毎月22日は「ショートケーキの日」

先日、仕事先で帰り際に出されたコーヒーとケーキを頂きながら(いつもそんな待遇の良い仕事をしているわけではありません。念のため)、社長が「今日は何の日か知ってるか」と話し出された。その日というのは22日。社長は「カレンダーを見たら分かる」と言ったきり、「ちょっと考えてみ」とニヤニヤしながら私を見つめている。私は壁にかかっているカレンダーの22日のところに何か書いてあるかと目を凝らしてみたが特段何もなく、とうとう降参をしてしまった。答えは「ショートケーキの日」だった。皆さんは何故22日がショートケーキの日なのか、お分かりだろうか。

社長が「カレンダーを見れば分かる」と言ったように、22日の上は必ず15日がある。15日は、語呂合わせをすると「イチゴ」となって、上にイチゴを載せているから、22日はショートケーキの日になるわけだ。私は「なるほどうまく考えてあるな」と思わず唸ってしまったが、この社長もある時ケーキ屋の前を通りかかった時に店前でそのチラシが貼ってあるのを見て、その秀逸さに驚いたという。「それまでケーキのことなんか考えたこともなかったのに、今では毎月22日が来るたびに思い出してしまう」と苦笑していた。そればかりか、私のような者にまで宣伝しまくっているような有様だ。

記念日を自ら作る

皆さんはこの例のように、毎月1回、顧客や見込み客に思い出してもらえるような仕掛けを作っているだろうか。同じ記念日でも、〇月〇日を記念日にしてしまうと、年に1回しか思い出してもらえなくなる。今や毎日が何らかの記念日に設定されているほどだから、それでも心に残っていれば良い方かもしれない。誰とは言わないが、結婚記念日でさえ忘れることがあってその都度女房に呆れられ、段々に会話も少なくなってしまっている者などから見れば、毎月思い出すことができるというのは奇跡にも近いことのように思える。しかし、考えてみれば、思い出してもらえるような仕掛けはその他にもある。

私の知り合いの会計士の先生は、毎月1日に顧客に届くように「ニュースレター」を送っている。これも一つの方法だろう。私も始めは「ニュースレター」が毎月届くのは知っていたが、それが1日を意識して送られていることまで気付いていなかった。だがある年の4月1日、つまり年度替わりの初日にちょっとしたイベントがあった私が、たまたま帰宅して手に取ったのがその先生の「ニュースレター」だったことから、以来そのニュースレターを見て、月が改まったことを実感するようになってしまった。先生にそのことを話すと、まるで狙い通りであるかのように笑っておられた。

日を決めることでイメージを強くする

読者の中にはこの「ニュースレター」のような月報を出しておられるところも多いだろう。でもこの会計士の先生のように、毎月決められた日に確実にターゲットの元に届けられているだろうか。ある月は第1週に届き、別の月は第2週に届くといったような状況と、毎月必ず1日に届くという状況とでは、ちょっと考えただけでもターゲットに与えるイメージの強さは異なる。そして、肝心なのは、どれほど強いイメージを与えることができるかの主導権は、それを出す側が握っているということである。でも「ニュースレター」を出し続けるだけでも大変なのに、それを必ず決められた日に届くようにすることの大変さはやったことのあるものにしか分からないかもしれない。

かくいう私も、以前、ある企業の社内・社外報の編集・発行を毎月担当していたことがあったが、正直言って、当時は発行する日、ましてターゲットに届く日まで意識して作っていたわけではなかった。言い訳になるが、私もそればかり専任で仕事をしていたわけでもなかったので、他の仕事の進捗状況の関係でその都度発行が前後にずれていた。また、お願いしていた原稿が届かない、なんてことも再三再四のことだった。当時は毎月決められた日に出すことの大切さを分かっておらず、何より「そんな細かな制約を自分に課したくなかった」というのが本音のところだろうか。

求められる大手の宣伝に対抗する知恵

会計士の先生が出されている「ニュースレター」の中身と言えば手作り感満載で、先生ご自身は「お世辞にも内容が濃いものとは言えない」と謙遜するが、それもご愛敬だ。先生に伺えば、顧客だけでなく、名刺交換をした時に当たりの良かった見込み客にも送っておられるとのこと。これを毎月決められた日に発行することによって、引き合いも増え、顧客が徐々に増えていったのだと言われていた。

同じように家庭に届くものとしては、店からのDMやモノを購入したり、サービスを利用したことに対する礼状がある。それぞれに一長一短あるのだろうが、「定期的に思い出してもらう」手段としてそれだけでは弱い。DMはその時々の単なる宣伝だし、礼状などは、顧客の手元に着いて間違いなく読まれても、その時の感動が(あったとして)次回顧客の選択時まで続くかどうかは分からない。

いざという時に、自社が顧客もしくは見込み客の脳裏を最初にかすめるようであれば、それだけで他社より優位なポジションにいることは間違いない。大手企業が宣伝に力を入れるのもそのためだ。資金力で劣る中小企業は「ニュースレター」をはじめとする月報に限らず、それに勝る知恵が求められている。

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