【目次】
生活苦がのしかかるアメリカ
トランプ大統領が誕生する以前の調査だが、ニューヨークタイムスが発表したアメリカ国内でアメリカンドリームを信じている人の割合は64%だった。
これは世界的な金融不安が強かった2009年の72%より低く、過去約20年間で最低の数値だそうだ。
「家を持つことに」にしても、2006年ごろに住宅バブルが崩壊して以降、住宅ローンの審査が非常に厳しくなり、持ち家率も低下している。
現在では、持ち家のある人の4分の1以上が、持ち家の資産価値を上回る住宅ローンを抱えていると言われている。
近年は景気や雇用状況が改善してきているようだが、教育費や医療費などの高騰が生活に大きくのしかかっているとも伝えられている。
理想化される40-50年代
アメリカンドリームとは何か。
一般にはその頂点は1940年代終わり頃と50年代にあると言われる。
この時代に出現したプレハブ住宅のおかげで人々は郊外に新築の住宅を買うことができ、見事に刈り込まれている芝生の脇のドライブウェイには新車が停まっているなどというのが大体のイメージだろうか。
もっとも、その時代のイメージを理想化しているきらいはある。
過去に対して人々の道徳意識が高く、振舞いも上品だったと見るのが常である。
人種差別や性差別は今よりずっとたくさんあったはずだし、厳然としてある社会のルールには、それを破った人に対する処罰もずっと厳しかったはずだ。
上に向かっていくという感覚
それでも、金銭的にも報われる仕事に就いていた、健康で自己充足感があった、退職後に快適な生活を送るゆとりがあったと言われる。
その点では、現在は以前よりはるかに難しいのかも知れない。
実際、大学教育は多くの中流家庭にとっては費用が高すぎて受けられないものになっているという。
授業料が物価の上昇よりはるかに速いペースで上昇したためだ。
中流家庭そのものが空洞化していると言われるが、子供たちによりよい生活をさせられると確信したいのが普通の家庭だろう。
そして一歩一歩上に向かっていくという感覚が、アメリカンドリームの中心にある。
トランプ大統領はその思いを分かりやすい言葉で代弁して当選したのだ。
日本は大丈夫か?
アメリカ国内ではこのようにその威光が弱まるアメリカンドリームだが、移民問題が世界的に問題になっている今日でもアメリカに行きたいと思っているすべての人たちにとっては、アメリカンドリームはしっかり生きている。
その理想の持つ力が、今なお世界中から何百万人もの人たちが自由とチャンスを求めてアメリカを目指す動機になっている。
他国のことを非難したり第三者的に評価するのは簡単だが、アメリカから日本がまだまだ学ばなければならないことは多い。
「日本は住みやすい」と思っている人は多いと思うが、「ジャパニーズドリーム」という言葉が出てこない社会に未来はあるのだろうか。
ただの安定は将来の後退を意味するだけではないのかと危惧している。