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消費税10%へいよいよ秒読み
いよいよ今年の10月に消費税を10%にアップするための取り組みが政府・与党の間で本格化している。消費税が8%に引き上げられてから5年半。これまで再引き上げについて延期が繰り返されてきたが、今度ばかりはようやくその10%の実現に王手がかかったかのように見える。まだまだその導入までにはどんな展開があるか分からないとする意見もあるが、現実的には今からその準備にかかっておかねばならないだろう。
しかし、一方で消費税が8%に据え置かれるものもあって、何が8%で、何が10%になってしまうのかとてもややこしい。巷では、しばらくはクイズのような感覚で面白おかしく取り上げられもしている。例えばコンビニで買ったおにぎりは8%、但し、フードコートで食べるために買ったものなら10%、水道料金や電気料金は10%、新聞は紙が8%だが、電子版は10%、といった具合だ。
それでも基本的には商品の購入に代表されるように10月1日から消費税が8%から10%に引き上げられるわけだが、いくつかの注意項目があるので、今回はそれに焦点を当ててみた。
まず、「経過措置」という制度が設けられている例から見てみよう。これは消費税が引き上げられる10月1日の半年前、つまり3月31日までに契約を締結していた工事の請負などの場合、引き渡しが10月1日以降になっても消費税率は8%のままでよいとするものだ。
今回の特徴は2つ
例えば、マイホームの引き渡しが9月30日までであれば消費税が8%、10月1日以降であれば10%となれば、消費者から見ればこの場合の2%の差は大きく、何としても建設費を安く抑えるために9月30日までに引き渡しを求めたいとなるのは仕方のないことだ。逆に10月1日以降の竣工・引き渡しされるマイホームは激減することが当然予想される。このようなことに対応するため、仮に引き渡しが10月1日以降になっても、工事の契約などの締結が3月31日までであれば、消費税は8%のまま据え置かれることになる。
もうひとつのポイントとされるのが、上記のような経過措置が取られるにも関わらず、冒頭にも述べたようにそもそも消費税率が8%のまま据え置かれる品目があるということだ。いわゆる。「軽減税率」と呼ばれるものだが、当初その対象には様々な意見があったものの、結局は①酒類・外食を除く飲食品、②定期購読契約に基づく週2回以上発行される新聞、の2品目に落ち着いた。
中でも、「酒類・外食は10%、テイクアウトや宅配は8%だが、ケータリングなどは10%」とされているので、コンビニやカフェ、飲食店などではその導入に当たっては今から混乱が予想されている。
補助金の申請は早めに
消費税率の変更に伴い事務所の会計ソフトや店のレジなどの対応準備をしておかねばならないが、特に複数の税率を扱う必要からシステムの改修が求められる飲食料品を扱う事業者においては、国の補助金制度も用意されている。中小企業や小規模事業者が複数税率に対応するレジの導入や受発注システムの改修を行った場合、国からの「軽減税率対策補助金」が利用できるようになっている。
この補助金には、①複数税率に対応するレジの新規導入や既存のレジを改修する場合の補助金(A型)と、②電子的な受発注システムを利用する事業者のうち、複数税率に対応するための改修・入れ替えを行う場合の補助金(B型)がある。それぞれの補助金の上限額は異なり、A型はレジ1台につき20万円、1事業者につき200万円が限度、B型は小売事業者などの発注システムが1000万円、卸売り事業者などの受注システムが150万円、両方の改修・入れ替えが必要な場合は1000万円がそれぞれ限度、にする。
補助金の申請期限は12月16日だが、9月30日までに複数税率対応のレジ及び受発注システムの導入又は改修を終えて支払いを完了していなければならないことや、申請受付の期限が補助金の種類によって異なるので注意が必要だ。のんびりと構えていては、その時期を逸してしまう可能性がある。
事業拡大へのきっかけに
対応が大変なのは何もこうした経過処置や軽減税率の対象になりそうな事業者だけには留まらない。概略見て、自分たちには関係なさそうだと思っていると大間違い。売り上げ的には関係なくても、経費として使う分には関係してくるからだ。例えば、それ以外の事業者でも普通に水やお茶、お茶菓子や贈答用のお菓子などを購入することはあるだろうが、これらについても軽減税率の対象になるので経理担当者は区分しなければならない。
例えば、お客様のところへ持っていく贈答品も、その中味がお菓子だったら8%、お酒だったら10%になる。これまでは「交際費」でひとくくりにしていたものが、10月1日以降は「中味は何?」と確認が必要になる。少し考えただけでも経理担当者の負担は大きくなるのは目に見えているのだ。
消費税10%への引き上げ時期についてはこれまでも2度に渡って延期されてきた経緯がある。「今度も」と期待するより、事業者としてはこれを機に商品価格の再検討、非現金決済化への対応を進めるなど、事業拡大への機会としてとらえていかねばならない。