労働基準法や労働組合法、労働安全衛生法など基本的な法律以外にも、正規・非正規を問わずどんな形で人を雇う時にも事業主の立場から知っておいた方が良い法規がある。以下にその代表的なものからいくつかを紹介しよう。
【目次】
高年齢者雇用安定法
高年齢者雇用安定法は高年齢者の雇用の確保を目的としている。平成18年施行の法改正により、企業は定年の65歳までの段階的引き上げ、継続雇用制度の導入、定年の廃止のいずれかを行う必要がある。
男女雇用機会均等法
男女雇用機会均等法は雇用における男女の均等な機会や待遇の確保を目的としたもの。女性を不利に扱うことはもちろんだが、逆に女性だけを優遇することも原則として禁止されている。例えば、求人の際に男性のみ、女性のみといった形で募集することは原則としてできないことになっている。採用だけでなく、配置や昇進、教育、福利厚生、退職などにおいて、性別を理由とした差別的取り扱いは禁止されている。
一方、現状で企業の中で女性に対する待遇などの格差がある場合は、それを改善するような取り組みをすることは違法ではないとされている。
労働者派遣法
労働者派遣法は労働者の派遣事業を行う民間の業者に対して適用される法律。派遣事業の適正化や派遣労働者の就業条件の整備、雇用の安定などを目的にする。
労働者派遣とは、自己の所有する労働者を他人の指揮命令を受ける他人のための労働に従事させること。改正労働者派遣法では、それまでの一般労働者派遣事業(許可制)と特定労働者派遣事業(届出制)の区別は廃止され、すべての労働者派遣事業が許可制になった。
特に改正後には以下の2つの期間制限が適用されるようになった。
・派遣先事業所単位の期間制限
同一の派遣先の事業所に対して、派遣できる期間は原則3年が限度となった。派遣先が3年を超えて受け入れようとする場合は、派遣先の過半数労働組合等からの意見を聞く必要がある。なお、1回の意見聴取で延長できる期間は3年まで。
・派遣労働者個人単位の期間制限
同一の派遣労働者を、派遣先の事業所における同一の組織単位に対して派遣できる期間は3年が限度となった。
職業安定法
職業安定法は職業紹介に関する規定をまとめた法律。職業紹介機関は公的なものでは公共職業安定所(ハローワーク)があるが、現在では民間の職業紹介事業もたくさんある。こういった職業紹介機関により労働者に就業機会を与えて、産業に必要な労働力を与えることが目的。
有料職業紹介事業を行うには厚生大臣の許可が必要になる許可制だが、期間は新規の場合は3年、更新は5年ごとに行う必要がある。また、業務の制限については、港湾運送業、建設業への紹介は禁止されている。
育児・介護休業法
育児・介護休業法は少子化対策の観点から仕事と子育ての両立支援等を推進するための法律。この法律では育児休業制度や介護休業制度などが定められており、労働者から育児や介護の申請があった場合には、事業主は一定の休暇を与えることが義務付けられている。
この法律が改正された主な内容は①子育て期間中の働き方の見直し、②父親にも子育てができる働き方の実現、③仕事と介護の両立支援、④実効性の確保―の4つだ。それぞれの内容の概略は以下の通り。
①子育て期間中の働き方の見直し
3歳までの子を養育する労働者について、短時間勤務制度(1日6時間)を設けることや、3歳未満の子を養育する従業員が申し出た場合には所定外労働を免除する制度を定めることが自事業主の義務となった。更に、子の看護休暇制度を拡充することとした。
②父親にも子育てができる働き方の実現
父母がともに育児休業を取得する場合、1歳2か月までと期間を伸ばし、1年間育児休業を取得可能にした。
③仕事と介護の両立支援
要介護状態の対象家族が1人であれば年5日、2人以上であれば年10日、介護のための短期の休暇制度が創設された。
④実効性の確保
苦情処理、紛争解決の援助及び調整の仕組みが創設された。勧告に従わない場合の公表制度、勧告を求めた場合に報告をせず、または虚偽の報告をした者に対する過料が創設され、実行性を確保している。
労働契約法
労働契約法には労働契約が円滑に継続するための基本ルール等が定められている。まず労働契約の基本原則として以下の5つの規定がある。
①労使対等の原則、②均衡考慮の原則、③仕事を生活の調和への配慮の原則、④信義誠実の原則、⑤権利濫用の禁止の原則
労働契約法は労使の個別の合意を原則としているため、労働基準法にあるような罰則はない。しかし、労使の基本ルールについて、法律としての根拠が示されたことに意義がある。この労働契約法は、有期労働者について①無期労働契約への転換、②雇止め(有期雇用契約で働く労働者について、契約期間満了時に契約更新せず、契約を終了すること)法理の法定化、③不合理な労働条件の禁止―の3つの内容について改正されている。それぞれの内容は以下の通り。
①有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えた時は、労働者の申し込みにより、期間の定めのない無期労働契約に転換されることになった。
②最高裁判所の判例で確立した「雇止め法理」が、そのままの内容で法律に規定された。これにより、一定の場合には使用者による雇止めが認められないことになった。
③有期契約労働者と無期契約労働者との間で、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の相違を設けることが禁止された。
以上。