【目次】
高すぎても低すぎてもやっかいな目標
今年も年末を迎え、年初に立てた目標が達成できたかどうかを振り返ることも多いだろう。
個人の目標もそうだが、会社の目標はどうだろう。中には毎年目標を立ててはみるが、未達を繰り返すだけで何の益もないとあきらめ半分の人もいるかもしれない。
しかし、個人の目標ならいざ知らず、会社の目標となればあきらめて済ませるわけにはいかない。
結果を云々する前に、目標を立てる際にその目標が現在の立ち位置から見て高いか低いかを気にすることが多い。会社の目標となれば、市場環境の問題もあるが、高すぎると社員はやる前に「できるはずがない」とあきらめてしまうかもしれず、かといって低すぎると仕事をなめてかかるようになる。
目標は経営者の意志
しかし、このことに対して京セラの稲盛和夫名誉会長は、「問題は目標の高い低いではありません。まずは経営者としてのあなたが『こうありたい』と思う数字を持つことです」と著書の中で喝破している。
そして、「経営目標とは経営者の意志そのものなのです。そのうえで、決めた目標を社員全員に、『やろう』と思わせるかどうかなのです」とも言っている。
だから、「『人の心をどうとらえるのか』が、経営において一番大事なのです」と語る稲盛氏。これは経営者だけの問題ではなく、学校の先生であっても、スポーツの監督であっても、人の集団である組織であれば、すべからくその中の人の心理、どうすれば人を動かすことができるかが分かっていることが大事なのだ。
商機に向けて引っ張る
稲盛氏はまた「人は誰でも新たなものに挑戦し、現状を打破したいという気持ちを心のどこかに必ずもっている」と語る。
実際「去年より今年、今年より来年とわずかずつでも伸びることがやる気につながる」と成長を重視した結果、急成長を遂げた中小企業もある。しかし、ただ放っておけば人は安定を好むように、安きに流れていってしまう。
だから、「目標は何か、一体何をやりたいのか、ではそのために何をどうすればいいのか、何度も何度も頭の中でシミュレーションをすれば、やがて商機のありどころが見えてきます。そこへみんなを引っ張っていくわけです」と稲盛氏は経営者の役割を話す。
結局、皆を目標にむけてその気にさせて燃えさせることが経営者の最も大切な役割ということになる。
経営者魂を持っているか
そんな風に考えると、目標に向けた取り組みがどうであったかの振り返りは、経営者として大切な役割をどう実行したかの大切な回答でもある。
しかし、目標を達成した場合はともかく、上場企業の決算報告でも、未達成の場合に残念ながら会社を取り巻く環境のせいにしているものが多々見られる。
こちらは、結果がどうだったのかを知りたいのに、延々と会社を取り巻く環境に恵まれなかったことの説明を行っているのを見ると、いつまでもそうやって嘆いていればいいという気持ちになってくる。肝心なところで経営者としての責任を思うのでなければ、そもそも経営者として失格と言わざるを得ないのである。