【目次】
何故売り上げが伸びないのか
商売上、人の仕事の悩みをよく聞く。いろいろな悩みがあるものだが、中でも多いのはやはり売り上げが伸びないことに対する悩みがダントツだ。「頑張っているのに売り上げが思ったように伸びない」「良い商品だと思うのに商品を勧める最後の一押しができない」「いつもいいところまで提案が進むのに、何故か肝心なところで契約できるチャンスを逸してしまう」など。こういった時は、販売戦略や販促方法などを考え直すより、まず自身を見直すことをお勧めしている。つまり、「アクセルと同時にブレーキを踏んでいませんか」、ということだ。
意外と思われるかも知れないが、成果を上げられないと悩んでいるそもそもの原因の一つに、「売り上げを上げたいアクセル」と「売り上げを上げたくないブレーキ」を両方同時に踏んでいることが上げられる。「そんなバカな」と思われるだろうか。それが本当にあるのだ。何を隠そう、この私がそうだったのだから間違いはない。「売り上げを上げないとそろそろ食い扶持に困る」という差し迫った事情があった一方で、「まだまだ実績がない中で、本当に受注したらどうしよう。どうすればいいだろう」と思っていた。
隠れた気持ちを知る
当時は、そんな風に考えているなんて、私自身思ってもいなかった。でも、本当に生活が差し迫った状態にきた時、やけくそになって、それまでバタバタしていたのを一旦止めて、じっと自分の心に向き合ってみた。「本当にこの仕事をしたいと思っているのか」「売れないのは何が悪いのだろう」と。机の上に真っ白な紙を置いて、自分の思いを書き出してみた。誰に見せるわけでもないので、正直な気持ちを書いた。そうしたら、当然のごとく売り上げを上げようとしていた影に、思いがけないことを考えている自分がいることに気付いた。それまで私は自分自身を客観的に見ることについては少し自信を持っていたのだが。
まあ、そんなことはどうでも良いのだが、気付いたことというのは、「売り上げを上げたいけど、これ以上忙しくはなりたくない」「顧客にサービスを紹介したいのだけど、どう思われるか心配」「新しいことをやり始めようとしているのだけど、失敗するのが心配」「もっと売りたいのだけど、クレームが起きると嫌だ」「営業をすれば、値下げばかり要求されて面白くない」などなど。本当に驚いた。自分がこんなことを考えているなんて。やはり自分に真正直に向かい合う時間を作ることは必要だ。
ジレンマは一つずつつぶす
そんなジレンマを抱えていては、売り上げを上げようにも上がらないはずだ。私は一つずつそのジレンマをつぶしていった。「やっても無駄だからあきらめよう」ではなく、「成功したらどれだけ売り上げが上がるのか」というプラスの発想が行動を生む。当たり前のことだけど、失敗を恐れるより、成功した時の自分を考えた方が、仕事も楽しくなる。私はそれが頭では分かったつもりでいても、実際にはできていなかった。
例えば、「売り上げを上げたいけど、これ以上忙しくはなりたくない」には、「忙しくなったら給料はいくらに上がるだろう。そうすれば、休日にはもっと自分の好きなことができるかもしれない」、「顧客にサービスを紹介したいのだけど、どう思われるか心配」には「提供しようとしているものをよく知ってもらえれば、顧客はどれだけ満足してくれるだろう」、「新しいことをやり始めようとしているのだけど、失敗するのが心配」には「誰もやっていないからチャンスがある。成功したら業界でも注目を浴びる」、「もっと売りたいのだけど、クレームが起きると嫌だ」には「クレーム自体は怖くない。むしろクレームはよりサービスを向上させるためのチャンスだ」、「営業すれば、値下げばかり要求されて面白くない」には「値下げを要求されるのは私の説明が足りないから。むしろ時にはサービスをしてその後に値打ちを知ってもらうのもいいかもしれない」という具合に、プラスの発想に変えていった。
考えて、行動すること
ブレーキが解除できれば、後はアクセルのみだから仕事に対する勢いが違ってくる。慣れない間は毎日、そんなやり取りを自分の中でしていた。そして、まず何より自分がその仕事に対する自信を持つのだ。もちろん謙虚な姿勢はいつでも無くしてはいけないが、顧客に対して自信のないものを売るほど失礼なことはない。そもそも自分で自信の持てないものは顧客に売ってはいけないし、そもそも売れるはずがない。訳の分からない自信も、外から見ていると滑稽に見えるだろうが、訳の分からない理由で自分にブレーキをかけるのはもっと滑稽だ。
ここまで、私の例をお話ししてきたが、似たようなことで悩んでいる人も多いのではないだろうか。少なくとも、私が相談に乗ってきた中ではそうだった。冒頭にもお話ししたように、販売戦略がどうのこうのいう前に、まずは自分の心と真正直に向き合うこと。それが何より大切なように思う。もっとも、最近は経営に対する知識を詰め込むのに忙しく、まずこうした「考える」ことを苦手にする人が増えているのも事実としてあるように思う。知識も大切だが、まず考えて、行動することから始めよう。