人手不足はアメリカでも同じ

人手不足でアルバイトが集まらないという嘆きをよく聞く。実際、コンビニや外食、運輸など業種を問わず切実な求人広告を見かける。

その一方の当事者である学生の意識で何か変わっているのかということを、日本ではないがアメリカにおける話を聞いてみた。アメリカの学生の変化はやがて日本にも及ぶと思うからである。

アメリカではかつて、10代の若者たちはみんな、夏休みになればアルバイトをしていた。私の知り合いのアメリカ人は、肉体労働や、スーパーなどで棚に商品を並べる作業や、新聞配達などをすることで、仕事の尊さを学んだり、世の中における自分の立場について謙虚さを身に付けたりして、大切な人生経験になったものだと話す。

数より意識の変化に注目

しかし、最近ではその様相がまったく変化しているという。今の10代はアルバイトをする代わりに、例えば発展途上国に出かけて現地の公衆衛生改善の手伝いをしたり、ドキュメンタリー映画の制作会社のインターンとして働いたり、アラスカで環境問題について研究したりしているという。

今の10代が他の世代と異なるのは、何はともあれデジタルネイティブの第1世代だということだ。経済状態が厳しい中で育っているため、裕福な家庭で生まれ育ったわけではないが、初めて言葉を発することができたころには、もうテクノロジーを介してインターネット上でつながっていたのだ。

バーチャルな世界に生活


今や目覚まし時計を使う変わりにスマホを使って目を覚ますことは当たり前で、少し前の統計になるが、アメリカの10代の人たちの半数余りが何らかのソーシャルメディアのアカウントを持っており、さらに4分の3近くは常習的に写真を撮ったり、テキストメッセージやメールを送信したりしてスマホを使っている。

彼らは多くの時間をバーチャルな世界で過ごしている。週に平均10時間以上をオンラインで費やしているという調査がそれを物語る。その数字自体もかなり控えめに思える。

アメリカでも若い人たちがスマホから目を離さないで街を歩いている。そうした状況から判断すると、今や起きている時間のほとんどをバーチャルな世界で過ごしているとも言えそうだ。

強い社会的良識

そうした状況は日本の今とも重なるところが大きい。アメリカでは複数の研究で10代の若者が強い社会的良識を持っていることも示しているという。これはそのような情報化時代にあって、社会的不公正や環境問題、政治的不安や対立などについて、意識せざる得ないところからきているという。

通信回線でつながっているこの世界では、外の広い世界の出来事に対して無知でいることは決して許されないということなのかもしれない。それが若者がアルバイトの代りに「高尚な」ことをするようになった原因とされる。

そういう事であれば、日本でも同様のことがこれから起こる。否、すでに起こっているのかもしれない。そんな若者が相手だということを企業側はもっと意識すべきかもしれない。

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