コロナ禍の下で進む変化

新型コロナウイルスの影響による経済の収縮が全国に波及している。ウイルスの感染拡大に伴う外出自粛や店舗休業などが消費や生産を直撃し、この原稿を書いている前日(4月9日)には日銀が全国9地域の経済報告をまとめた地域経済報告で全地域の景気の総括判断を1月から下方修正した。全地域に渡る判断の引き下げはリーマン・ショック後の2009年1月の調査以来、実に11年3カ月振りとのことだ。政府による緊急事態宣言も出されたが、現時点でこのコロナ禍がいつ収束するか誰にも分からず、不透明な先行きに不安が広がっている。

直接に営業自粛や店舗閉鎖に直面しているところはもちろん、そうでなくても消費の減退による生産調整、サービスの中止に追い込まれているところは多い。しかし、こと経済に限ってみれば、このコロナ禍の下で新たなビジネスの萌芽が見られたり、既存のビジネスからの置き換えが進んだりするものも現れていて、目下のコロナ禍に翻弄されるだけでは収束後のビジネスに遅れをとることになる。経営者であればその動きの先を読み、今の間に適切な処置を取っておかなければ、コロナ禍の収束後に本格的な試練に直面することになることが懸念される。

ネットの浸透が及ぼす影響に注意

コロナ禍の影響で変わったことは私たちの生活全般に及ぶ。まずビジネスマン・ウーマンの働き方が変わった。「家庭でできる仕事は出社に及ばず」というテレワークが広がっている。この機会に全社員を対象にテレワークの導入を決めた会社もあるとされる。そうなると、これまでのような広いオフィスは必要なくなり、そのオフィスも1か所に集中するのでなく、むしろ今後のテレワーク時代に対応して各地域に分散させた形が普及するかもしれない。一方、家の中で夫婦が一日中、顔つき合わせて暮らす時間が増えることで得られるメリットも大きいだろうが、それぞれのストレスの原因になることも増えるだろう。

日々の買い物はインターネットを通じることがもっと一般化するだろう。そうなると個別の配送はどうするか。ドローンの登場が早まるのか。既存の店舗が生き残るには、早急に実際に店まで足を運ぶことのメリットを考えなければ、たちまち立ち行かなくなるだろう。コロナ禍で学校に登校できない子供も、インターネットを導入した学習が本格化しているようだ。そうなると既存の学習塾はどうするか。

また、接待や会社の同僚らと飲みに行く機会が大幅に減っている外食産業は今後どうなるだろう。付き合いだけで酒の席に行くような慣習は大いに見直されるだろう。その時、何を売りにするのか。

変化が一気に来る予感

考え出せばきりがない。すでにそれぞれの企業でそうした先行きに対応を進めているところも多いだろう。これからの変化は、ますますその速度を速めて企業に襲いかかってくる。私の勝手な推測をお許しいただければ、これまで10年単位で起きてきた大きな変化も、これから2,3年単位で起きても不思議ではない。だから個々の動きについては情報を張り巡らせて注視しなければならない。中小企業だから大手の動きを見てそれについて行けば良いなんていう従来の考えは通用しない。連続的な変化を追う時代ならいざ知らず、非連続な流れを追わねばならない時に、規模の大きなことはむしろハンディにもなりかねない。

私は変化についていけるかどうかのカギを握るのは、そこで働く人たちの意識にあると思っている。人はこれまでなら1つの人生を極めるという生き方が尊敬されてきたが、これからは一生の中で何通りもの生き方が求められるようになってくる。私の周囲にも、きちんとした人生計画を立てて、それなりにふさわしい努力さえしていれば、あとは順風満帆に過ごせると思い込んだままでいるために、ひとたびライフデザインの変更が求められたとき、それを「人生のつまずき」と捉えてしまう人がまだまだ多いように思う。人もそして企業も、まずこの意識を変えなければ時代についていけなくなるのは明白だ。

変わる「エリート」の形

人の意識がなかなか変わらないのは、その働き方を管理・評価する方法が旧態依然なことが大きく影響しているのではないか。終身雇用や年功序列といった日本型雇用は崩れていると言われて久しいが、まだまだ職場では個人の経験や能力(職能)でポストを割り当てていることがほとんどだ。このため、個人が担う仕事の内容が明確でない場合が多く、それが、例えばいざテレワークを導入しようとする際の障害にもなっている。これを克服するには、一人ひとりの従業員の仕事の内容や目標を明確にするよりほかない。欧米で一般的とされる職務記述書を使い、業務内容や範囲、難易度、必要なスキルを定め、管理・評価する制度が求められるのではないだろうか。

こうなると逆に、人の会社に対する意識も変わってくるだろう。会社に依存して仕事をするのでなく、自分のスキルを会社に提供するという風になる。さらに進めば必ずしも企業の社員になって働く必要もなく、一人ひとりが独立した個人事業主の形になるかもしれない。すでに、少なくとも今の中間管理職の立ち位置は厳しくなるのは目に見えている。コロナ禍から始まっていろいろな話をしてきたが、あまりに現下の厳しい状況にばかり囚われていると、その後にやってきそうな本当の試練に立ち向かえなくなる。そのための準備を怠りなくしておかねばならない。

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