高まるシニアの労働力

55歳から64歳の日本のシニア起業家は2015年に63万人で、2005年から約7割増となっている。起業率は4%で、この数字は先進国(26か国)平均の4.6%と比べると低いが、10年前からの上昇幅は2ポイントあり、1.1ポイントだった先進国の平均より高くなっている。少子高齢化でシニア労働力への期待が高まっていることや、年金の受給開始年齢の引き上げに伴う将来に対する不安が背景にはあるようだ。しかし、実際に起業してみてどうなのか。その実態はよく分からないが、当然のこと悲喜こもごもだろう。

特に還暦と呼ばれる60歳を過ぎる頃になると、「生き方」が分からなくなってくることがある。こんなことを言うと、不本意ながら病に臥せっておられる方々や働きたくても働けずにおられる方々には叱られるだろうが、正直なところ、できるだけ長生きした方がいいのか、適当な時に人生を切り上げた方がいいのか分からなくなってくる。でも生命だけは自分でその長短を制御することもできない。高齢者が長生きするということは、良いことばかりではない。当然のことながら他人の重荷になることも出てくる。本当は生き続けることだけで尊いはずなのに、それを素直に喜べない自分がいる。

「与える」ことを意識する

しかし、「そんなことは考えなくていい」と作家の曽野綾子氏は産経新聞の「オピニオン」の中でいう(2018年6月20日付朝刊)。「生き続けているということは、その人に運命が『生きなさい』と命じていることだから。だから表面だけでも明るく日々を送って、感謝で人を喜ばせ、草一本でも抜くことや、お茶碗一個を洗うことで皆の役に立つ生活を考えればいい」。

もっとも、最近の風潮の中には、「他人から施しを受けるのは権利」としか考えれられないような人も多いのが現実だ。そんな人は、他人に与えることは損をすることだと思っている。どちらかと言えば比較的若い人に多いのかもしれないが、高齢者でも強欲な人は親戚や社会から与えられて当然という顔をする人もいる。

まあ、こういう人に出会ったときは、これまでの長い人生をどのようにして生きてきたのかと疑ってしまう。それぞれの境遇がそうさせるのか。しかし人間は生まれてから20歳近くまで人の世話になりながら大きくなるだけに、その後は多かれ少なかれ与える側に回るのが道理だろう。それを与えることを好まないというのは、「一人前ではない」というか、そもそも人間としての在り方が間違っているように感じられる。

失敗に共通する3つの原因

起業家が増えているということは、悲しいことだが失敗する例も増えているということでもある。その失敗の原因に共通していることは以下のことだそうだ。

一つ目は、本当に自分のやりたいことや、情熱を持って取り組めることで起業をしていないということだ。これは若い人と違って、経験を積んできたシニアであることのメリットを生かし切れていないのはもったいないが、今まで長年やってきた仕事のノウハウを過信しすぎるのも要注意だ。

二つ目は、過去の実績や肩書が忘れられない人も要注意だ。過去の実績は所属していた会社の看板があってこそ。「自分は部長をしていたのに」といった変なプライドは捨てなければ、誰もついてはきてくれない。

三つ目は、人の意見を聞かないということ。人は誰でも年を重ねれば、自己主張が強くなるものと思わなければならない。聞かれてもいないのに昔の自慢話をしていないか、同じことをくどくど繰り返していないか、自分ばかりしゃべって相手にしゃべらせていないなんてことはないか。そのような人は、自分が扱う商品(サービス)や市場についても大体が見えていない可能性が高い。

与える経営を広める

少し悪いイメージを強調しすぎたかもしれない。しかし、私は特にシニア起業家であれば、これまで当たり前とされてきた風潮を変えるというか、経営の中に人間本来の「与える」経営を広めることもできるのではないかと期待をしている。いわば、「儲けることを与えた後にする経営」だ。起業する目的は前に紹介した中でもあったように、将来不安に対することが大きいのかもしれないが、高齢者だからこそ人生最後のステージとして、それぞれに社会に還元する役割を見つめ直すことができるのではないかと思う。

これは呼吸と同じだ。息を吸ってばかりいると呼吸が浅くなり、空気があまり入ってこなくなる。あまりにそれが酷くなると、「過呼吸」ということになる。しかし、体の中にある空気を全部吐き出すつもりでまず息を吐き出せば、勝手に必要な量だけ空気が体の中に入ってくる。この循環を働くことにおいても証明することが、高齢者ができる一つの大きなテーマであるように思う。

難しいことのように思われるかもしれないが、曽野綾子氏がいう「少なくとも他人からどんなに世話を受けても、感謝を忘れなければ、相手に満足や嬉しさを贈るという形で与えている」ことがまずは基本になる。「それが成熟した人間の姿勢だ」とも話しておられるが、企業の活動の中でもまずはそこから始めればどうだろう。

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