【目次】
花より団子?
実は私自身はサービス業を営んでおり、起業するに当たって特に設備投資など必要がなかったため、金融機関からお金を借りるという経験はまだない。だから、これは私の知り合いが起業するに当たって必要な資金を借りるために政府系の金融機関に融資を申し込んだ時の話だ。その知り合いは、当然金融機関に融資を申し込むのは初めての経験だったため、ドキドキしながらも綿密に練り上げた事業計画書を、その融資担当者にプレゼンでもするつもりで指定された面談に臨んだという。しかし、約1時間の面談の間、その担当者から聞かれたことは、個人の貯蓄残高であったり、以前に勤めていた会社員時代の年収、家は持ち家か、自動車ローンの有無などに終始した。
何故政府系の金融機関を選んだのかと聞けば、「政府系だと一番親切そうだから」ということだったが、期待に反して(?)その間、肝心の事業計画書についての話し合いは一言もなく、そのことを切り出すと、あっさり「後で拝見します」としか言われなかったそうだ。「何だか肩透かしを食ったようだ」と当の知り合いは笑って話していたが、考えてみればそれもある程度分かる話ではある。金融機関にとって一番大切なのは、融資する相手がお金をきちんと返せそうかどうかということであって、必ずしもその人の事業がうまく行かなくてもお金さえ返ってくればそれでいいのだ。
資金調達のあれこれ
私のようにサービス業を起業する場合なら、最初の資金にそれほど多くの資金を必要とすることはないかもしれないが、それでも最低限の資金は必要だし、事業がうまく行けば、それを伸ばすために人を新たに雇ったり、事務所を拡張する必要も出てくるかもしれない。そのためにまた新たな資金が必要になる。
このための手段として、一般的には融資を受けるか、投資を受けるかがある。融資を受ける場合、借り手は当然返済義務を負うことになり、貸し手に金利を支払わなければならない。一方、投資を受ける場合は、受け手は返済する必要はないものの、株を発行した分の配当金を支払わなければならない。投資した方はその配当金を受け取るが、将来その事業が発展した時は株の値上がり益を期待できる一方、倒産などの憂き目に合った場合は紙くずと化すリスクを背負う。
もう一つ、補助金や助成金の制度を利用する手段もある。これは国や地方公共団体、民間団体などから返済不要の給付金を貰える制度だ。全国で実施されている制度もあるが地元独自のものもあったりするので、国や地方公共団体のホームページなどで確認すると良い。
クラウドファンディングという手法
また、比較的少額の資金なら、最近ではクラウドファンディングという手法もよく使われ始めている。
一般に製品開発やイベントなどの開催には多額の資金が必要になるが、クラウドファンディングではインターネットを通じて不特定多数の人々に比較的少額の資金提供を呼びかけ、資金調達のリスクを低減することが可能になる。
その種類は大きく3つに分けられる。それは金銭的なリターンがない「寄付型」、金銭のリターンが伴う「投資型」、そして呼びかけるプロジェクトが提供する何らかの権利や物品を購入することで支援を行う「購入型」だ。日本ではこの最後の「購入型」のタイプが最も多く利用されていて、企業が商品の企画段階や、試作段階において、その量産化のための資金提供を呼び掛ける時などに使われている。
それは同時に、当のクラウドファンディング運営者の審査を経て、決められた期日までに目標とする資金の額が集まるかどうかで、まだ量産前の商品やサービスが本当に市場に受け入れられるものかどうかの判断にも使われている。
こんな成功例も
クラウドファンディングの変わった成功例としては、今や有名になったとろさば料理専門店「SABAR」がある。「SABAR」は東京進出のための資金調達として、クラウドファンディングを利用して1000万円の調達を試みた。しかし、集めることができたのはわずか200万円弱にしかならなかった。これだけだと資金調達の失敗例となるところだが、当時、このクラウドファンディングによって資金調達を行う「斬新な経営手法」に注目が集まり、調達以上の宣伝効果をもたらしたとされる。
映画の制作にもクラウドファンディングは使われている。映画製作の出資を得るためのプレゼンテーションに利用するパイロットフィルムを制作するためにこれを使った。その結果、2000万円の目標額に対して倍の4000万円を集めることができた。出資者にはその額に応じて、制作支援メンバーに登録して進捗状況や監督の動向などをマスコミより早く情報提供してもらう権利や、本編のエンドロールに名前がクレジットされる権利などが用意された。
映画といえば、あのハリーポッターはクラウドファンディングを利用するまで、その運用者12社に断られ続けたという話も聞く。つくづくビジネスアイデアと行動力が大切なことが分かる。