ペルソナで顔写真までつくる

自社の顧客がどういう人かを把握するために用いられる手法に「ペルソナ」というものがある。ペルソナとは「その商品・サービスにとって最も重要で象徴的な顧客モデル」という意味だ。氏名、年齢、性別、居住地、勤務先、年収、家族構成などの定量的なデータだけでなく、その人の生い立ちから現在までの様子、ライフスタイル、消費行動などまで設定する。中にはイメージを明確にするために顔写真を作ることまであるというが、ターゲットを明確にするためにはこのペルソナがとても有効になる。

ペルソナを活用するメリットとしては、大体以下の3つが挙げられることが多い。
一つ目はターゲット側の視点で商品やサービスを見やすくなるということだ。具体的な人物をイメージすることで冷静に商品を確認し易くなる。二つ目はターゲットが商品やサービスのどこに関心を持つのかが分かるということ。つまり、これはターゲットが何を求めているのか、何に困っているのかが分かりやすくなるということだ。そして三つ目は社内の意識が合わせやすくなるということ。社内の商品開発や販促で意見が分かられることは多いが、具体的なターゲットを思い浮かべることで意識合わせがスムーズにできるようになる。

ペルソナを作る4つのステップ

このペルソナを作るのに、ただ何となく作るという風に済ませてはいないだろうか。ここがいいかげんだと、ただ現状を追認するだけに終わってしまう。すでに商品があり、既存客がいる場合、基本的に次のステップを踏んでいくことになるが、どうしてもすべてを行うことが難しい場合は①の結果に基づき、それをペルソナに仕立て上げることもできる。
① 重要なターゲットになる顧客を選ぶ
販売データなどをもとに既存の顧客をいくつかのグループに分け、各グループから重要なターゲットと思われる顧客を数人ずつ選ぶ。
② インタビューを行う
選び出した顧客のインタビューを行い、顧客自身のことや、なぜ商品を購入したのかなどを詳しくヒアリングする。
③ インタビューの結果の整理
ヒアリングした項目を「住所」「職業」などの項目ごとに分類し、各グループで共通するパターンを探す
④ ペルソナへの落とし込み
共通するパターンをもとに、各グループを代表するペルソナを1人ずつ作っていく

あこがれの芸能人に近づきたい背後の人たち

既存の商品なら上の過程をたどることでペルソナを作ることができるが、まったくの新規商品やサービスを開発・販売する場合は、そもそもその商品を誰に向けて開発したのか、誰に向けて売ろうとしているのかを商品開発者や営業担当者などと話しあって、掘り下げていくことになる。

これまでに見たように、代表的なモデルを人格化したペルソナの活用は、「たった一人」の目指すものだ。しかし、実際にはその背後に隠れた多くの人の心を打つことに繋がるものであることを忘れてはならない。早い話、ある芸能人を想定して作った商品は、その芸能人に売るだけでは一人だけの商品だが、その芸能人になりたい、少しでも近づきたいと思う人たちがその背後に何万人、何十万人といて、それらの人たちの購入に繋げることができるということだ。

商品やサービスによってはどうしてもペルソナを作ることが難しい時があるが、そんな時でも「○○に興味があり、〇〇で悩んでいる、年商○○円ぐらいの中小企業経営者」などと、少しでもターゲットを具体化するようにすればいい。

ペルソナの状況に応じた販促を

そうしてペルソナができると、販促の段階ごとにどのような対策を取ることが効果的かを具体的に考えていく。同じ特徴を持ったターゲットでもその商品に対する興味や関心を持つ段階によって、とるべき販促活動は異なってくる。

例えば、商品自体を知らない場合や他の商品と迷っている場合、同じような商品を出している他社と比べて迷っている場合や自社商品との間で迷っている場合など、それぞれの興味・関心によって求める情報は異なってくる。

まったく新しいジャンルの商品やサービスの販売を始める場合、誰もその商品がもたらす利点を知らない。だから商品ジャンル自体の特徴や利点を紹介するところから始めなければならない。他社でも同じような商品を扱っている場合は、わが社で買ってくれればこんなにトクをしますよと伝えることが重要になってくる。

よく「使ってもらえば商品の良さは分かってもらえる」と話す方がおられるが、それは「使ってもらわないと分からない」ということでもある。顧客の立場に立って、独自のウリをどう伝えるかを丁寧に考えていかねばならない。

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