経済は企業が主役

いつの時代も業績の良い会社がある一方で、そうでない会社がある。マスコミは大体において不景気は政府の失政だと批判する。しかしそれが原因の一つだとしても、それでは業績の良い会社があることの説明はつかない。真の原因を探る努力をしているのかどうか。ただ政府を叩いておけば形がつくように考えているのではないか。

日本経済を変えていくのは、やはり企業が主役とならなければならない。「政府に問題があるというのは、企業やマスコミにとって自分たちが怠けている口実でしかないのだ」と評論家でジャーナリストでもある田原総一朗氏は、その著書「経営の極意」の中でも語っている。

業績が悪いならやり方を変えよう

田原氏が改めてそう強く感じたのは、日産のカルロス・ゴーン氏に会ってからだという。ゴーン氏はその対談の中で、「私がいつもいっているのは、日産の敵は日産だと。漫然としている、危機感がない、いつも失敗の口実を探す。これが日産の一番の敵です。外部の競争ではありません。そしてこれは、どの企業にもあてはまることだと私は思います」と語っている。

ゴーン氏がいつも戒めているのは、内部的な弱さ、慢心だという。「業績が悪い会社は、経営者が責任を持って反省し、やり方を変えるのではなく、同じやり方をそのまま続けているから業績が上がらないのです。…苦闘している企業はじっとしていてはいけません」。実績を積み重ねてきたゴーン氏の言葉に反論できる余地はない。

自ら責任を取る

ゴーン氏は1999年に日産の最高執行責任者(COO)に就任した。そして掲げた「リバイバルプラン」に、2000年度での黒字達成、2002年度までに連結ベースでの売上高営業利益率4.5%の達成を目標にした。しかも、それができなかった時には会社を辞める、とまで公の場で発表した。

田原氏は「経営者というのはこうあるべきだ」と語る。つまり、マニフェストで具体的な期限、金額などの数字を掲げ、達成できなければ全リスクを取るのが経営者である、と。その実現のためにゴーン氏がしたことは、日産の社内にそれまで長年巣くっていた「他責の文化」を「自責の文化」に変えたことだった。

問題は企業内部にある

ことは日産だけの話ではない。日本の経済の回復基調が伝えられるが、そこにまだまだ力強さが感じられない今日、そうした報道に慣らされていると、いつの間にか業績の悪い、又は目標に到達しないことが当たり前のようになってくる。こうした状況が何年も続くと、企業が本当の危機に直面した時、危機を危機として受け止められなくなってしまう。

「危機だ」といわれても、「それは大変だ」という空気がなかなか醸成されなくなってしまうのだ。業績不振の理由を外的要因に求めるのは無責任な口実作りでしかない。問題は企業内部にある。このことは、何度繰り返し語られても語られ過ぎることはないように思う。特に経営者は自戒の言葉とすべきだろう。

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