいということもある。会社の看板、ブランド力で仕事をしてきたにも関わらず、これまでの功績がひとえに自分の力にあると思ってしまうのだろう。これも私の同級生の話で恐縮だが、大手生命保険会社で管理職を務めていたのに、それを投げうって新しく営業をサポートする会社を立ち上げた者がいるが、会社員時代のイメージのままに活動したところが見向きもされなかったのは当然のこと。結局廃業を余儀なくされてしまった。起業したばかりの頃はもちろん会社の信用力はまったくない。自分が売り物となる覚悟で仕事を取るのでなければうまくはいかない。

そして、これは私の反省でもあるのだが、「昔取った杵柄」は役に立たないことを肝に銘じておくことも大切だろう。シニア世代が昔関わった経験があるからといって、例えば10年前の経験値で新たなビジネスを立ち上げたところで、行き詰まるのは目に見えている。時代を感じ取るためにも、若い世代の意見を積極的に聞きとることをお勧めする。驚くほどIT機器に精通していて、新しい宣伝の方法、斬新なアイデアなど、得るものが多いと実感できるはずだ。

安易なフランチャイズにも注意!

一方「どうしてもパン屋をしたい」といって店を構える計画を練っている人を知っているが、これまで一般企業に勤めていてまったく畑違いの企業をいきなり目指すのはムチャだ。「カルチャーセンターに通ってパンの製造を習った」「週に1度は自宅でもパンの生地の練り方を研究・実験している」と熱く語るのだが、残念ながらこれでは店を開くための融資の審査にも通らないだろう。素人同然の人が、大手チェーン店などが顧客獲得に血眼になっているところに参入したところで、とても同じ土俵に上がることはできないからだ。パン屋でなくてもケーキ屋でも喫茶店でも蕎麦屋でも同じこと。せめてどこか他の店でアルバイト経験を何年か積んで、そこで実績を作ることが必要だろう。

それならフランチャイズでというのも安易に過ぎる。すべての人がそうではないにしても、今の仕事を辞めることが最大の目標になっていて、「とにかく開業したい」という想いの先走っている人は要注意だ。「フランチャイズならノウハウを教えてもらえるので大丈夫」と考えていると痛い目に遭うことになる。本当にやりたいこと、好きなことでないと、ちょっとした困難に出会った時に踏ん張ることができないからだ。フランチャイズでは立地の良い店舗には直営店を出すケースが多いと心得ておくべきだ。だから加盟店となっただけで難なく稼げるというわけにはいかない。ノウハウを伝授されても、特に興味のない分野で立地が今一つとなると、なかなかうまくいかないのも当然といえる。

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