【目次】
手段はいろいろ
これまでデジタルマーケティングについて触れることがなかったのだが、いろいろな機会にどうしても話題に上りやすいことと、私自身も使っていて思うところも若干あるので、これからそれらを定期的に書いていこうと思う。もっとも、私はその方の専門家ではないためあくまで利用者としての立場からの意見になることをご了解いただきたいのだが、これを読んでおられる読者の皆さんと意見を交換できればいいなと勝手に思っている。
さて、そのデジタルマーケティングなのだが、私が今、手をつけているのは自社のWebとFacebookだけだ。LINEはメール代わりの連絡用に、Twitterもとりあえず登録はしているのだが受信だけしかしていない。Webは昨年末に全面改訂をしたばかりだ。その時、1週間に最低でも2、3回はブログを掲載しようと意気込んでいたのだが、まだそれが実現できていない。Facebookも同様だ。こんな状態でこの原稿を書く資格があるのかとも思うが、きっと読者の皆さんの中にも同じような境遇に陥っている方も多いに違いないと勝手に判断し、皆さんと共に少しずつでも利用を促進していけるようにできれば幸いだ。
情報が拡散する時代
何しろ、今やこうしたSNSの利用なしではもうやっていけない時代だ。私がそのことを痛感したのは、ある時、仕事仲間の中学1年生の息子さんの将来の夢が、「ユーチューバーになること」と聞いてぶったまげたことだった。大変失礼ながら「まともな中学生じゃないな」と咄嗟に思ったのだが、分かっていないのは私の方だったと後で知る。今やSNSの利用率は若い世代を中心に考えていた以上に進んでいる。少し古いが、総務省による2017年の調査で、You Tubeの利用率は10代の男性で82%、女性で87%、20代なら男性で91%、女性で93%にも達している。同じ調査でFacebookなら10代男性で17%、女性で21%、20代男性で51%、女性で60%だ。いずれも数字も今は更に高くなっていることだろう。
とにかく、スマートフォンの普及は、私たちがいつでも世界中につながるという「革命」を起こしている。それと共にソーシャルメディアも急速に普及しているのだ。このソーシャルメディアの普及で、それまでの情報がマスコミなどを通じて一方的な広がりしかなかったのが、誰もが情報の発信者になり、しかもその情報が「拡散される」ようになった。消費者の口コミや共感が重視されるようになってきた由縁だ。これがなかなか、特に中高年の世代にはやっかいなものに映る。
時代に対応できていない
何がやっかいかというと、企業から発信するメッセージが、必ずしも意図した形で伝わらないケースが増えているのだ。それは社会から企業が発信するCMや様々なメッセージに対して批判が集まり、謝罪に追い込まれるケースが後を絶たないことでも分かる。誰もが意見を発信し易くなったことで、今までは我慢することができていた隠れた不平や不満も、そのままストレートに表に現れるようになったのだ。これまで知ることのできなかったそれらのマイナスな要素が分かるだけならまだ企業にとってもプラスにとることもできるかもしれない。しかし、それらが瞬く間に社会に拡散されると企業の対応が追い付かない。新しいソーシャルメディアの時代に追いつくことができていないのだ。
実際、アメリカの企業を対象にした2017年の調査によると、平均してソーシャルメディアに11%ものマーケティング予算を使っているのに、44%の企業が効果を実感できていないという結果が表れている。この結果を見て、ホッとしている企業も多いのではないだろうか。そう、悩んでいるのは自社だけではないのだ。もちろん、だからといって何もしないで良いわけではない。これからどうすればその効果を得ることができるのか、一緒になって考えるつもりでこのコラムをシリーズのような形にして書いていきたいと思う。
テレビ広告以上の効果を中小企業でも
まずソーシャルメディアで大きな成果を挙げた例として報告されているものはいくつかあるが、ここではその中の一つである、化粧品ブランドの「Dove」の例を取り上げてみたいと思う。
このDoveが2013年に「Real Beauty Sketch」と名付けて公開されたキャンペーンが今でも語り草となっている。このキャンペーンはわずか3分間の短い動画で、自分自身が書いた自分の似顔絵と、名前も知らない他人が書いた似顔絵を比較するという内容だった。多くの女性が自分自身の魅力に疑問を感じていたり、過小評価しているという問題に着目し、「あなたは自分が思っているよりも美しい」というメッセージを届けるものだった。
結果、この動画は最初の1か月間で380万回も共有され、DoveのYou Tubeチャンネルに1万5000人もの新たな購読者を生み出し、肯定的な評価は16万にも及んだ。わずか3分間の動画でも顧客に共感してもらうことができれば、世界中の多くの人にメッセージを届けることができるという例だ。これなどは、ソーシャルメディアの可能性を端的に示しているように思われる。
これまで宣伝というとせいぜいが雑誌広告を出稿したり、ビラや折り込みチラシを出すに留まっていた中小企業だって、ソーシャルメディアを使えばテレビを使った宣伝以上の効果も夢じゃない?じゃあ、何から手をつければいいのだろう。本当にそんなことができるのか。それを次回から一緒に考えていきたい。