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シリコンバレーで導入広がる
新しいマネジメントの手法で、グーグルやフェイスブックも採用していると言われる「OKR」というのがあるのをご存知だろうか。この「OKR」とは「Objectives and Key Results」の略。組織が掲げる目標(ゴール)を目指すために、達成目標(Objectives)と主要な成果(Keyをリンクさせ、組織・個人の方向性とタスクを明確にする目標管理制度の一つとされる。そういうと、MBOやKPIなどいろいろある中で、その中でまた新しい手法が増えただけと捉える向きもあるかもしれないが、グーグルやフェイスブックだけでなく、多くのグローバル企業が導入していることから注目を集め、近年日本でも採用する企業が増えているとされる。
これまでにあるMBO(Management By Objective)は組織の事業目標達成につながる個人の目標を設定し、目標達成を目指すセルフマネジメントの一つとされる。人事考課に採用されることも多く、今では多くの日本企業が採用している有名な目標管理制度の一つだ。KPI(Key Performance Indicator)は最終目標を達成するための必要な経過目標であり、適切に実行されているかどうかを順次チェックしていくことで、最終目標を達成していくものとされている。しかし、せっかくこうした目標管理がすでにあるのに、これまでその多くの目標は形骸化し、成果を上げられずにいたこともまた事実としてあった。
目標管理制度の問題点
なぜ目標管理はうまくいかないのだろう。なぜ目標は形骸化してしまうのだろう。それはその運用の仕方に多くの原因がありそうだ。毎年人事部に急かされて、慌ててその場しのぎの目標を立ててしまう。上司もたくさんの部下の目標を急いで見ないといけないため、目標を精緻に確認することなく、つい承認してしまう。このため、そもそも目標があいまいになっていたり、部下や組織の成長に適していないものだったり、適切な水準に設定されていないということが多々起こってしまう。そして、人事部からフィードバックをするように要請される頃には、上司は部下の目標を正確に覚えていないということになる。
私たちはそもそも目標管理において、「適切な目標が設定されれば、そこに向かって迷うことなく進み続けられるというほど単純ではない」と話すのは、ご自身OKRの著書を出版する奥田和弘氏だ。目標に向かって進んでいくには、「目標の共有が欠かせない」という。そして、「組織において共通の目的を達成するためには、複数のメンバー、チームでの協力が不可欠なことは言うまでもない」と指摘する。しかし、多くの目標管理制度において、現場リーダーはメンバーごとに目標を管理している。これでは、自分の目標さえ達成できれば良いと考え、他のメンバーやチームのことには関心が向かなくなる。
「目的」を管理する
OKRは1つの目的(Objectives)と、2~5個の重要な結果指標(KR:Key Results)でできている。一般的な目標管理では、目標として指標や評価項目を管理していくが、目的については管理をしない。この点、OKRでは定性的な目的と数値などで表される重要な結果指標の両方を併せ持つというのがポイントとなっている。そして、どのような状態になれば目的を達成できたかを、重要な結果指標で計測するのだ。目的の達成度合いを計測できれば、「あとどのくらい頑張らないといけないのか」「もうゴールはすぐそこなのか」…が分かる。
そもそも企業のような組織の中では、メンバーが不安を感じていたり、他のメンバーのことを信頼していない場合、組織のメリットとして上げられる相乗効果の部分が大きくマイナスに傾いてしまう。組織の様子がはっきり見通せて、考えていることをお互いに知り合うことができれば、不信や不安は解消されるものだ。だから、OKRの運用においても、組織の透明性を実現することが必要になる。OKRにはその仕組みそのものが含まれている。つまり、その運用において、組織の各階層の目的と重要な結果指標、そしてその進捗状況のすべてが、常に全社員に対して公開される。
OKRはリーダーも育てる
「さらにOKRは強い組織づくりに必要な要素が仕組みとして組み込まれているため、経験の少ない現場リーダーにとっても強力な味方になってくれる」と先の奥田氏。「リーダーはチームをどこにどう導くかという戦略を立てなければならないが、戦略を立てることはリーダーにとって困難な仕事の一つでもある。しかし、リーダーがチームのOKRを設定するプロセスそのものが、戦略を明確に整理するプロセスにもなる」と指摘する。
いかがだろうか。OKRについて少しは興味が持てたでしょうか。ただ、間違っても、「グーグルやフェイスブックが導入しているから」「ベンチャー企業に向いているらしいから」といった理由で導入を図っても、また他の目標管理制度同様、自社に合わなければ良い結果を伴うことはできないだろう。「なぜ自社でOKRが必要なのか」をしっかりと判断したうえで、導入するのが適しているとなれば、その時リーダーが決断をしないといけない。どんなに優れた仕組みであっても、これまで使い慣れた仕組みから変更する時には、人は戸惑いや反発が起こるものだ。そうしたことに立ち向かい、やり切る覚悟ができた時、すでに目的は半分達成されているのかもしれない。