【目次】
山ほどいる同業者
経営の目的は顧客を作り出し、その数を多くすることにあるということには大半の方に同意していただけるものと思う。いくら経営規模が大きくても、顧客の数で劣る会社は利益が少なく、経営体力が弱い。自動車会社を見ても、ビール会社を見てもそれは分かる。だから中小の会社が経営規模で劣るからなかなか儲からないと嘆くのは当たらない。要は顧客数で1番になるのが最強の道なのだが、どんな市場で1番になるのかはそれぞれの会社が独自に設定すれば良い。皆が日本一を目指す必要はなく、県で1番でもいいし、そのエリア、○○町のラーメン屋で味噌ラーメンなら味で1番とか、仕上げの早さでは町内で1番のクリーニング屋であったりとか…。
なかなか同業他社がどの程度あるかなんて知る機会がないと言われることも多いが、手っ取り早く地元の職業別電話帳を開いてみるだけで、ライバル会社が山ほど載っていることが分かる。職業分類は別であっても、同じ顧客を取り合っている会社が他にもいるかもしれない。経営は分かりやすく言えば、戦争と同じこととされる由縁だ。「共生の時代」といった言葉もあるが、それはとにかく業種が違えばの話。起業し、経営を行っているからには他社に勝たねば生きていけない。
戦い方を工夫する
有名な経営戦略の一つに「ランチェスターの法則」というのがある。イギリスのフレデリック・ランチェスターが1914年に自身の著作で発表したもので、原著ではこれらの法則をもとに近代戦における空軍力の重要性を説いている。そして実際の戦闘でもこの法則が成り立つことが後に確認されている。
これによると、古典的な戦闘の場合は、個々人による一騎打ちの寄せ集めであるので、戦争による戦闘員の消耗は単純に味方の人数と敵の人数の1次式になる。明智光秀が天王山で豊臣秀吉と決戦をしたとき、兵数は秀吉軍の3万5000人に対して光秀軍は1万6000人で豊臣軍の勝ちに終わった。しかし、戦死者の数は両軍とも3000人。つまり兵数は2対1だったが、損害は1対1だったという。それに対して近代戦の場合は、戦闘員の消耗は味方の人数と敵の人数の2次式(双曲線)になる。このため近代的な戦闘では人数が多い方の軍隊が大幅に有利になるというものだ。
つまり兵力が少ない時の戦法は、一騎打ち的な兵器を選び接近戦を展開するのが上策。一方、兵力に勝る場合は、射程距離が長い兵器を使用して、戦う時は相手と距離を取って戦うのが上策ということになる。
弱者の戦略を追求する
これを経営に応用すると、劣勢の会社は一騎打ちがしやすい商品を選び、一騎打ちかできるだけ接近戦のしやすい営業方法を選び、そのためには特別な営業エリアを選ぶ必要がある。一方、優勢な会社は間隔を広げ、広域の戦いがしやすい商品を選び、その営業方法を決め、そのために利用者の多い大都市を重視するといった戦略をとることが良いということになる。つまりそれぞれの会社が置かれた条件によって、取るべき戦略は全く異なってくることにお気づきだろうか。これを一般には、市場で劣勢な会社が取る「弱者の戦略」、優勢な会社が取る「強者の戦略」として区別する。
強者の戦略を取れる会社はなかなかないだろう。まず何といっても市場占有率で1番であることが求められる。それも2番との間に歴然とした差があることが必要だ。だからほぼ間違いなく、1000社に995社程度ともいわれるが、必要になるのは弱者の戦略だ。その弱者の戦略をまとめると、弱者は先発会社と同じやり方をしない、弱者は小規模1番主義、部分1番主義を狙う、弱者は強い競争相手がいる業界には決して参入しない、弱者は戦わずして勝ち、勝ちやすきに勝つことを狙う、弱者は対象を細分化する、弱者は目標を得意なもの1つに絞る、弱者は軽装備で資金の固定化を防ぐ、弱者は目標に対して持てる力のすべてを集中する、弱者は競争相手に知られないように静かに行動するーとなる。
世界的な企業も始めは無一文
経営にはいろいろな要因があるといわれるが、簡単にいうと何を、どこの、誰に、どうやって売るのかということになる。それを8つに分けてもう少し具体的にいうと、①商品対策=何の商品を売るのか。当たり前のことだが、これが案外きちんと確立できていない会社が多い。②エリア対策=どこの顧客に売るのか。③客層対策=②のエリアのどういう業界や客層に売るのか。個人の家庭か会社か、会社に売る場合は大企業を相手にするのか、中小企業を相手にするのか。以上の①~③が顧客づくりの目標になる。
続いて、④営業対策=見込み客をどうやって見つけて実際に販売するのか。⑤顧客対策=一度取引いただいた顧客に、どうやって継続して取引していただくか。⑥組織対策=④と⑤を行うためにどういう人員で役割分担はどうするのか。⑦資金対策=会社を経営するのに欠かせないお金をどうやって調達し、どのように使うのか。⑧時間対策=以上の仕事をどういう時間配分で何時間働くのか。となる。
よく「商品3分に売り7分」といわれるように、上記の8つの要因の重みづけをすると、商品が1で、エリア+客層+営業+顧客対策をまとめた営業関係が2の割合になる。組織や人に関するものは商品の半分、お金に関するのはそのまた半分とされる。お金がないから成功しないと思っている人は、その前に見直すべきポイントがいろいろあるということだ。