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雇用調整助成金と小学校休業対応助成金の2種類
厚生労働省から出される助成金はいろいろあるが、基本的に法人と個人を問わずその対象は①雇用保険に加入している従業員が1名以上いる事業所であること、②労働保険料の滞納がない事業であること、の2つの要件を満たした事業所が対象になる。
今回は新型コロナウイルス対策として厚労省から出されている雇用関連助成金について、まだまだ知り得ていない個人事業主や中小企業の方が多いようなので、それについて述べさせてもらう(5月10日現在)。厚労省から出されている雇用関連助成金は①雇用調整助成金と②小学校休業対応助成金の2つ。その中のまず①雇用調整助成金について概略をまとめてみる。
この雇用調整助成金だが、今回新型コロナウイルス感染症の影響を受ける全業種の事業主が対象となっている。例えば、営業自粛により予定していたイベントが中止になり、利用客が減った、観光ツアーが無くなったことで観光客が減少した、宿泊施設でキャンセルが続いた、従業員が感染して自主的に事務所を閉鎖したことで事業活動が縮小した、などいろいろあるだろう。但し、労働者を雇用している事業主が対象なので、役員だけの会社は対象外であることに注意が必要だ。あくまで事業の縮小を余儀なくされたにも関わらず、従業員を抱えて困っている事業主が対象ということだ。
特例に注意
そして上記の対象の中で、売り上げが昨年の同月(1年未満の会社は令和元年12月と比較)よりも10%以上下がった会社(但し4月~6月の緊急対応期間については5%以上の減少で対象となる)で、雇用保険被雇用者を休業させて休業手当を支払った、事業の対象労働者全員を一斉に1時間以上時短勤務させて、休業手当を支払った、教育訓練を実施し賃金を支払った、出向させて賃金を支払ったーのいずれかを実施していることが求められる(4月~6月の緊急対応期間については、雇用保険に加入していない従業員も対象となる。時短勤務の「一斉」については部門単位。例えば多店舗展開している会社であれば店舗単位)。
それでは肝心のいくら支給されるかだが、これについては支払った休業手当(賃金、出向元の賃金負担額)の何割かという形で決まるので、この部分は最新の情報を元に計算して欲しいのだが、注意しなければならない点として、労働者1人1日当たりの支給限度額というのが決められていて、それが8330円ということだ。さらに支給限度日数が1年間で100日ということが決められている(但し、4月~6月の緊急対応期間は100日とは別枠。だから4月~6月と7月以降を別に申請できる)。
1か月ごとに申請するのがベター
次に申請の手続きなのだが、通常は休業を実施する前に計画届を提出する必要があるのだが、今回については対策の緊急性を鑑み、その計画届が休業実施による手当並びに賃金の支払いの後になっても可能とされている。そして、その際1か月分ずつ申請を行った方が、早く助成金を受け取ることができるので、たとえ面倒でも、例えば3か月分まとめて申請をするよりもいいだろう。計画届以外にも必要書類は厚労省のホームページにあるので、それらをすべて提出しなければならない。
また、就業規則(又は労働契約書)、賃金台帳(又は給与明細)、出勤簿も必要になる。これらの書類で注意しなければならないのは、就業規則(労働契約書)通りの労働時間・休日で労働しているか、時間外、深夜、休日労働日数は出勤簿通りに記載されているか、割増賃金を正しく支払っているか、労働契約書通りに賃金を支給しているかなどだ。上記の書類と合わせて、これら必要な提出種類がそろったら、とにかく素早く申請することをお勧めする。厚労省でも今回の助成金については早急に支給していく方針が示されており、申請してお金を受け取ってという形を素早く繰り返すことで、資金繰りもいくらか楽になるのではないか。申請場所は最寄りのハローワークになる(電子申請は不可)。
比較対象とすべき前年の実績がない場合でも支給対象の可能性
小学校休業対応助成金は、対象の労働者が小学校、幼稚園、保育所などが臨時休校になった子供の世話をする労働者、新型コロナウイルスに感染した、または感染したおそれのある小学校などに通う子供の世話をする労働者だ。そして、その対象の労働者が会社などに申し出て、会社は有給で休暇を取得させた(この有給休暇は年次有給休暇とは別に与えるものであること)ことが要件になる。この場合の助成金は100%出るのだが、雇用調整助成金同様、8330円という上限が定められている(フリーランスの場合は4100円)。ただ申請場所は専用の場所が設けられているので、厚労省のホームページで確認して欲しい。
最も多い質問の一つに、例えば今年1月に法人化して、比較対象とすべき前年の実績がない場合はどうすればいいかということがあるが、これまでならあきらめざるを得なかったのだが、今回はこうした場合でも支給の対象になる可能性がある。例えば、4月に休業して5月に申請する場合、3月と4月の売上高実績を証明すれば良い。あきらめずにその詳細については厚労省などへ相談するといいだろう。