【目次】
ポートフォリオという考え方
「ポートフォリオ」というと何やらまた小難しいことの話のように聞こえるかもしれない。また、少し金融の分野に詳しい方なら、何やら胡散臭いと思われるかもしれない。しかし個人事業主であっても企業であっても、規模の大小に関わらず収入を安定させるひとつの方法としてこのポートフォリオを意識することは大切だ。ポートフォリオとは、資産運用で言うところの「最適な組み合わせ」ということ。収入のポートフォリオといえば、個人事業主でも企業でも、お金の入り方を一種類だけにせず、常にいくつか用意しておくことを指す。そうすればどれかがダメになっても、自分にはまだ他があるから大丈夫と思える。
これを読んでいる方はいろいろな方がおられるだろうが、要は、ポートフォリオを組もうと提案するのは、たとえすでに安定した仕事を持っていてもそれだけに安住していては危険だという考えからだ。好きな仕事だけでなく、稼げる仕事を別に持つということでも良いし、安定した仕事を持っていても、それだけにせず、何か新しいことを始めてみるのも良い。賢いお金持ちの人たちは、いざという時のためにしっかり別の収入源を用意しているものだ。そうすればいざという時になってもあわてずに考え、対応することができるし、何よりその方が人生の楽しみも増える。
収入を複数用意する
どんな仕事でも常に順調ということはあり得ない。「自分にはこれしかない」と突っ走るのは外から見ていて格好は良いが、危機管理としては最悪ともいえる。だからある程度の規模の企業になると2つ、3つと複数の事業の柱を持っているものだし、個人でも人知れず複数の顔を持つ有名人は多くいる。それらはいずれも収入のポートフォリオを上手に組んでいる例だ。特に新型コロナウィルスの感染拡大の例を引くまでもなく、これだけ世の中の変化が激しく、3年先、5年先の将来も予測できないほどの中にいると、収入のポートフォリオを持つことは常識といえるだろう。
たとえサラリーマンであっても金融商品への投資はできるし、最近は副業を禁止する企業も減っているから、かつてほどもうひとつの収入を得ることは難しいことではなくなっている。どうすればもう1つ収入の道を得ることができるのか、すでに2つ持っている人は、さらにもう1つ持つにはどうすれば良いのかしっかり考えながらポートフォリオを組んでみるといい。そのために少しずつ種をまく努力は必要だろうが、特に私のようにフリーランス的な仕事の仕方をしていると、社会的な信用に乏しいこともあって、なかなか収入も安定しない悩みがある。それを補うことは心身ともに豊かにできる。
自分で管理のできるリスク
このポートフォリオについて実際に踏み出そうとすると、誰しもすぐに「リスク」にぶち当たる。このリスクという言葉自体に、アレルギーを起こす人もいるだろう。「リスクはできるだけ避けたい」と考えるのはある意味当然だ。しかし、このリスクを避けたいとする考えの中には、リスクを「ギャンブル」と取り違えていることが少なくない。リスクとギャンブルは全く異なるものだ。「ギャンブルは避けなければならない」という考え方ならよりしっくり納得できるのではないだろうか。この2つを混同してはいけない。
リスクは自分で管理ができるものだ。ささやかな例で恐縮だが、私は待ち合わせ時間を守るために、どのような交通手段を選ぶ時も可能な限り所要時間を長めに見積もっている。これは時間に遅れることに対する一つのリスク対策だ。これに対してギャンブルは賭け事であり、増えたり減ったり、良いことや悪いことが起きることを管理することはできない。ギャンブルを避けるという考え方には賛成するが、必要なリスクまで避けるというのはどうだろう。何もしない人生にリスクはなくて安心かもしれないが、それでは「リターン」も得ることはできない。そんな人生に楽しさがあるのだろうか。
ギャンブルになりがちな投資
人それぞれに置かれた環境は異なるし、考え方の違いまでどうこう言うつもりもない。しかし、先ほどはリスクを許容するとしたが、投資をする時でもせっかく投資をしたのだから、2倍、3倍、あわよくば10倍以上…になって欲しいと欲望を抱いてしまうことがある。大きなリターンを求めるなら高いリスクが生じるのは当たり前なのだが、そんな高いリスクの管理は難しいのが当然だ。そうしてリスクを管理するつもりで始めた投資がいつの間にかギャンブルになってしまうのだ。これが必要なリスクまで否定的になってしまう原因の一つではないだろうか。
「好きなことを続けていたら、いつの間にか稼げるようになっていた」という体験談を聞いたことをあるかもしれない。でも誰しもがそんな風にやっていけるわけではない。むしろそんなきれいな話は実際には珍しいぐらいだろう。だからポートフォリオが必要になってくる。自分は何でお金を稼ぐのか。経営者なら、この先企業は何で事業を拡大させていくのかということが常に頭から離れることはない。私もその端くれの一人だ。この時、リスクをこれからの可能性の裏返しであると捉え、しっかり管理して、楽しみながらポートフォリオを充実させていくことが大切なのだと思う。