現場に出ない社長?

起業して数年経ち、経営が軌道に乗るようになると、創業当初の苦労を忘れるのか、逆に覚えているからこそ、それを取り返そうとするかのように営業をしたがらなくなる社長を見かけることがある。しかし、会社にとってこれほど危険なこともないだろう。飛び込み営業も顧客の新規開拓も部下に任せきりになって、現場に出ようともしなくなった社長には、最早顧客からの声や、競合他社の情報などの世の中の変化が入ってくることはない。「いや部下にきっちり報告させているから」と言い訳をしたりもするが、自分の目で確認したものでないので判断がブレたり、判断の時期がズレるのは想像するに難くない。

会社の事業の発展に必要な第一のステップは、何といっても社長自らが営業に出て、情報収集に努めること、これに尽きる。いくら社長室で頭を捻り、事業戦略をねったこところで答えなど出てくるはずはない。そのようなことぐらい、ちょっと苦労をした社長なら他人に指摘されるまでもなく分かるはずなのに、何故だかそれを忘れる社長が後を絶たないのが現実だ。会社を成長させるためのヒントは顧客のところにしかないことを考えると、外に出たがらない社長のいる会社の将来は暗いと言わざるを得ない。業績が芳しくない時、まず真っ先に経営者は自分の行動を疑ってかかるべきだろう。

従業員に手本を示す

会社に必要なのは業績を上げることのできる人。そして、社長がその先頭に立たなければならないのは論を待たない。社長自身が頑張っていなければ、従業員たちの評価を下すことなどどうしてできようか。従業員の成績が悪ければ、更迭したり、減俸まで行う判断も下さなければならない立場なのに、自分が率先垂範の形で頑張らないでいたずらに従業員らの評価を下していても、それは従業員にとってみれば理不尽にしか映らない。新型コロナウイルスによる感染症の蔓延で経済が大きくダメージを被った今だからこそ、こうした社長のリーダーシップとしての真価が問われているといえる。

社長ともなれば、自分が意識する、しないに関わらず、従業員たちが普段からその一挙手一投足に注視しているものだ。だから社長は常に会社で一番頑張らなくてはならない。そして、一番輝いている人でなければならない。私がかつてお会いした社長たちは、その多くが早朝から会社に来て、積極的に現場に向かい、社長室にいるのは会議や面談などでせいぜい月に10時間程度しかないということもざらだった。社長が創業者なのであればなおさら、トップダウンで従業員たちをぐいぐい引っ張っていくぐらいがちょうど良いのだろう。そして、出した指示で思ったような成果が出なければ、即座に方針転換すればいい。

前向きな取り組みに避けられない失敗

部下は社長の指示がよく分からなくても、とにかくスピード重視で業務を進めていかねばならない。強引に聞こえるかもしれないが、特に創業して間もない会社にとっては、トップダウン経営が最も効率的な方法とされる。トップダウン経営の対極にあるボトムアップ経営は、会社全体の価値観が従業員たちに共有されるようになって初めて効率的になされるようになる。価値観の共有がないボトムアップ経営は社員の足並みがそろわず、事業方針も固まりにくい。トップダウン経営を行っている間に従業員の教育を徹底して、いかにスムーズにボトムアップ経営に移行できる素地を作るかが問題となる。

その従業員教育にはお金も時間も惜しんでならない。コツコツと従業員教育を続けることが、いずれ会社のゆるぎない土台となる。私個人の見解だが、実は従業員に対する一番の教育は、失敗を許すことにあると思っている。「人間は失敗しか学べない」と言えば極端かもしれないが、当たらずとも遠からずだと思っている。どんなことにも前向きに取り組んでいると、失敗を避けることはできない。その結果、会社に迷惑もかけるだろう。しかし、「何故失敗をしたのか」「どうすれば次はうまくいくのか」を考えて、改善を図っていくプロセスこそ意味がある。だから失敗を許す度量を持つことも大切な社長の仕事とも言える。

トイレ掃除に神髄あり

最後に、行動が大切なことは社長だけでなく、従業員の立場であっても同じことである例を挙げておく。

従業員教育、中でも新入社員教育でよく取り入れられているのがトイレ掃除だ。便器からトイレの床掃除まで隈なく磨き上げる。このトイレ掃除が教育として重宝される理由が何だかお分かりだろうか。

困難な状況に直面した時、人の目や脳は嫌悪感や恐怖を覚えるものだ。しかし、そんな時でもまずは何も考えず手足を動かし、行動するとどうなるだろうか。いつの間にか自然と恐怖は薄れ、行為に没頭してしまっているということはないだろうか。

このことを最も簡単に教えることのできる方法がトイレ掃除なのだ。掃除する場所としては誰でも最初はしり込みしてしまうだろう。しかし、勇気を振り絞って磨いていくと、ほんの数十分で効果が出て、便器はピカピカになる。この体験は誰であっても夢中になり、やりがいや達成感を目に見えて感じることができること間違いなしだ。

目に見える景色に怯えて、不安や恐怖やリスクを頭で考えるだけで何もしなければ、何の解決にも結び付かない。思うような成果をあげられるはずもない。この時、困難から逃げず、勇気を出してぶつかることの大切さを、トイレ掃除から学ぶことができるのだ。これは家庭のトイレでも試すことはできる。是非お勧めしたい。

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