【目次】
有名になりたいだけでは…
SNSの時代は何でも自分が主張したいことを思う存分言える時代でもある。時には社会正義に反するようなことまで、SNSで拡散することもある。言いたい放題、やりたい放題とも言えるが、結局はそれでどれだけの人が自分の意見を聞いてくれるかとなると、それはまた別問題だ。人に何かを売りたい、それで儲けたい、あるいはモノを売りつけるのではないにしても、それと同じような一方的な主張は、誰が聞きたいと思うだろうか。分かり切ったことのように思うが、それが少し形を変えただけで、どうも人は分からなくなるものらしい。
先日、ある中年の女性から相談を受けた。その方は関東の方でフラメンコの教室を開いているのだが、「どうしても有名になりたい」という。何故有名になりたいのかと聞いても、「とにかく新聞やテレビに出たい」という一点張りで、それ自体が目的化しているような感じだった。「新聞やテレビからの取材を受けるには、それなりのニュース性や話題性が求められますが、思いつくところはありますか」と聞いても要領を得ない返事があるだけ。失礼だが、この方に必要なのは相手の立場に立ったモノの考え方だ。新聞やテレビの取材を通じて読者や視聴者に何を訴えたいのか、それがどう社会に影響を及ぼすのかといった視点がないと、決して思うようには受け入れられない。
広告でも一方的な主張では無理
ひと昔前なら、「取材は無理なので広告で行きますか」と逆提案することもあったが、今の時代、相手の立場に立たない、自分の主張一点張りの姿勢では、広告に掲載しても思ったような成果は得られない。どうしてそのようなことも分からないのだろうと考えたりするが、一つは新聞やテレビのニュースを読んだり、見たりすることが無くなっているのではないだろうか。新聞が読まれなくなったと言われて久しいが、新聞やテレビとSNSでニュースを読むのとでは決定的に違うところがある。
それはSNSでは基本的に自分の興味のないところは読まずに済むが、新聞やテレビだとそういうわけにはいかないというところだ。もちろん、最初は自分の興味のあるところから読んだり、見たりするのだろうが、それだけ見て終わりというわけにはいかない。どうしても周囲には記事が載っているし、ついでに見たり聞いたりしてしまう。でもそれで自分の興味を拡げたり、今何が社会で問題になっているのか、全体を俯瞰する目を自然と養うことができたように思う。しかし、SNSではそうもいかない。本当に自分の関心、興味のあるところだけ目を通せば、後はまったく無視することもできるのだ。
周囲の関心事を常に考える
そんな人たちを振り向かせないと、なかなか自分の思うこと、願っていることなどは伝わらない。会社でも良く間違った意識を持った経営者や幹部たちがいるが、自分が言いたいことを言うのがコミュニケーションではない。自分の言いたいことが相手に伝わった時に、初めてコミュニケーションが成立するのだ。半年に1回程度しか話すこともないのに、「最近の若い奴は何を考えているのかまったく分からない」とボヤいている中高年はどこにでもいるが、そんな時はこう言い返すことに決めている。「安心してください。相手も分かっていませんから」。
ちょっと話がずれてしまったようだ。閑話休題。SNSでもブログの読者層を増やそうとするなら、一番手っ取り早いのが、「ストーリーを語る」ことだろう。例えば、自分、あるいは当該の会社は何者か、何をしているところなのか。何故そのようなことをしているのか。それにはどういう理由があるのか。ここに至るまで、どんな苦労をして、それをどのように乗り越えてきたのか。夢は何か。それは社会をどう変えるのか。あるいは、どう変えたいと思っているのか、などなど。そこに読者が少しでも共感を呼べるものがあれば、そのブログの周囲に集まってくるだろうし、そうでなければ集まらないだけだ。その時に必要になるのが、今、周囲で何が求められているのかといったような関心だ。
自分のことが一番分かっていない
早い話、今の時代に大量消費を促すようなことを言っても、それに賛成する人はほとんどいないだろう。同様に自然や動植物を傷めるような提案をしても、反発を食らうだけだ。商売を考えるならそんなことは基本のはずだが、これも自分のこととなると分からなくなる人が多い。「自分はこんなことが得意なので、これを何とか仕事にしたい」と考えるのも良いが、その前に時代がそれを求めているかどうかはそれ以上に商売で成功しようとするなら大切だ。
一番に難しく、理解が困難なのは自分自身のことだとも言う。だから自分が絡むような話は、自分が最も信頼できる人に相談するか、第三者の目を入れる方が良いことが多い。なかなかそこでアドバイスを受けても、素直には受け取れないケースも多く見てきているが、その場では気付かなくても、後になって「なるほど」と腑に落ちることもある。ブログにはそんな自分や自分の会社の葛藤を描くことが、自分のためにもなる。外部への売り込みや宣伝はその後でも良いだろう。