【目次】
起業の手段としてのFC
サラリーマンが独立する際の1つの手段として、コンビニ、介護ビジネス、学習塾などでおなじみのフランチャイズ(FC)への加盟がある。FCは加盟者が本部の作ったビジネスモデルを使わせてもらう対価として加盟金や経営指導料を支払う。加盟者にとってはまったく知らない業界であってもすぐに経営ノウハウが学べたり、開業後もさまざまな経営指導を受けることができるというメリットがある。一方で、本部であるフランチャイザーと加盟店であるフランチャイジーが裁判まで起こして争うケースがあるように、そこまで行かなくても経営リスクを免れることまではできず、短期間で撤退せざるを得ない状況に追い込まれることも当然ある。加盟するにはそれらメリット、デメリットを厳しく見る必要がある。
このFCとよく似た仕組みとしてボランタリーチェーンがある。FCの理解を深めるために、まずこのボランタリーチェーンの説明をする。これは独立した企業同士が結合して、経営の合理化を図る仕組み。FCでは本部と各加盟店がそれぞれで契約を結ぶのに対して、ボランタリーチェーンは加盟店同士のつながりが強い特徴がある。
そのボランタリーチェーンには2つのタイプがあって、小売業者主宰のコーペラティブチェーンと卸業者主宰の(狭義の)ボランタリーチェーンがある。コーペラティブチェーンは小売業者同士で水平的に統合し、共同で本部を設けて共同仕入や在庫管理などを行う。卸業者主宰の狭義のボランタリーチェーンは卸業者が小売業者から入手した売れ筋情報などを元に、商品情報の提供などの支援を行う。
FC選びの4つのポイント
さて、話をFCに戻す。
FCは本部のフランチャイザーが特定地域の販売権や商標などを使用する権利を、加盟店であるフランチャイジーに与える。そしてフランチャイザーは事業ノウハウを元に経営指導などを行うことで、フランチャイジーの事業を支援する。フランチャイジーはその対価としてチェーンに加盟する際の加盟料と定期的なロイヤリティーをフランチャイザーに支払う。フランチャイザーにとって、少ない人や資金で迅速に事業を拡大できるというメリットがある。
加盟者はFCで起業するからと言っても、各店を経営するのはあくまで加盟者自身であることを忘れてはいけない。FCを選ぶ際、どうしても収益面からの判断に重きを置くことが多いが、もちろんそれも大切だが、まず何より良い本部を選ばなければならない。何をもって良いとするかはいろいろな考え方があるが、大体、1.本部の経営理念や姿勢が明確で同調できるか、2.業種や業態に勢いがあるか、3.収益性に優れているか、4.サポート体制が充実しているかーの4点のチェックは欠かせないだろう。
信頼関係を築けるかが第1
まず1の本部の経営理念や姿勢だが、長期的に仕事を続け、本部との関係を構築していく上では、やはり互いの信頼関係がなければならない。長く貴重な関係を築けていける相手かどうかは、全ての条件に優先して検討するべきだ。またこれに付随して、新しい市場や技術、業態などの開発に熱心か、環境や安全対策についても怠りはないか、情報公開や関係者の対応に誠実性はあるか、なども大切な確認のポイントだ。
2の勢いについての判断だが、今現在の勢いだけで判断すると誤りの元となる。将来の市場の見通しなどは、各種統計などを調べたうえで、それをどう判断するかを本部から説明を受けるばかりでなく、自分自身で考えなければならない。本部の市場におけるポジションもそうだ。今はたとえ下位グループに留まっていても、その事実を上回る見通しが得られるなら有望かもしれない。
3の収益性について考える前に、あくまで自己資金に見合った投資に抑えるべきだろう。いくら高い収益性が見込まれても、見込みは外れることがあることを十分にわきまえておかねばならない。本部は必ずこれくらい儲かるだろうというシミュレーションを提示するだろうが、決して鵜吞みにせず、その数字がどのような根拠によるものかきちんと自身で考えてみる必要がある。
4のサポート体制だが、加盟した後で事業を起こすまでの準備期間や事業開始後にどのような支援をどの程度受けられるのか、本部の協力度、本気度が試されるところを確認しておきたい。
最後は慎重な判断を
良いFCとは本部が儲かっているかどうかでなく、加盟店が儲かるFCであるべきことだ。複数のFCのオーナーから店の経営状況や本部の指導内容などを詳しく聞くのが、FC加盟を判断するのに最も良い方法かもしれない。一番良いのは自分からオーナーを探すことだが、良い本部なら、そのような機会を持つことに積極的に協力してもらえるはずだ。
一旦契約してしまえば後戻りすることはできない。契約書は多岐に渡るだろうが、必ず全文に目を通して、納得してから契約をしなければならない。お金に関するものは特に注意が必要だ。加盟金、保証金、更新料、経営指導料といった基本的な数字だけでなく、広告協力金や脱退時の違約金などにも目を配らなければならない。
結局、FC起業といっても創業時の苦労を免れることはできない。儲かりそうだから、といったような安易な気持ちで興味のない分野を選ぶと、後々苦労が何倍にもなって自分の身に降りかかってくることになる。そういうことのないように、余裕を持って慎重に検討をしていってもらいたい。