見た目がすべて?

私の知り合いのコンサルタントは、2週間分の異なる背広とネクタイ、靴をそろえているという。そのどれもが高級品だそうだ。「コンサルタントは見た目も大切。クレイアントの成りたい姿を反映していないと仕事はとれないよ」と豪語している。そういわれて見れば、成るほど高級そうな身なりをしている。私などは鈍感な方なので、そういわれて初めてそういうものかなと思ったのだが、皆さんはどう思われるだろうか。

確かに、外見や服装、髪型は第一印象に大きく影響するのは間違いない。男性であれ女性であれ、加齢とともに容姿はどうしても衰えてくるので、年齢に応じて自分の身なりにある程度投資しないと、相手に貧相な印象を与えてしまい勝ちと言われる。

これも私の知り合いで、ネットで男女のお見合い相手を紹介することを仕事にしている者に聞けば、男女とも40歳も半ばを過ぎると、途端に顔写真が個性的になるという。40歳前半までは若さ溢れる写真でどれもこれも似たような趣なのが、40歳後半になると若さに隠れていたそれまでの生き方や性格が表に出てくるようになるというのだ。何とも興味深く、恐ろしい話ではある。

感情まで左右する見た目

なかなか面白く話しを聞いていたのだが、いざそれで自分の顔写真を見つめ直しても、いつも見ている顔と同じでつまらなくもあり、特に変わったこともないように思える。私の顔写真は、ある時に行きがかり上、プロのカメラマンに撮ってもらったものだが、それでもつまらないものはつまらない。

そのつまらない顔をフォローするためにも、ある程度の年齢に達すれば服装にも気を遣う必要があるということか。しかし、今年の夏の異常な暑さに、たとえそうでなくても、最近はクールビスで夏場はネクタイもほとんど外したままで人に会うことが多くなった。これではつまらない顔を服装でフォローすることも難しい。逆に、たまに相手がネクタイを締めてビシッと決めてこられた日には、ちょっとうろたえてしまったりする。

そういえば、大雨の中を顧客のところに出かけなければならなかった時のこと。傘を差していたにも関わらず、先方のところに着いた時には全身ずぶ濡れで、頭からも水が滴り、ズボンの折り目はすでになく、靴は歩くたびにクチャクチャと音がした。そこに先方が仕立ての良い背広をビシッと着こなして来られ、劣等感を感じてしまったことがあった。

「外見で判断はダメ」は昔話

人は外見では判断してはいけない、とは良く聞かされたものだ。私の子供がまだ幼いころ、読んで聞かせた児童書に載っていた一休さんの話を思い出す。

とある富豪の家で盛大な法要が営まれる席に一休和尚が招かれた際、子供たちと遊んでいる時にいつも着ている汚れた袈裟をわざと着て早く行った。すると富豪の侍従が門前でその姿を見て追い返してしまう。そのあと、一休和尚の到着が遅いので富豪が迎えを出すと、金襴の袈裟に緋の衣を着た井汲和尚がやってきた。今度は手のひらを返したように歓待される。

一休和尚は、「私が迎えられたのはこの袈裟と衣を着ているからだろう。ならば私が上がる必要はない」と言って、金襴の袈裟と緋の衣を置いて帰ってしまったという話だ。

一休さんだけはない。私が子供のころは人は外見でなく中味こそが大切とされ、それは今でもそうだろうが、子供向けのアニメなどもそんな題材を取り上げた「スポ根もの」が多かったように思う。

 

外見に気を配れる時代だから大切な第一印象

数年前に発表された研究結果で、ベテランの人事担当者は、第一印象を形成するのに100ミリセカンド、つまり10分の1秒しかかからないというのがあった。最近の研究ではさすがにそれが7秒に増えてはいるようだが。しかも、こうして決定的な7秒が過ぎると、大抵の採用担当者は残りの面接時間を自分の最初の反応を自分の中で正当化するのに費やすのだという。また、その研究で分かったのは、そのような短時間で下した評価は、時間の制約がない中で下した評価と大差がないということだった。

やはり昔からの教訓は教訓として、今日、第一印象が途方もなく重要であることは間違いないのか。昔とは違って、外見にある程度気を配れる時代だからこそ、そこに配慮をするのは礼儀でもあるということなのだろうか。それならいっそのこと洗練されて、プロフェッショナルに見えることが大事かもしれない。派手過ぎても、注意を引きすぎるようであってもいけない。そうして見栄えの良さが自尊心と自信を高めてくれるのであれば、見た目から入ることも手段としてアリなのかもしれない。それに加えて、ボディランゲージだ。相手の目を見ること、相手の姿勢に注意を払うことなどは基本だと言える。相手の話にうなずいたり、笑顔を見せるだけで大分違ってくる。

第一印象を与える機会は2度ないことを考えると、そんなことで後悔はしたくないのだが。さて、私はどういう風に相手に映っているのだろう。

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