相次ぐ災害

内閣府は今年6月に全国の自治体に向けて「新型コロナウイルス感染症対策に配慮した避難所開設・運営訓練ガイドラインについて」とする文書を送付した。さらに、同じ月に「避難所における新型コロナウイルス感染症への対応に関するQ&A」を、そしてQ&A2版を公表するなど、防災への動きを活発化させている。その中で、①これまで以上の数の避難所の確保、②避難所以外の親類や知人宅への避難の検討、③避難所での感染予防対策の徹底―などが述べられている。6月の段階で内閣府がこのように自然災害への対策を強化したのは、いうまでもなく夏から秋の豪雨災害に備えるためだ。

2011年以降、日本では毎年、2桁の死者が出るレベルの豪雨災害が発生している。記憶に新しいものとしては、一昨年の6月から7月にかけてあった西日本豪雨だ。この時は224人もの方が命を落としている。さらに昨年9月、大型の台風15号と16号が相次いで日本列島を縦断し、合わせて死者108人を出した。台風19号では本州全体を蔽う雨雲や過去にないレベルの警戒を呼び掛ける報道など、自然災害の脅威が新たな段階に入ったことを感じた人も多かったのではないだろうか。

新型コロナで変わる災害対策

そこに今年、新たな災害として加わったのが、新型コロナウイルスの感染拡大だった。密閉・密集・密接のいわゆる「3蜜」で感染が拡がる新型コロナは、災害時の一次避難所という状況では最悪の相手だ。避難所で用意されるパーソナルスペースは、およそ全国的に1人当たり2㎡が基準とされてきたが、新型コロナウイルスの感染リスクを下げるために必要な面積は1家族当たり9㎡。さらに隣接する区画との間は1~2m空けるべきだというのが内閣府の基準だ。そして感染防止のためには手洗いやマスク着用の徹底、十分な換気や発症者が出た場合に備えた隔離スペースの設置なども必要だと指摘している。

場所も予算にも余裕のない自治体にとって、こうした新型コロナ対策を講じることは簡単ではない。ある地域では、お寺などにも協力をしてもらって、災害時の避難所として活用していくことを検討したりしているが、この夏の豪雨災害に備えて万全な対策を構築することは不可能といっていい。こうした状況下で、中小事業者も従来の災害対策からの抜本的な転換を求められている。事業を継続するためには、従業員や役員たちの健康と安全が何より不可欠なことは言うまでもない。

リモートワークの活用

そこで一つのキーワードとなるのが「リモートワークによる分散避難」だ。前述の内閣府の文書でも、新型コロナ対策のポイントの一つとして、「親戚や友人の家などへの避難の検討」が挙げられている。避難所が過密状態となるのを防ぐために、可能な人は前もって自主避難を実施して欲しいという要請だ。今年に入っての新型コロナの流行を受けて、事業者は望むと望まざるとに関わらず、在宅勤務が可能な体制への変更を強いられている。現場に出なければ不可欠な業種を除けば、オフィスに出勤してなくても最低限の業務が継続できるという状況が整備されつつある。この変化を防災対策に生かさない手はない。

これまでなら、台風が近づいてきても、仕事を遅らせないために皆がギリギリまで出勤せざるを得ないというケースが多かった。その結果、交通機関の運行休止などによって家に帰れないということもあった。もちろん、リモートワークを活用するにはノートパソコンの支給や、社内ネットワークへの接続環境の整備などが最低限必要となる。そこで税優遇や補助金をフル活用したい。例えば、取得原価が30万円未満の減価償却資産は、中小事業者であれば全額を損金算入して即時償却できる。年間300万円が上限なので、単純計算で20万円のパソコンを15台まで一括して損金にすることができる。

オフィスを一時的な避難場所に

リモートワーク導入にかかったコストは、助成金の対象となる。厚労省の「働き方改革推進支援助成金」では、導入コストの4分の3、最大300万円が支給される。また、経産省の「IT導入補助金」ではコストの2分の1、最大450万円がサポートされる。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて国はリモートワーク導入を推進しており、通常より手厚い支援策が用意されているのだ。ここは新型コロナ対策と自然災害対策の“一石二鳥”を狙って、リモートワーク導入に使える支援策をすべて利用したいところだ。

もう一つ、オフィスの防災対策の強化も考えたいところだ。これまでも東京都などは、大地震で帰宅困難者が大量発生するケースなどに備えて、オフィスや会議スペースなどを一時的な避難場所として活用することを検討してきた。それに倣って、中小事業者の場合も従業員や場合によってはその家族を数日間、安全なオフィスにとどめておくだけの食糧や水、毛布などの物資を用意しておけばいい。人が多くとどまれば新型コロナ感染のリスクもそれだけ高まるが、不特定多数の人が密集する避難所に比べれば、感染予防にかかるコストも少なく、感染リスクも格段に低いと言えるだろう。

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