【目次】
交感神経、副交感神経を刺激
まだまだ暑い日が続いているが、毎年確実に年を取っていく身には段々とこの時期ぐらいからの暑さが、とくに体にこたえるようになってくる。気象庁が発表している「3か月予報」では、今年の10月までの気温はとくに例年と比べて全国的に高くなるという。気温が高くなると局地的な雷雨も増える傾向にあり、熱中症とともに急な大雨にも注意が必要だとされている。コロナ禍で大変な折、二重三重の苦しみに備える必要がありそうだ。
私も普段から体の調子には気を配ってはいるが、言い訳にはなるが、なかなか限られた時間の中でとくにそのための対策を特別に取るのは難しい。なので、せめて仕事をしている最中に摂る飲食には気を付けるようにしている。しかし、私が実際に摂っている飲食は本当に効果があるのかどうか怪しいので、ここは「疲れない体をつくる免疫力」という本の著者でもある安保徹・新潟大学名誉教授の言葉をお借りして、紹介しようと思う。
私が以前勤めていた会社でも、女子に限らず多かったのが、疲れを取ろうとして仕事の最中に何かを食べたり、飲んだりすることだ。これは先生によると、交感神経の緊張が続き、体が血流不足になったり血糖値が下がっている状況を、「食べる(飲む)」という副交感神経のスイッチを入れる行為、糖を補給する行為で、何とか緩和しようとしているということで、とても理にかなっているのだそうだ。
甘いものもほどほどに
その疲れた時に食べたく(飲みたく)なるものとしては、甘いもの、酸っぱいもの、辛いもの、冷たいものなど、いろいろ刺激的なものがあるが、それぞれ体に及ぼす効果は違う。疲れの取れ方もそれぞれに違うのだそうだ。
まず、疲れた時につい手が伸びるのが、甘いものだ。仕事の合間などにもよく机の引き出しから飴を出して食べている女子がいたものだ。疲れた時は低血糖になっているわけだから、甘い食べ物は副交感神経を刺激してリラックスを促し、手っ取り早く血糖値を上げてくれるので疲れには良いとされる。
しかし、注意をしなければいけないのは、甘いものの摂りすぎは、実は疲れやすさのもとにもなるということだ。甘いものに含まれるショ糖は体のエネルギーになるブドウ糖に分解される過程が短く、体内に入ると急激に血糖値や体温を上げる作用がある。血糖値が急激に上がるので、これが下げる働きのあるインシュリンの分泌を促し、今度は急激に血糖値も体温も下がるのだという。
こうなると、体の中が不安定な状態に置かれ、また甘いものに手が伸びるという悪循環に陥るのだそうだ。甘いものを摂ることもほどほどにということだろうか。
疲れの種類で食べ物も選ぶ
仕事などで疲れた時は、体をシャキッとさせたいがために、わざとキンキンに冷えたものや、辛いものなどを食べたくなりがちだ。しかし、こうした刺激物は疲れの種類によっては、却ってよくないのだという。
いつも体が疲れたように感じる、イライラする、ピリピリした不安感が強い、原因を周りのせいにして怒りやすい、興奮して夜眠れないなど、交感神経が優位なために起こる疲れの感覚が生じている時に、冷たいものは一層体を冷やして血管を収縮させ、交感神経を刺激する。辛いものも体を興奮させるので、これも交感神経を緊張させることになってしまう。
交感神経タイプの疲れに良いのは、逆に体を温めるものだとされる。温かい紅茶にしょうがを入れて飲むしょうが紅茶などはお勧めだそうだ。疲れた時に少しだけ酢の物を摂ると良いという話も聞くが、これなども理にかなっているのだという。酸味によって生じた排泄を促す副交感神経の反応が効くのだそうだ。だがこれにしても、酢をあくまで少量摂った時の話で、排泄という活動自体、体に良くないものを外に出そうとする働きに他ならないわけだから、その摂りすぎはかえって体を壊す元にもなる。
コーヒーやアルコールも効果的に使う
私もそうだが、コーヒーを良く飲むという人は多い。よく知られているように、コーヒーに含まれるカフェインが、副交感神経と交感神経の両方を刺激する作用がある。カフェインには利尿作用があって、お茶やコーヒーを飲むとトイレに行きたくなるのは副交感神経が促す排泄によって引き起こされるものだ。しかし、カフェイン自体は本来体を興奮させる作用も持っているので、副交感神経の反応が終わったころに交感神経を刺激し、体を興奮させて元気がでてくる反応が起きるのだという。安保先生のお勧めによると、このコーヒーに砂糖を少し入れるとリラックス作用が大きくなり、ミルクを入れると、脂肪が加わることでリラックス作用の時間が長くなるのだそうだ。
最後にお酒の話だが、アルコールを飲むと最初はリラックスするが、その後段々元気な状態になり、興奮の世界に入っていくのはご存じの通りだ。これはアルコールを飲むと2~3時間後を境に、副交感神経から交感神経優位に切り替わるためらしい。そうだとすると、最初は日頃の仕事ぶりに対する慰労を話し合い、その後興奮モードに入った当たりで、皆で夢を語り合うという風に話題を変えていくのが良いのかもしれない。