【目次】
平均点が良くても勝てない
起業するに当たりビジネスモデルの革新性から考えるのも一つの手だが、ある程度経験を積んだ人が起業する場合、やはりそれまでの経験を活かした強い素質を見極め、磨くことが肝要だと思う。
言い換えれば、経験からくる自社の強みと弱みが何であるかをはっきりさせ、強みを活かせる仕組みを考えることが出発点になる。
ところが、往々にして私たちは弱みは敏感ですぐに分かるのだが、強みにはなかなか気が付かない。
学校教育の中では弱みを直すことに重点が置かれてきたが、学校とビジネスとは異なる。
「味も雰囲気もそこそこ」の平均的な店では、味を求める顧客はより美味しい店に行くし、雰囲気を求める顧客はより雰囲気に勝る店に行くのである。
相手より強ければいい
創業したばかりの企業からよく聞く話に、「そうはいっても競争相手は強いところばかりで、そんな競争企業より強い点なんて探す方が難しい」というものだ。
しかし、以下のことをよく考えて欲しい。
まず、強み、弱みは相対的なものであるということだ。
自分から見て「まだまだ」と思っていても、競争相手より強ければそれでいいのだ。
言い換えれば、競争相手の弱みを探せれば、こちらが普通であってもそれを強みにすることができる。
また、部分ごとには強くなくても、全体の組み合わせで見ると強みになることがある。
プロ野球のチームでスタープレーヤーばかり集めてもチームとしてはそれほど強くもないのは、その逆の例だ。
自分の土俵で戦うこと
最後に、強い、弱いはどのような競争のルールで戦うかで決まるものである。
だから、どんなに相撲が強くても、マラソンで勝負をしたら勝てないのと同じで、事業を始める前に、本当に自分がそこでやっていけるのかどうかを考えることが大切になる。
マラソンはダメでも、砲丸投げなら何とかやれそうだという判断は大切だ。
言い換えれば、自分の土俵を見つけ、そこで戦うことが肝要だ。
テキサス大学の清水勝彦アソシエイトプロフェッサーがその著書で言うように、「戦略とは強みを活かすことである」。貴重な資源を弱みを補うために使って、「特に弱いところはありませんが、特に強いところもありません。普通です」と言われて喜ぶ顧客はいない。
市場をよく見る
強みを活かすことは、弱みを捨てることでもある。
もしすべての顧客ニーズを満たそうとすれば、結局誰のニーズも十分に満たせないことはよく言われることだ。
経営にはメリハリが必要だということだ。このメリハリこそが差別化を生むことになる。
そして、繰り返すが「強い」ことが大切なのではなくて、「より強い」ことが競争においては大切だ。
自社製品としては、従来比30%効率化に成功していたとしても、他社がそれ以上に効率的な製品を出しているのであれば、そこに意味はない。
「強み」を考える時、自社のことだけを考えていては市場で競争はできず、戦略として成り立たないにも関わらず、いざ自分の事となると何故かその視点が欠けていることが多いのは残念なことだ。