【目次】
名刺を無駄にしていないか
名刺を整理していると、その名刺をいつ、どこでやり取りしたのか記憶に残っていないものも多い。そして、そんな名刺に限って、この会社が何をしていて、何を売りたいのか、何を目指しているのかなどが分からない。これはとてももったいないことだと思う。せっかく、名刺交換をする機会を得て、その時には何がしかのやりとりをしたはずなのに、まったくその機会を無駄にしてしまっている。ひょっとしたら、名刺を交換することに満足していて本来の目的をなおざりにしているのかもしれない。欧米では、日本ほど名刺のやり取りをしないとも聞く。
私の友人で、あまり自分から名刺交換をしないというものがいる。その友人は自身の商売に関わる分野ではよく知られているようで、名刺がなくても顔で済ますことができるということもあるのかもしれないが、その友人曰く、「後で名刺を見てやり取りすることなんてほとんどないでしょう」。だからその友人に言わせると、名刺のやり取りは「無駄だ」ということになる。まあ、確かにビジネスで人に会えば、ほとんど儀式のように名刺を交換しているが、セミナーなどで講師の方と名刺交換をしても、講師の方にすれば何百人の中の一人を普通ならほとんど覚えているはずはないだろう。
広告宣伝としての役割
だからと言って、名刺は何でもいいと言いたいわけじゃない。むしろその逆で、名刺は個人を特定するこの上ない「広告宣伝物」だ。しかも、余程の事でもない限り、それを相手に受け取ってもらえる。今の世の中、普通にビラなどを渡しても、誰も目をやってもくれない。でも名刺なら、たとえ形の上であっても、一応は目を通してもらえ、相手の懐に納めてもらうことができる。
名刺は会社の顔であり、個人の顔になるわけだから、真剣に作らなければいけない。よく名刺にあれもこれもできます、と書いている会社があるが、それは何もかも中途半端で特徴のない会社のように見える。そう考えると、一枚の名刺で信頼を得ることもできるし、逆に軽視される名刺もある。「死んでいる」名刺を配っても意味はない。もらった相手がどう思うかをよく考えて、名刺を作るべきだ。
私は名刺のデザインをいつも見直している。これといって固まったものはない。だから名刺を作る時、枚数が多ければ多いほど1枚当たりの価格は安くなるのは分かっているのだが、いつも最小の単位で申し込んでいる。「これで完璧」と思っても、すぐに直したくなるのだ。
ビジネスマンにも芸名?
一般のビジネスマンは会社から与えられた名刺を使うしかないが、個人で始めた会社だと名刺は自分の工夫次第だ。でも名刺は何も会社の中でしか使えないわけじゃない。例えば、私が以前、実際にいただいた名刺の中には、お母さん同士の集まりやサークル活動で使う名刺をいただいたことがあった。最近は子供の緊急連絡先や住所などを大人に知らせるための名刺や、婚活や出会いの場でやり取りするための名刺などもあるそうだ。もっとも、一つ間違えれば、今の世の中、やり取りした個人情報が悪用される恐れもあるから注意するに越したことはないが。
だから、会社勤めだからといって、何も後生大事に一枚の名刺を抱えている必要はない。世の中で活躍するステージが多ければ、それだけ個人が持つ名刺の種類も増えてくる。こうなるといろいろな名刺が現れてくる。これも私が頂いた名刺の中に、勝手に○○の会を作って、勝手にその代表に就き、会社の名刺と一緒に手渡している人もいたし、本名ではなく、芸名ならぬビジネス名を書いた名刺もあった。それで不都合はないのだろうかと考えたりするが、ご本人はいたって満足している様子だったので、それもないのだろう。まあ、話題としては面白いかもしれない。
個人用の名刺も作っては?
今、私がお勧めしているのが、会社の名刺とは別に個人の名刺を作っておくことだ。会社の名刺をやり取りする際に、さりげなく個人としての自分も売り込むのだ。これはご自身で起業しておられても、会社勤めをしていても同じこと。自分という個人を売り込むことで、相手に興味を持ってもらう。郷里が同じだったり、趣味が同じだったりすれば、それだけで話がはずまないとも限らない。念のためにいっておくが、別に私は名刺を作る会社のものではない。名刺を新たに1枚作るコストなんてたかが知れているだろう。十分にその効果は見込めるのではないだろうか。
結局、たかが名刺だけど、されど名刺だ。机の中で溜まる一方の名刺だから適当で良いということは絶対にない。だからこそ、印象に残る名刺を、心を込めた名刺を作らなければならない。でもこれが案外手ごわい。それもそのはずで、自分の宣伝を名刺大の大きさに詰め込むわけだから、難度としては最高だ。いっそのこと、毛筆で名前だけという名刺もどこかであったような気がするが、それはそれで自信がいる。それなら、奇抜な形にして目立つ効果を狙ってみるか。これからどんな名刺をいただくことができるのか、楽しみにしている。