健康を害する高齢者は増加傾向

コロナウイルス感染症で従業員の健康問題が経営に及ぼす影響について、改めて考えさせられた経営者も多いのではないだろうか。従業員が直接新型コロナに感染しなくても、営業を継続するためにはいかにそれを防ぐかに腐心された企業も多かっただろう。しかし、もちろん従業員も人間である以上、病気にかかるのは新型コロナだけではない。いかに普段当たり前のように従業員が健康であることを前提に経営に携わってきたか、そしてそれが決して当たり前のことではないことに気付いたことを、今後の経営にどう生かしていけばよいのだろうか。

まず第一に、もともと我が国では少子高齢化が進んでいて、労働力人口が減少したことで特に若手の採用が難しくなり、十分な労働力を確保できずに人材難に苦しむようになっている。そうした中で期待されてきたひとつが、高齢者の戦力化だった。しかし、実際には健康の問題で60代で仕事を続けられない人もいる。その数は実に男性で25%、女性に至っては45%の人が病気で体力が低下し、仕事を離れざるを得ない状況にあるといわれている。さらにその数は今後ますます増えこそすれ、減ることはないだろうと見られている。

高まる健康経営の必要性

もともと、企業は従業員に対して健康診断を行わねばならないことになっている。労働安全衛生法ではっきりそれが企業の義務であることが明記されている。しかし、1人当たり数万円の費用がかかり、企業にとって決して小さな投資ではないだけに、それを逃れようとする企業があるのも現実だ。万一、そうしたことがあった場合、50万円以下の罰金刑が課される。しかし、健康診断を行ってもその成果が経営者に分かりにくいこともあってか、健康診断を実施してもその情報の管理にまで至っていないケースもあるとされる。念のためにお話しすると、健康診断を実施してその情報を漏洩した場合は、罰金刑だけでなく6か月以下の懲役を課される場合もある。

そこで注目されるのが「健康経営」だ。そのポイントは職場環境の改善にある。今、職場ではパソコンを使って仕事をすることが増えているが、生産性向上のために導入したパソコンによる作業が、逆に仕事が過密化したり、座りっぱなしになって、それが健康に障害を及ぼすケースが多くなっている。このためオフィスのレイアウトを変更したり、ミーティングなどはなるべく立って行うようにすることも増えている。

健康障害の中には、そもそも仕事の適正の問題もある。不得意な仕事をし続けるとストレスがたまり、仕事の効率が下げると上司からのプレッシャーも強くなったり、それがパワハラの温床になったりする。こうした現代の職場を取り巻く環境は一昔前とは異なっており、その解消のためにも「健康経営」が必要になっている。

企業の業績、企業価値を高める

すでに真剣に「健康経営」に取り組んでいる企業では、その成果を重視するようになっている。企業の基本的な強さはどこから来るかといえば、いろいろな見方があるだろうが、まず経営力、そして従業員の健康と労働生産性、加えて創造力で決まるということもできる。「健康経営」はこの基本的な強さを磨くためにあるものともいえ、この強さをより一層強化することで危機の際の対応力も高まる。高齢者などは持病を持っている場合も多く、免疫力が落ちている。当然病気にもかかりやすいことが考えられるが、そんな場合にも働き方を変えることで従業員の健康を向上することができるかもしれない。

例えば、大手コンビニのローソンでは、健康診断を受診しない従業員には2013年度から賞与を15%カットする制度を導入した。さらに本人だけでなくその上司の賞与も10%カットされるというから、上司もうかうかとはしていられない。また、健康診断の受診後も、必要な再検査を受けなかったり、治療を受けなかったりすると、さらに賞与がカットされる。これなどはまさに健康診断という投資を無駄にはしないという経営者の意思表示を示しているものだろう。そして、もちろん、そこまでして経営者が目指すのは、企業の業績を高め、企業価値を高めることに他ならない。

経営者自ら率先する必要

この「健康経営」は一見、成果が見えにくいだけに、取り組む際には経営者自らが「健康経営」を重視するという姿勢を表明することが不可欠だろう。というか、健康経営をリードできるのは経営者以外にはない。従業員は経営者の声には耳を傾けるし、トップの強い決意を聞けば安心して取り組むことができる。具体的には職場での毎朝行う朝礼時の体操から始めてもいいだろう。医療関係者が関与できるのは、あくまで従業員が健康を害してから後のことだ。予防を含めて積極的に関与できるのは、やはり経営者しかいないと心得なければならない。

我が国は国が主導して「健康経営」を推進している珍しい国だとされている。従業員の健康まで何故企業や国が面倒を見なければいけないのかというわけだ。しかし、日本はアメリカなどのように健康を従業員の自己責任で済ますことはできない。健康を害した従業員がいて生産性が落ちても、簡単には解雇はできないし、そもそも労働力自体が減少している中で代わりの従業員を採用するにも困難だ。日本企業が成長するためには「健康経営」に本気で取り組むしかない。それが企業のブランド力の向上にもつながることだろう。

株式会社 大阪エルシーセンター CUBE電話代行サービスグループ
CUBE電話代行サービスでは、実際に電話応対をしているオペレーターが、電話代行サービスの魅力やビジネスに関する情報を発信しています。日頃の電話応対のノウハウや様々な業種の導入事例等、電話応対にお悩みの企業様や、電話代行を検討している方は是非ご覧下さい。