【目次】
ネットビジネスなどで利用
「行動経済学」という学問がある。従来の古典的な経済学では人間の実態とは合わないという声があって生まれたものだ。
従来の経済学が想定する人は「ホモ・エコノミカス」と呼ばれる、常に合理的な判断をするものとして考えられている。まるでコンピューターでコントロールされているような人間をイメージしてもらえればいい。
しかし、行動経済学は人間の心理パターンを実験などから導いて、その傾向を体系化していく学問と捉えられている。
とかく「経済学」と聞けばビジネスに役立たないと思われがちだが、特にネットビジネスではこの行動経済学を応用したマーケティングや商品開発が盛んに行われている。
侮れない損失感
例えば、競馬をしたとする。1つ目のレースで5000円勝ち、2つ目のレースで5000円負けたとする。その時、人は何となく損をした気分になっていないだろうか。この「損した感じ」は、行動経済学では「損失回避リスク」という性向で説明できる。
人間は潜在的に損失を避けたいと思っているので、プラスマイナスゼロでも損失したことの心理的影響の方が強く出るのだ。
一般に人間は利益に対して同額の損失を2倍から2.5倍強く評価する傾向があるとされている。しかも男性より女性の方が強いことが分かっている。企業の職場やマーケティング戦略では留意しておきたいポイントの一つだ。
手書きの方が信用できる
一時、手書きのPOPでベストセラーを生み出した本屋のカリスマ店員の影響を受け、出版社が手書き風のPOPを大量に配ったことがあったが、しばらくは話題となったものの長続きしなかったことがあった。
米国の大学で行った実験で、メールと手書きのメモで情報を伝える場合、メールによる報告は9割が嘘をついていたというものがあった。嘘のつく割合は使う媒体によって違ってくるということだ。
つまり、同じメッセージで信頼してもらうなら、メールを打つより、手紙や手書きのPOP、付箋のメモなどの方が効果的といえる。言われてみれば、頷ける話なのではないだろうか。
変化する経済行動を捕まえる
行動科学の理論は、車のCMにも導入されている。車のCMは購入前の人だけでなく、購入後の人も意識して作られている。高級車の場合、特にそうだ。
これは人間には一旦モノを所有すると「保有効果」というものが生まれる。これは自分が持っているものにより高い価値を感じることだ。その保有効果を高めることで、次の買い替え時も同じメーカーの車に誘導させることができるという。
人間の経済行動は社会の情勢や環境、置かれた状況によって変化する。人間は決して合理的な存在ではない。その前提を踏まえながら、行動経済学の理論をうまくビジネスに活用していきたいと思う。