事業の見直しに効く申請

起業したばかりの企業にとって、補助金や助成金はもちろん大いに助かるのだが、申請の過程においてもその後の事業展開に大いに役立つことがある。私の場合、実は2年ほど前に起業してまだそれらを活用したことはないのだが、補助金の申請時に提出する書類の書き方を勉強することで、その事業計画を見直すのに大いに参考にすることができた。

起業したばかりのころ、なかなか事業がうまく軌道に乗らず、四苦八苦するのは私に限らずよくある話だろう。事業を始める前に頭の中で考えていたことが、実際にやってみると事情が違っていることなんて、別に恥ずかしいことでも何でもない。自分の抱えているプランに意固地にこだわるより実情に合わせて変化させることが、事業にとって有益なことは多い。始める前に自分が分からなかった気付きというものもある。そうしたものを加味して、改めて事業計画を練り直せばいいのだろう。

新年度を迎え、これから補助金や助成金の申請が本格化する季節を迎える。ここでは実際にそれらを申請する前に、まずこれらの申請に当たっての「心構え」のようなものから考えてみたいと思う。

自身で公募要領の確認は必須

ここでは今、補助金の一つである経済産業省の「小規模事業者持続化補助金」を見てみよう。これは全国各地の小規模事業者を支援するために設けられている。対象となるのは主に小売業、サービス業、製造業などで、学校法人や医師などは対象外になる。例年だと補助の上限は50万円で、補助率は3分の2になる。経費の対象は販路開拓に必要な取り組みや業務の効率化に対する取り組みで、幅広い内容になっている。なお、申請は管轄する地域の商工会議所になるので、詳細はそちらへ確認する必要がある。

この補助金の狙いなどはざっと以上の通りだが、ここで必ず行わなければならないのは、必ずそうした補助金や助成金の簡単な紹介文だけで分かった気にならず、面倒でも自分自身で当該事業の公募要領を確かめることだ。

そうすると、この補助金の場合、まず一番初めに「小規模事業者が、商工会議所・商工会の助言等を受けて経営計画を作成し、その計画に沿って地道な販路開拓等に取り組む2/3を補助します」(「平成29年度補正予算 小規模事業者持続化補助金」公募要領P.2より)と書かれてあるのが目に入る。また、審査基準として、(A)生産性向上加点、(B)経営力向上計画加点が挙げられていて、それぞれの詳細も書かれている(同P.79)

役所言葉の意味を考える

この文言の使われ方に気を付けると、「地道な販路開拓」とあるので、「チラシ」であったりその他の宣伝などは対象になりにくいことが分かる。また、「生産性向上」、「経営力向上」は、加点項目で挙げられているが、これらは「加点」とはいえ、「あった方が良い」というより「あらねばならない」ぐらいに考えた方が良いのだろう。少なくともその方が採択の確立が高まりますよ、ということが言われているのだ。ちょっと見ただけでもそんなことが分かる。だからその他の補助金・助成金でも審査基準の入念なチェックは欠かせない。それは自分自身が政策作りの担当者だとして、どんな企業のどんなプランなら応援したくなるかを考えてみることでもある。税金を投入するのだから、「大義」が必要なのは当たり前ということだ。

その次に、提出しなければならない書類のフォーマットを見てみると、「1.企業概要」「2.顧客ニーズと市場の動向」「3.自社や自社の提供する商品・サービスの強み」「4.経営方針・目標と今後のプラン」となっている。ここに番号が付いているのは伊達ではない。要はこの順番にストーリーを語らねばならないのだ。これを訳すとこうなる。「1.企業概要」では「当社はこんな会社なんです。ただ、こんな課題も抱えているのです」。「2.顧客ニーズと市場の動向」では「実なこんなビジネスチャンスがあるのです」。「3.自社や自社の提供する商品・サービスの強み」では文字通り、「実は私どもはこんな強みのあるビジネスモデルなのです」。「4.経営方針・目標と今後のプラン」では「だから、こんなビジネスモデルへと進化させたいのです。そのためこんなことをします。一言で表現すると…ということです」となる。

 

コンサル代わりにも

このフォーマットは、今見てきたように自分のビジネスモデルの強み、弱み、そしてあるべき姿に持っていくために欠けているものを見つめ直すのに、とても良い振り返りを提供してくれるようになっている。それはもちろん当該補助金や助成金の審査に使われるのだが、このフォーマットを埋める作業を真面目にこなすだけで、自分自身の頭の中まで整理してくれる役割を果たしている。これは下手なコンサルタントを雇うよりずっと効率的だし、費用の持ち出しも無くて済む。だから、これらの申請を誰かに任せるのでなく、本来は自分自身でやるのがベストだと思っている。

まとめると、今のビジネスモデルと、何年か後にあるべきビジネスモデルを考え、そのあるべきビジネスモデルのために、今からどうするかという戦略をまとめるのだ。この時同時に、現在のビジネスモデルはなぜ成り立っているのか、それはこれからも当てはまるのか、現在のビジネスモデルが弱い(弱くなる)としたらどんなことが考えられるかを考え、顧客や社会に未来を感じさせる変化の兆候があるとしたら、どんなものがあるだろうかということを自身に問うていかねばならないことでもある。

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