【目次】
バスがない悩み
全国で路線バスが減り続けているのだそうだ。今更改めてここで言わねばならないことではないのだろうが、これが私の出張の時の悩みとなっている。出張といっても特段人里離れた山中に行くわけではない。私の今普通に住んでいるところから、たかだか1時間ほど電車に乗って行くと、その駅自体がすでに無人駅ということも多い。そんな駅前にはもちろんタクシーなどない。バス停も無かったり、あっても30分に1本もあればいい方で、バスの運行は朝と夕方の通勤時間帯だけしかなく、昼の時間帯にはそもそも運行がないなんてこともある。そんな時もう頼りになるは自分の足だけである。夏の暑い日や雨の日は悲惨だ。
やっとたどり着いた企業では、そんな苦労をしてたどり着くだろうということを予め予想して出迎えてくれるとこもあるが、大概はそうではない。まあ、それはどうでもいいのだが、私が「消滅可能性都市」を身をもって感じるのはそんな時だ。何しろ、昼日中に街を歩いていても行き交う車はあっても、誰一人として行き来する「人」に出会わない。これじゃ、バスやタクシーが無いのも仕方がないように感じる。でも、「仕方ない」で終わっていては、どんどん不便さは増す一方だ。そもそも、なぜ、こうした街の交通手段としてバスとタクシーしかないのか。
厳しいバス会社の経営
路線バスは私が小学生の時に通学に利用していたこともあって思い入れが深い。しかし、この半世紀ほどの間に利用者数は全国で6割も減ったとされる。そのバスの利用者が減ったのは、マイカーの普及以外に、バスがいつくるのか分からない、目的地をピンポイントで選べないなどの理由が考えられる。その結果、特に中山間地では今も街中で走るバスの大きさのままでは採算がとれないとされている。
バスの時刻に関しては、バスの現在地を知らせる「ロケーションシステム」が停留所に備わっていることもあるが、当然コストがかかるためにその利用は限られている。目的地の問題は、例えば、郊外にショッピングセンターができても、それに対応した停留所がなかなかできないといったように、路線変更に対する認可を取得するのに時間がかかっている状態だ。このため地方都市ではバス会社の経営は厳しい。その運行に伴う赤字を、バス会社の副業や自治体の補助金でまかなっているが、今やその補助金すらなくなろうとしているというから深刻だ。
すべきことはまだある
しかし、そんなバス会社でもまだまだ経営努力が足りない部分はありそうだ。そもそもバスの運転手のなり手自体が不足していると言われる。実際、バス運転手の平均年収は地方では300万円を切るところもあると言われるくらいだから、待遇が悪い状況なのは間違いない。それにしても、女性運転手の割合が2%もないというのはいただけないのではないか。給料以外にも女性運転手を迎える環境整備なども欠かせないのは言うまでもない。制服にしても、周囲が見て憧れるような、もっと女性らしい制服にするなどの工夫が必要なのではないか。バスに加え、タクシーも運転手のなり手が少なくなっているという。これでは誰が公共交通を担うのか。
「消滅可能性都市」とは日本創世会議が2014年に指摘したもの。消滅可能性都市を正確にいうと、「2010年から40年にかけて、20~39歳の若年女性人口が5割以下に減少する市区町村」で、全国の市区町村1799のうち、896がこれらに該当するとされる。実に半数ほどがそれに該当するということで、いろいろと話題になっている。そのことから考えても、この問題はますます今後広がりを見せるだろう。今すぐにでも何らかの手を打ってもらわなければ、私の仕事にも支障が出る。今以上に仕事の効率が阻害されると一大事だ。
公共交通に新たな試み
バスは一度に多くの人を、安い料金で決められた停留所に運んでくれる。しかし、時間は決められているし、そもそも停留所以外で乗り降りすることはできない。一方、タクシーは自分が乗る場所から、行きたいところまで運んでくれる。しかし、数人までしか一度に運べず、料金もバスに比べて高い。この中間の選択肢がないのが残念だ。タクシーより多い人数で乗り合い、ドアーツードアとまでは言わなくても、ある程度融通の付く場所まで、タクシーより安い料金で送ってもらえるとありがたい。今、各地で実証実験が進められている自動運転バスは、まだ実現には遠いようだ。
自動運転の側から話すと、今のレベルは決められた道を走るだけなら問題がないようだが、特にいつ動物が飛び出してきてもおかしくないような道路を走るまでに至るのはまだまだ時期尚早とされる。日本でそうしたバスとタクシーの間を埋めるような交通手段はないのかと考えていたら、それを「デマンド型交通」と呼んで、アメリカでは先例があって、国内でもいくつか試みが始められていると教えてもらった。一般には「利用者の事前予約に応じる形で運行経路や運行スケジュールをそれに合わせて運行する地域公共交通」(ウィキペディアより)を指すそうだ。将来に向けて業界の垣根を越えて、互いに競争するのでなく、協調して問題解決にかからなければならない時を迎えているように思う。