どんな顧客を持っているか

「顧客を見ればその企業がどんな企業か分かる」と言われる。付き合っている友だちを見て人を判断するのと同じだ。特に長く続いている顧客を見ることで、その企業のレベルが測れる。良い顧客を長く持っている企業は、やはり良い企業なのだ。経営本にも、新しい顧客を獲得するコストを考えると、既存顧客を守ることの方が得策であるというようなことが書いてある。

新規の顧客を獲得するには、販促物を用意するだけでなく、値引きをしたり、サービスを付け加えたりと、あの手この手でいろいろな営業活動をすることになる。しかし、本当に自分の価値を分かってくれている既存の顧客なら、適正価格でずっと商品やサービスを買い続けてくれるので、結果的にその方が儲かるというのだ。

既存顧客に目は向いているか

しかし、実際に企業で行う営業会議などを覗くと、やたら新規の営業成績を言いたがるところが多いように感じる。もちろん、新規の営業も必要だろうが、その陰で、既存顧客をないがしろにしていないか、既存顧客の売り上げも上がっているのかをきちんと確認する必要があるだろう。もちろん、一番良いのは既存顧客の売り上げが増えながら、新規の顧客の売り上げも上がっていることだ。しかし、ダメな企業のほとんどは、今まで続いてきた既存の顧客の売り上げが下がっていたり、既存顧客の数自体が大きく下がっているものだ。

既存顧客の動向は、企業の現状の実力を良く反映している。それは当該企業のことを良く知っている顧客の反応だからだ。だから、必要以上に既存顧客の動向には注意して見ておく必要があるのだ。さらに、最も望ましいのは、既存顧客が新規顧客を紹介してもらえることにある。これこそが一番の信用になる。中小企業でも個人事業主でも、本当に優れた商品やサービスを提供できているところは、営業活動をほとんどしていない。商品やサービス、それに顧客そのものが、最高の広告になっているからだ。

6つの段階を持つ顧客

リレーションシップ・マーケィングなるものがある。リレーションシップなる言葉自体、企業を取り巻く様々なステークホルダーとの関係を指し、それぞれの関係性を高めるための方策を探るためにあるようだが、その中に特に顧客との関係性に重視をし、顧客を段階ごとに分けて、それぞれに効果的なマーケティングを行おうとするものがある。

それによると顧客は6段階に分けられる。「潜在顧客」から始まり、「顧客」、「得意客」、「支持者」、「代弁者」、「パートナー」へと続く。もちろん後になるほど関係性が深まる。企業はそれを目指さなければならないとする。

「顧客」は普通に商品やサービスを買ってくれた客を指す。「得意客」との違いは、それを良く買ってくれるかどうかだ。さらに、その得意客と「支持者」との違いは、支持者になるともうその決めたメーカー、決めた店舗でしか買わない客のことを指す。まさにロイヤリティー100%の客だ。

しかし、それだけで終わらない。さらにその上の客がいる。それが「代弁者」であり、「パートナー」になるわけだが、代弁者は「あの商品が良かったから、あなたも買ってみたら」と他に口コミをしてくれる客のことだ。「パートナー」にもなれば、口コミで終わらず、まるでその企業の代理店であるかのように、他の客を誘ってくれたり、イベントに参加したりしてくれる客を指す。

「顧客の一番」になる

このように関係性を深める時のポイントは何といっても、顧客にとって自社を「一番」だと思ってもらえるかどうかだ。富士山が一番なのは「標高」という単一の物差しがあってなっているのだが、プロ野球で巨人を好き、阪神を好きな人に理屈はないのと同じだ。要するに、理由は何だっていいのだけど、その顧客にとっての一番になれば良いのだ。その一番になる要素を自社の商品やサービスに見つけなればならない。品質で一番なのか、サービスで一番なのか、それとも品質と価格とサービスの組み合わせが一番なのか…といった具合だ。

さらに、顧客に特別感を持ってもらうのも大切だ。「(多くの顧客がいるのに)そんなことできるわけがない」とすぐにできない理由を探すのはご法度だ。特別感を出すのはさして難しいことではない。どうすれば特別に扱えるかが知恵の絞りどころなのだが、ただ顧客を名前で呼ぶだけでも特別感につながる。顧客に喜んでもらおうという気持ちがあれば、ちょっとした気遣いもできる。そうして、顧客に満足を与えるのでなく、感動をしてもらうのだ。

神経を研ぎ澄ませてみよう。身近にも感動できる体験は転がっている。まずそれに気づくことから生活を変えていってみてはどうか。

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