〇注目されるイスラエル

米国のトランプ大統領は選挙期間中から米国大使館をエルサレムに移転させると主張し、物議をかもしてきた。

宗教的聖地を含むエルサレムはパレスチナと長年対立が続く係争地である。
トランプ大統領の主張は、公式にイスラエルによるエルサレムの領有を認める姿勢をアピールしたものといえるからだ。

続いて、今年のWBC(ワールドベースボールクラシック)だが、イスラエルがあんなに強かったのが意外であった。

選手のほとんどがユダヤ系米国人で、大リーガーもいる。
ユダヤ教徒やユダヤ人を祖父母に持つ外国人なら容易にイスラエルの市民権が得られるそうだ。
選手たちは大会前にイスラエルを訪問して建国の歴史を学び、「愛国心」を高めたと言う。

〇高まる期待

イスラエルは四国より小さな面積に、大阪府ほどの人口を抱える。
産業は農業やライフサイエンス、ITのセキュリティー関係などに強い。

これにはソ連崩壊の過程で100万人ほどの移民を受け入れたことも作用していると言われる。
そして、スタートアップの企業数が年間当たり600~1000にものぼるのも特徴だ。

日本との関係で言えば、今年外交関係樹立65周年を迎えるが、これまで経済交流は限られていた。
イスラエル製品のボイコット運動を支持するアラブ産油国への配慮から、貿易も消極的だった。

この流れが変わったのが、2014年と翌年にそれぞれの首相が互いの国を訪問し合ってからだ。


 

〇発想力、突破力、開発力

イスラエルに進出しているIT系の企業は、イスラエルの企業が持つ「発想力」「突破力」「開発力」に驚く。

「とにかくリスクを恐れず、既成概念を打ち破り、革新的なことを起こしたいという気持ちがとても強い。
3割ほどがロシア語を理解できるというのも面白い」とその魅力を語る。

大手電子部品メーカーはイスラエルの企業と協業して、「事業化に対する思いがとても強い」と話す。
「米国シリコンバレーのスタートアップ企業には良い意味でも悪い意味でもお金の匂いが強くするが、イスラエルにはそれがない」と日本のモノづくりとの相性の良さを感じている。

〇コラボの勧め

相性は良いだけではない。進出企業が一様に驚くのは意思決定や実行の速さだ。

それに日本と異なり、「暗黙の了解など絶対に通じない」とIT系企業。
「初めて会議に出席した時など、彼らが好き勝手に話し合っているのを見て本当に戸惑った」と振り返る。


しかし、その相違点というのは表面的なものかもしれない。
事実、1年も付き合えば、「彼らが日本の根回しを覚え始めた」と言う。

イスラエル側もその特徴であるイノベーションの力と、日本の持つモノづくりとの組み合わせに期待を寄せる。
日本の新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)でも民間企業同士の共同プロジェクトに資金支援する制度を導入するなど制度面での整備も用意されており、今後その成果が期待されているのだ。

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