【目次】
ネガティブな言葉を避けるようになった
私は2年ほど前から何となく日記をつけ始めている。三日坊主で終わるようなことのないように、元来がケチな私は5年分書き込める分厚いノートを買った。これで無駄にはできないと思えば、嫌々でも続けるのではないかと図ったのだ。大体が就寝前にその日の出来事を簡単に記すのだけど、今のところその狙いは当たって書き続けることができている。
もともと、日記をつけることは、私が以前勤めていた会社で仕事の上で尊敬していた同僚がいて、その同僚に勧められながら実行に移せないでいたのだ。今となっては、何故、その同僚が私に日記をつけることを勧めたのか忘れてしまったが、その日記をつけていて気付いたことがある。
それは言葉の大切さだ。つい何か嫌なことがあった日には、マイナス思考の言葉を使い勝ちなのだが、後で読んでみてもそれは自分自身で見苦しいだけだ。というか、その日記帳は5年間の同じ日の出来事を読み比べることができるようになっているのだが、読み返そうという気にもならない。
たかが日記の中の自分しか読まないはずの言葉なのに、そのことに気が付いてからは、言葉を選ぶようになった。今では一日を振り返って日記を書くとき、できるだけネガティブな言葉は避けるようにしている。
「言霊」の威力
言葉の重要性は、昔から「言霊」といわれるようにその力が信じられてきた。中国の明時代に書かれた「慎言集訓(しんげんしゅうくん)」には日常的な会話の中にも、心すべき言葉がたくさんあることを戒めている。その中のいくつか紹介すると、以下の通りだ。
【多言】日常の会話の中でも饒舌な人物に出会うことがあるが、その多くは自慢話か不遇な我が身のボヤキでしかない。要するに自分のことばかりを話しているのだ。聞き手に不快感を与えると同時に、自分自身も聞いていることを忘れてはならない。
【妄言】知識やアイデアを振りかざす大言壮語や、我が身に起きてもいないことをあれこれ想像して悩むという取り越し苦労などの言葉。「プラス思考」の妄言を心に強く念じることで大きな意味を持つこともある。
【雑言】道理にかなわない無駄話の類。有益な知識を伝えるものではなく、軽率な人物と受け取られる。自己の存在価値を高く見せようとして、かえって貶める結果となることが多い。
【悪言】悪意を持って人を罵る言葉を指す。他人への批判は自己の不甲斐なさを語ることでもある。
このほかにもいろいろあるが、これをすべて自分に当てはめて生きようとすれば、窮屈すぎて息が切れる。
自分の成長を知る
日常会話における言葉であっても、それは強烈な暗示を自分自身にかけることになるという。だから、たとえ冗談でもマイナス思考の言葉は口にしない方が良いことになる。まあ、私なりにそれらをまとめてネガティブな言葉を使わないようにしているわけだ。日記をつけることによって、今まで何気なしにマイナス思考に陥っていたことが、こうして文字にすることで自然と矯正できたことは思ってもみなかった大きな収穫だった。
それからもう一つ感じていることがある。それはこの2年間の自分の成長(?)が分かるということだ。起業して一人で仕事を頑張っておられる方は多いと思う。私もその一人なのだが、自分のしていることの成果が経営数字以外に分かることが案外少ないのだ。
もちろん、経営数字が上がっていればそれだけで良いようなものだが、数字が思うように上がっていない場合、やりきれない思いに駆られることは多い。そんな時、日記で過去からの変遷が分かれば、自分なりに悩んだ跡を見つけたり、今では当たり前のようにしていることでも過去の経験があってできていることが分かると、目には見えなくても少しずつ成長している自分がいるのが分かる。
成功者は日記をつけている?
それでも、私のたかだか2年間程度の経験から日記を勧めるのは気が引けるので、2年間ではなく、20年間日記を書き続けている知り合いの方にその効用を聞いてみた。すると、その方曰く、①記憶の整理ができる、②感情の整理ができる、ことがまず挙げられた。①の記憶の整理ができるのは何となく分かっていただけるだろう。②は良かったことも悪かったことも日記に書き出すことで気持ちの整理ができることだそうだ。
そして、③自分の心を振り返って反省できる、④改善につなげることができる、がある。③、④はPDCAのサイクルで言えば③がC(チェック)で、④がA(アクション)といったところだろうか。
そして最後は⑤長期の目で見た反省ができることだ。これは③における反省とは異なり、また時間が経ってからの振り返りができるということだ。時間を経ることで、改めて自分の成長度合いに気付くこともできるという。
いかがだろうか。日記を書くという行為は、面倒なものと思われるかもしれないが、これだけの効果がある。「成功者は日記をつけている」という言葉もあるそうだ。その真偽は知らないが、きっと経営者にとっても役立つものなのではないだろうか。