代金決済のいろいろ
事業を始めると必ずその代金決済を行う場面が出てくる。事業によって向き、不向きの決済方法があるが、いろいろある決済方法のどれを選ぶかによっても顧客の利便性が変わり事業の競争力にも関わることがある。以下では今日、どのような決済方法があるのか、代金決済の活用方法について少し振り返ってみることにする。
①(銀行業に基づく)為替取引
離れた場所における資金決済方法のひとつとしてあるのが為替取引。取引の当事者が金融機関等に口座を設定し、口座残高の増減により代金等の決済を行う。銀行振込や口座振替がその典型的な例だ。キャッシュカードの提示等により口座振替がされるデビットカード取引やペイジーという銀行が提供するネットワークシステムによる収納サービスもあるが(参考:https://www.pay-easy.jp)、クレジットカード会社や決済代行業者を通じて、この取引を利用することができる。
②(資金移動業に基づく)為替取引
かつては銀行業として銀行免許を受けた金融機関のみが為替取引を行えたが、2010年に資金決済に関する法律「資金決済法」が施行され、100万円に相当する額以下の少額の為替取引については、資金移動業として登録制の下で銀行等以外の一般事業者も為替取引を行うことができるようになった。クレジット会社、通信事業会社、モールサイト会社、オンラインゲーム会社などの事業者が相次いで参入しているのはご存じの通りだ。
③現金書留
離れた場所へ代金にかかる資金を直接郵送する取引は、郵便業務として日本郵政株式会社が独占的に行うものだ。それ以外の運送会社などを利用して、現金を直接郵送することはできないので注意が必要だ。万一違反した場合は、郵便法76条による罰則、没収、追徴規定がある。
④収納代行
宅配業者が行う代金引換サービス、コンビニで公共料金などの支払いをするコンビニ収納などがお馴染みの収納代行。これら収納代行業者が代金の債権者から代金受領に関する代理権を受け、顧客又は取引先からの代金の支払いを受ける仕組みだ。これは不動産管理会社による家賃の集金にも利用されていて、クレジット会社など資金収納に関するシステムを持っている事業者が、収納代行業務を担っている。また、最近では通信事業会社がデジタルコンテンツなどを購入した契約者に対して、通信料金とともにそのデジタルコンテンツなどを販売した事業者のために、代金を受領したりもしている。この収納代行業者の代金の受領方法について特段制限はなく、宅配担当者やコンビニ店頭での現金受取、収納代行業者の指定する銀行指定口座への振り込み、口座振替、電子マネー等、クレジットカード取引による支払いも可能だ。
⑤クレジットカード取引
これを代金の決済方法として利用するにはクレジットカード会社等の加盟店になることが必要で、当該クレジットカード会社のカード会員との間で取引可能になる。クレジットカードの加盟店になれば、代金決済における回収に直接のコストはかからず、また未回収リスクをクレジットカード会社に転嫁することもできる。この取引を始める際は、クレジットカード会社からは加盟店契約等を通じて、クレジットカード番号の管理等のための適切な体制を整えるように指導されることもある。
特に最近ではインターネット取引等の非対面取引が増えている。加盟店が会員からのカードの提示や署名確認を行わずに取引を行うことが多いが、カード会員から利用の覚えがない旨のクレームがなされた場合、会員の確認をしたことの立証ができないために、否応なく払い戻しをしなければならない義務を負うことになる。それを防ぐために「3Dセキュア」と呼ばれる仕組みが導入されたりしている。
⑥(クレジットカード取引を除く)割賦販売法対象取引
割賦販売法にはクレジットカード取引のほか、自社商品の割賦販売などがある。自社割賦は自社が顧客と直接に分割契約を結び、商品やサービスを販売する方法。自社のルールで契約を交わすが、それについても法規制の対象になっているので、導入に当たっては注意が必要だ。
⑦後払い取引
商品購入後やサービスの利用後に決済ができる方法として「掛け払い」とこの「後払い」がある。「掛け払い」は企業間の取引ではよく知られているように、取引件数が多い場合、その都度決済するのは効率的ではないために、よく後日まとめて決済する方法として知られている。
この掛け払いが企業間取引で行われるのに対して、「後払い」は一般の消費者に対して使われるのが一般的だ。「請求書払い」とも呼ばれている。特にECサイトなどの展開に際して、1回ごとの取り引きごとに、例えば商品の到着後14日以内の支払いを求めることが多いようだ。
⑧プリペイド型電子マネー等
予め金銭等の対価を得て発行、加算されるのがプリペイド型の特徴だ。これは資金決済法上では「前払式支払手段」といっており、その発行会社は同法による規制を受ける。資金決済法施行前のプリペイドカード法では、カード等の表に金額、単位等の記載されたものだけが法規制の対象だったが、資金決済法の施行とプリペイドカード法の廃止により、サーバー型の電子マネー等も法規制の対象となった。
⑨決済代行業者
起業当初はコストや信用面の問題から、これまで述べたような代金決済手段を導入することが困難な場合があるが、そうした時に決済代行業者を利用した決済手段を利用することも検討に値するだろう。決済代行業者が取り扱う代金決済手段はクレジットカード取引だけでなく、電子マネー、コンビニ決済、ペイジー口座振替などの取引を利用し、販売業者の収納代行業者になる場合もある。