キャッシュフロー計算書も大切

企業が利害関係者に対して一定期間の経営成績や財務状態などを明らかにするために作成される書類を財務諸表という。日常用語としては決算書と呼ばれているが、代表的な貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書を見るだけで、その企業の戦略の違いが分かるから面白い。中小企業の中にはキャッシュフロー計算書を自ら作っていないところもあるようだが、是非この財務三表は作ることをお勧めする。

まず、貸借対照表はその英語の頭文字をとって「B/S」とも呼ばれる。大きく資産の部と負債の部に分かれる。これは集めた資金をどのように使っているかを表している。自己資本比率はどのくらいあるのか。流動比率、当座比率で短期的な企業活動を続けられるか安全性をチェックできる。

損益計算書もその英語の頭文字をとって「P/L」とも呼ばれる。これは端的に企業がどれだけ儲けているのかを示す。利益といっても、売上総利益、営業利益、経常利益、税引き前当期利益、当期純利益と5つあって、普通良く用いられているのは、その企業の通常の活動での儲けを表す経常利益だったりする。

この貸借対照表と経常利益があればいいじゃないかと言われる経営者も多いが、それらでは分からない「黒字倒産」の例などを、キャッシュフロー計算書を使うことによって防ぐことができる。

見逃せないポイントは5点

これら財務三表で見逃してはいけないポイントとしては、貸借対照表からは①債務超過になっていないか、②借入金の返済に余裕があるか(流動比率、当座比率は一定以上あるか)、損益計算書からは③売上高に著しい減少はないか、④継続的(3期以上)の経常損失でないか、キャッシュフロー計算書からは⑤継続的(3期以上)に営業キャッシュフローがマイナスになっていないか、の5点がある。銀行からの融資を申し込む際にも、この5点は最低チェックをされる部分だ。万一そのどれかに引っかかる部分があれば、早急にその改善を図らなければならない。

経営戦略の違いはこうした財務三表を見るだけでも明確に分かる。例えば、損益計算書を例にとって見てみよう。
今、売上高が同じ、例えば100億円のA社とB社があったとする。A社は売上原価が40億円、販売費及び一般管理費が50億円、B社は売上原価が80億円、販売費及び一般管理費が10億円であったとすると、A、B両者とも営業利益は10億円だ。しかし、その後経済状況が悪化して、両者とも売上高が3割減少するとする。その時はA社の売上原価は28億円、販売費及び一般管理費は50億円で営業利益は8億円の赤字。一方のB社は売上原価は56億円、販売費及び一般管理費は10億円で営業利益は4億円で、両者とも売上高は7億円と同じなのに、赤字と黒字の真逆な結果となる。

逆に、経済状況が良くなり売上高が3割増えるとしよう。この場合は、両者とも売上高は130億円だが、営業利益はA社で28億円、B社で16億円となり(途中計算は割愛)、先の売上高が減少した場合とは異なり、A社の方が良い結果を生むことになる。

これはビジネスの型として、固定費型(A社)を取るのか、変動費型(B社)を取るのかの違いだ。固定費型はハイリスクハイリターンにつながるし、変動費型はローリスクローリターンにつながる。創業時、不相応に豪華な事務所や店舗を構えると、たちまち倒産につながる例が後を絶たないのは、これらの結果を見ても明らかだ。

同じ業界でも戦略の違いが浮き彫りに

次の例はどうだろう。ユニクロとしまむらを比較してみる。両者のそれぞれの売上高に対して、ユニクロの売上原価率は48%、販売費及び一般管理費率は38%、一方のしまむらは売上原価率は67%、販売費及び一般管理費率は24%だ。この数字からユニクロは少品種大量生産型で都市型店舗が多く地代家賃や広告宣伝にもお金がかかっていることが分かる。一方のしまむらは多品種少量生産型で、最近は都市型店舗も増えているようだが地代に安い郊外型店舗が主力で、広告宣伝にも比較的お金をかけていない。

改めてことわっておくが、どちらが良いかという問題ではない。同じ業界の中にあって、どこにお金をかけて差別化しているか。どこに自社の強みを置いているかという問題なのだ。

資生堂とマンダムの比較はどうだろう。資生堂の売上原価率は25%、販売費及び一般管理費率は68%、マンダムの売上原価率は45%、販売費及び一般管理費率も45%だ。資生堂の販売費及び一般管理費のうち、マーケティング費率は22%、人件費率は21%。対するマンダムはそれぞれ18%と10%。女性向けに対面販売を主とする資生堂とドラッグストア―などに男性用の販売を主とするマンダム。両者の違いは数字にも明らかだ。

独自のスタンスの確立を

マーケティング用語に「バリューチェーン」というのがある。マイケル・ポーターがその著書「競争優位の戦略」の中で使った言葉だ。企業が購買した原材料などに対して、各プロセスにおいて価値(バリュー)を付加していくことが企業の主活動であるという考えに基づいている。企業はどういう戦略を取るにせよ、それぞれのプロセスをどのように連結させて、企業全体として独自のスタンスを確保していくかを考えていかねばならない。

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