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観光客減に悩むパリ
観光客に人気のフランス・パリを敬遠する中国人観光客が増えている。
アジアからの観光客も急激に減少している。
英紙デイリー・エクスプレスによると、暴力事件や強盗が増えたほか、テロの危険性もあり、安全性を懸念する外国人が増えているという。
パリを訪れる中国人観光客数は、2015年に220万人だったのが、2016年には160万人まで減ったそうだ。
観光客減に悩むのはパリだけではない。
2016年の中国人の香港、マカオ、台湾への旅行者数は前年比で400万人近く減少し、初めて海外旅行者数の半分を下回った。香港への旅行者数の減少は、香港がソウルや東京に比べて「買い物天国」としての魅力を失いつつあることや、中国人にとって香港が自慢できる旅行先でなくなったことの現れと見られている。
受け入れる体制は整っているのか?
香港については別の見方もあって、あまりの中国人客のマナーの悪さに香港の方が中国人客を敬遠した、というものだ。
日本においても、同様の苦情が店舗や宿泊施設に寄せられており、その動きに頷く人も多いかもしれない。
しかし、その苦情の中にも、習慣の違いが原因であったり、不慣れな土地での知識不足であったりすることが多いのも事実だ。
2020年に訪日観光客4000万人を目指す「観光立国・日本」としては、中国人に限らず、今後もまったく異なった文化や背景を持つ人々を受け入れていかなければならない。
私たちは、「不快」に思う行動を「マナーの悪さ」に結び付けるのでなく、文化等の違いを受け入れる「覚悟」と「忍耐」が必要だが、今はまだまだその途上にあるのではないか。
常識を疑え
少し引いて考えると、観光客減の原因になった「安全」「買い物天国」といった最低限のインフラでさえ、「日本だからこの先も大丈夫」とは言えないのに気づく。
日本でテロが起こらないと誰が言いきれるのか。
世界を驚かせた地下鉄サリン事件は1995年の出来事で、人々の記憶にもまだ生々しく残る。
だから、普段から私たちはできることを地道に一つ一つ整備し続ける必要がある。
2020年に向けて整備されようとしている街の標識などは、当然訪日観光客を意識したものになる。
こうした取り組みは、決してその訪日観光客だけのためになるのでなく、私たちのためにもなるものであることを忘れてはいけない。
連携を深めよう
今は「おもてなしの国・日本」という意識が人口に膾炙しているが、それも「おもてなしの心を大切にしている国」という意味であって、実際に「心を込めて接待できている国」だと思い上がってはいけない。
思い上がりは「自分たちが正しい」という慢心につながる。
それは本来のおもてなしの心と反対の態度となって現れる。
今は、インバウンド需要を取り込むことを狙いにしたイベントや交流会などが花盛りだ。
そこで知見を得るのもいいが、出席者同志が連携を取り合って互いに何ができるのかと問い合うのがいい。
そこからまだまだ足りていないことが分かれば、また訪日外国人客を迎え入れる環境が一歩整うことにつながっていく。