【目次】
人を雇うということ
周囲を見渡すと、起業した者の中には当初の思い通りに事が進まずアルバイトなどに精を出す者がいたり、逆に数は少ないが、当初計画以上に業績が延び、自分1人では業務を回せなくなっている者がいたりと、まさにさまざまだ。この見込んでいた以上に仕事が順調に進んでいるものの中に、どのようにそのオーバーフローしている仕事量をカバーしようかと思い悩んでいる者がいる。思い通りに事が進まない者から見れば羨ましい悩みではなるが、ここで躓けば後々後悔する羽目に陥ることが目に見えているので、悩んでいる当人にしてみれば本当に深刻だ。
要は人をどのように増やしていくかの問題だ。業績が順調に拡大していく中ではどうしても避けることのできない問題だが、当たり前だが人の採用は慎重にした方が良い。それは会社の運命だけでなく、雇った人の人生や、家族がいればその人たちの人生まで背負うことになるからだ。余程業績の拡大が間違いないということであれば、当初から正社員を増やしていくのが最も良いに違いないのだろうが、そうでなければ、非正社員や外国人労働者の受け入れという選択肢もある。いずれにしても、それぞれにポイントというのがある。以下にそれらを見てみることにする。
モチベーションに気を配る必要
特に社員を増やそうとする場合は、それを雇う会社の責任の大きさだけでなく、何より本人のモチベーションにも気を配ってやらねばならない。第一に社員の価値観が会社で設けた理念や方針、これからこうありたいとする組織風土に合わなければ、仕事に対するモチベーションは上がらない。一般にも設けられている採用当初の「試用期間」は、本来採用された本人の価値観と会社の理念が合うかどうかの判断を互いが確認しあう期間としてあるものだ。対象となる社員が自分が働くに値する会社かどうかの判断を行い、会社もこの先一緒に働きたい社員であるかどうかを判断する。
そのためには、会社に試用期間に関する規定を設けなければならない。そのポイントになるのは、まず上記に挙げた試用期間を設けるための目的を明示することだ。入社時にはそれを読み合わせるなど、試用期間の意義を確認しあえる場を設けることも大切だ。そして、試用期間中に教育訓練などが受けられることや、訓練後の適正が判断つきかねる場合は、試用期間の延長もあることをうたっておいた方が良い。延長期間としては、社員本人の生活の安定ばかりでなく、会社の教育にかかる費用も考えると、3か月が限度ではないだろうか。会社として心しておきたいのは、試用期間だからといって、合理的な理由のない解雇は許されないことだ。
登用基準を明確に
しかし、本採用後の解雇よりは試用期間の解雇要件は緩いので、通常の解雇理由とは別に、試用期間中に解雇となる具体的理由を明示して、社員に周知しておくことが求められる。なお、雇い入れてから14日を経過した時は、試用期間中であっても解雇予告手当が必要になるので注意しなければならない。
当初は正社員で入社しなくても、アルバイトやパートのような非正社員で勤務しているうちに正社員以上に能力を発揮してくれるような人もいる。逆にそのような非正社員にとってもやる気と能力さえあれば正社員に登用されるチャンスがあるということは、モチベーションアップにつながる。一般にもそのようなことは珍しくなくなっているが、その基準が明確でなければ不公平感が職場全体に生じてしまう危険性がある。そこで会社の方針に合った明確な正社員登用基準を定めることが大切になってくる。
その規定のポイントとしては、まず規定を定める趣旨をはっきりさせ、社員にも理解をしてもらうことが大切だ。そして、何より正社員登用対象者をはっきりさせねばならない。正社員登用には必ず試験を設けることが必要だろう。その試験を受けるための資格も明確にしておこう。例えば一定の勤続年数があることや、正社員の労働条件で勤務が可能なこと、その会社の経営理念などにも共感を持つことなどが重要だ。
外国人雇用では互いの良いところを活用
外国人を雇用するにはその募集から採用までの間にさまざまな手続きが必要なことを念頭に置いておこう。例えば、外国人登録証で在留期間や在留資格を確認することから、雇い入れ時にはハローワークへ外国人雇用状況の届出なども必要になる。また、一番重要な雇用契約では労働条件を十分に説明し、後々トラブルにならないようにしておかねばならない。イスラム教徒であれば、1日5回のお祈りは当たり前のこと。金曜日も特別な日とされていることなど、日本人同士でいる時と異なって、当然とされる生活のベースが異なっている。
外国人を雇用する前に、どのような目的でなぜ雇用するのか、そしてどのような業務に就いてもらうのかを明確にしておかねばならない。同業他社も雇っているから、賃金が安くすみそうだから、などと安易に考えるのは良くない。外国人が日本で就労するには入管法(出入国管理及び難民認定法)によるさまざまな要件を満たす必要がある。働くことのできる職業や在留期間もそれぞれの在留資格で異なり、留学生については「資格外活動許可」を受けた場合で、学業の妨げにならないように、1週間のアルバイト時間にも制限がある。採用しようとしている外国人がこれらのどれに当てはまるかをまず確認する必要が出てくる。お互いの考え方を理解し、有効活用できるようになることが理想だ。