相手があってこそのコミュニケーション

人とコミュニケーションをとる時に、相手の心に深く印象を残せる人とそうでない人の差はどこからくるのだろう。よくテレビや講演会などで、あんな風に人前に立って話ができればいいなと思うことがある。もちろん、それはその人が魅力的な体験を持つ、その人自身に何かとても惹かれるものがあるという中味を伴うものであるであることが第一だろうが、同じ体験をしてもそれを他人にうまく伝えられる人とそうでない人がいることもまた確かだ。そして、それを自分の身に感じた時、「あんな風にうまく人前でしゃべれるようになりたい」と思うのは誰しも同じだろう。

うまくしゃべれるというのはどういうことかを考えた時、それはやたら口から機関銃のごとく言葉が出てくるというものでもないだろう。むしろ口下手でも相手の心に響くように話せるということの方が近いように思う。そう考えると、コミュニケーションをとる時にまず必要なのは、こちらがうまくしゃべれること以前に、相手が今、どんな状態にあるのか、何に興味を持っているのか、何の問題を抱えているのかといったことを、まず分かることが必要だろう。そうでなければ、いくら心を込めたところで、駅前で政治家が演説をするように、無味乾燥で耳障りな音が周囲に響くだけである。

しゃべることより聞くことに集中

私の学生時代、私の周囲にどちらかと言えば大人しい人、無口で何を考えているのか分からない人と思われている友人が何人かいた。そんな友人の悩みは決まって、「もっと皆と楽しく話ができれば」ということだった。よく相談を持ち掛けられたので分かる。そんな友人に「もっと積極的になったら」「皆と一緒に話したら」などとアドバイスをしてもそもそも無理なのだ。友人によれば、環境が変われば自然と話すようになれるかもしれないと期待をした時もあったようだが、それもただの期待に終わってしまっていた。そんな友人が何社目かの転職で、営業職としてバリバリ働いているという。私は同窓会でそのことを知った。

もっとも最初は苦労したようだった。周囲は皆元気で明るい人ばかり。そんな中で自分が場違いなところに来たことで、とてもつらい毎日を送っていたのだという。ところが、ある時から段々と営業の成績も伸びていったのだった。別に性格が変わったわけでもなかった。「無口」「人見知り」という性格はそのままだった。なのに、こともあろうに営業で成績が認められるようになったのは、自分がどのように相手に話をするかということではなく、「相手がどう考えているか」を知ることに神経を集中させたからだった。友人はコミュニケーションの鍵が「うまくしゃべれることにあると勘違いしていたのだ」と笑った。

相手の本音を引き出す

その友人はある時を境にして、営業で切羽詰まって、話しても話さなくてもうまく売れないのだったら、いっそのこと素のままの自分をさらけ出し、まず相手の話を聞くことに徹したのだった。そして相手からうまく本音を引き出すことができた時、とたんに相手がその友人を信頼してくれるようになった。そうなれば、もう当たり前のように仕事がうまく回り始め、面白いように売り上げが伸びていったのだという。その友人は広告業界で働いているのだが、その時の顧客にした質問というのは、基本的に「これまでどんな広告手法を用いてきましたか」「その時の効果はどうでしたか」「今後はどのような効果を期待しますか」の3つだったという。

よく考えれば、この3つの質問は顧客の本音を引き出すのに良くできている。まず顧客にそれまで取り組んできたことを振り返ってもらい、そこにある問題点を思い起こしてもらう。そして、そこからあるべき理想の姿を構築してもらうのだ。これによってこちらは顧客の求めるものを知り、それに応じた商品やサービスプランを提供すれば、めくらめっぽうにこちらの宣伝をするより、売り上げにつながる確率もずっと高まるというものだ。もちろん、3回の質問で顧客のすべてが分からないことも多いだろうが、その際は現在の問題点を思い起してもらう質問を繰り返すようにすれば済むことだ。

顧客以外とのコミュニケーションにも応用

顧客からうまく本音が引き出せれば、売り上げが上がるのはもちろんだが、それ以外にも仕事の効率も良くなる。ストレスも少なくなるだろうし、仕事全体に余裕を持てるようになる。顧客もはじめから本音で営業マンと話せばメリットは多いはずだが、自分自身を振り返っても、自分の嫌いそうな相手だったらまず警戒をしてしまうだろうし、売り込みをされるほど不愉快なこともない。第一、その時々によって話しをしたくない時だってある。しかし、それも決して本心ではない。だから、そんな隠れた本音を先の3つの質問でうまくすくってもらえたら、顧客もうれしくなるに違いない。

このような3つの質問を応用すると、顧客以外のコミュニケーションの改善にもつながる。例えば、社内の仲間内や上司との会話でも、あるテーマについて話し合う時、それは「過去どうしていたのか」「それで何が今問題になっているのか」「それを将来どうしたいのか」を聞くことで、自分が何をすべきなのかが分かってくる。上司に提出する企画書なども納得の得やすいものを作れるようになる。もちろんこのことをテクニックとして使う前に、まず素直に人の話を聞くこと、相手に興味や関心を持つことは最低の礼儀・マナーであることを念のために付け加えておく。

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