【目次】
何のためのWebサイトかを考える
自社のWebサイトをどう位置づけるかは企業によってそれぞれの考えがあるだろう。実際に言われたことがあるのだが、「Webサイトはほんの名刺代わりにしか過ぎないのだから、最低の機能があればいい。それにお金や時間をかけるのはもったいない」とする経営者もいた。それはそれで良いのだが、しかし、一つだけ言えるのは、どんなWebサイトであってもそこを訪れる人のために作るのだから、おざなりなWebサイトを作っておいて、いくらSEO(検索エンジン最適化)に力を入れて検索での上位表示を狙っても、それは考えが根本で間違っている。
だからまず、そのWebサイトはどこの誰のために作るもので、そこを訪れる人にどんな働きかけをすることを目的にするのかぐらいは基本として考えなければならないと思う。私の場合、中小企業の経営者、年齢にして50代~60代ぐらいの方に対して、自分が何者か、どういうことを仕事にしているのかを知ってもらい、興味を持ってもらった方にメールセミナーを受けてもらうことをまず第一に作ったつもりだ(実際にそのようになっているかどうかは別にして)。だから内容的に業者に任せるわけにもいかず、全部原稿は自分で考えた。それが逆に事業内容を修正するのに役立ったことも事実だ。
Webサイトは人生の棚卸しから
まず、自分の強みを知るために、これまでの人生の棚卸しをした。これに大分時間を取られたが、振り返って見れば、ここで大切なことは棚卸し時に結局今の事業に結び付けようとしないことだ。最初に結論ありきのようになると、そもそも棚卸しの意味もなくなる。だから虚心坦懐に自分自身と向き合い、見つめ直すのだ。その結果、まったく別の事業にたどり着いてもいい。その時はいずれそういう風に軌道修正しなければならなくなることは目に見えているし、そこで自分自身納得できる結論に至らなければ、そんなWebぺージを作って見ても誰も心を寄せてはくれない。
これからの企業にとっては、規模の大小より、この何故その事業に携わっているのかという動機の部分が大切になるのは間違いない。そこに共感してもらえるかどうかで、顧客になってもらえるかどうかが決まる。「同じものであってもあなただから任せたい。この企業にお願いしたい」という気持ちだ。そのためのストーリーが必要になってくる。だからといって、作り物のストーリーはどこかでつじつまが合わなくなったりして最後に化けの皮が剥がれることになる。顧客を裏切った罪は後でその何倍にもなって跳ね返ってくる。それなら最初から正直な気持ち、思いを訴えていくのだ。
双方向性の良さを活かす
もう一つ、内容的に私がWebサイトで重視していることがある。それはインターネットの持つ双方向性を大切にするということだ。そうでなければ、せっかくのWebサイトの良いところを活かすことができない。ただこちらの伝えたいことだけを一方的に並べるだけでは、これまでのパンフレットと同じだ。そんなものをわざわざ見に訪れてくれるだろうか。顧客(見込みの人も含めて)は何らかの問題、悩みを抱えてWebサイトにたどり着くのではないか。だとしたら、その問題や悩みを解決して差し上げなければならない。むしろ企業の宣伝はその後でも良いくらいだ。
だから、作ったWebサイトがその企業の得意とする分野を極めるものであって、顧客が持ちそうな悩みや疑問の基本的なところはすべてオープンにしても良いと思っている。どうせ自分たちのノウハウとして抱え込んでいても、基本的なところというのは同業他社でも変わらない。そんなノウハウを後生大事に持っていても、どこかが先に顧客に教えるようなことがあれば、そこへ顧客を取られるだけだ。そうなる前に、自分たちのところで情報をオープンにすることでその業界に関する様々な悩み、最先端の情報なども集まるようになる。隠すのは本当に大切な独自のノウハウの部分だけで良い。
きちんとしたフォローは必須
このどこまでをオープンにして、どこを隠すのかは大切なところだ。あまりノウハウを出し惜しみすると、顧客の要望に応えることにはならないし、かといってオープンにし過ぎると肝心の差別化にはつながらない。何を自分の勝負にするのかはよくよく考えなければならない。それが見つからないというのは論外だ。私の理想は、ある領域において、そのWebサイトの場が昔の井戸端会議のように皆が寄り集まって好きに話し合えるような場となることだ。ある悩み、問題について皆が好きに話し合うことができ、しっかりした技術をもったものがその後ろ盾となってきちんと管理しているといったイメージだろうか。
だから、決してWebサイトはできた時が完成の時ではない。それをまめにフォローしていってやる必要がある。それを私はよく子育てに譬える。子供は生んで終わりなのではない。そこからきちんと教育して、初めて一人前になる。それと同じだ。Webサイトを作った時のままにしている企業も多いが、それで目的を達成しようとしてもそれはどだい無理な話だ。「Webサイトを作ったのはいいけれど、なかなかそれが商売に結び付いていない」と嘆く向きには、「まずしなければならないことができていますか」と問いかけるようにしている。無論、自分自身に対しても同じことだ。