【目次】
成功とは何か
ほとんどの人が「成功したい」と思う。でもほとんどの人が「まだまだ」「成功には程遠い」と言う。
それはよく言われるように「成功」の具体的なイメージを持たずに、ただ何となく成功したいと思っているのが原因かもしれない。
つかみどころのないものを追い求めても、それをつかめる日は絶対にこない。
では「ベンツに乗りたい」「六本木ヒルズに住みたい」と目標を具体的に持つとどうだろうか。
そうすれば少なくとも自分が「成功」しているのかどうか、「成功」にどの程度近づいているのかは確かに分かる。
しかし、それが本当に「成功」と言えるのか。
そもそも「成功するポイントはたった一つしかない」と話すのは落語家の九代目林家正蔵氏だ。
心底その商売を好きでやっているか
そのポイントとは、「心底、好きでその商売をやっているか」だと話す。
「好きならば、どんな苦労も楽しいと思える。九代目林家正蔵を継いだ時には風当たりもありました。いろんなことが耳に入ってきました。それでもやってこられたのは、結局落語家にしかなりたくなかったからです」と振り返る。
しかし、九代目林家正蔵氏も落語家になってひどく悩んだ時期もあったという。
「お前は何がやりたいのか?そのために、どういう努力をしようと思っているのか?」と言われて、「どうあがいても親父にはなれない。自分がやりたいのはもっと別の落語だ」ときれいさっぱり、やっと自分の心が落ち着いたと話す。
後を継ぐ者がいるか
企業がうまく立ち上がったとしても、その企業が永続するための最も重要な課題は「後継者の育成」にある。
これは大企業、中小企業、老舗、ベンチャー企業など業態や成長段階の如何を問わず、あらゆる企業にとっても永遠のテーマとされる。
実際、廃業やM&Aが多い背景には後継者がいないことが多く挙げられている。
九代目林家正蔵氏は、芸風が違う父親ではあっても「格好いいなあ」と思ったと話す。
企業においても、後に続く人に追いつき、追い越したくなる背中を見せることが肝要ではないか。
そして、それに対して「任せても大丈夫」と信じる勇気が、次世代を育てていくことになるのだ。
己の個性を磨き、人間を磨く
寄席に来る人たちは、噺を聞きにくるというよりは、その落語家に会いに来る。
高座には舞台背景もなく、化粧もかつらも身に着けず、扇子と手ぬぐいを頼りに座布団の上にただ座って話すだけ。
人間が丸裸にされる。それだけに生根を据えてかからないとやっていけない。起業家などにも通じる話だ。
芸風も異なる九代目林家正蔵氏の祖父や父親から受け継いだのは、そんな落語家の「心意気」だと話す。
お客様に喜んでもらいたいという「心意気」。「そのための精進もやはり好きだからこそ可能になるのです」。
弟子たちに対しても「格好をつけたりはしない。失敗することなんて恥ずかしくない」と思っている。
なんて格好いいんだろう。