【目次】
【新ビジネスに弁護士の影】
ある会合後の懇親会の席上で、そのベンチャー企業の社長は自信満々に事業の先行きを語っていた。
「病院の抱える不良債権がこれで解決できます」。
高額医療費が問題になっているが、高騰する医療費に困惑しているのは国だけでない。 もちろん、個人の身の上にとっても大きな問題である。貧富の格差が注目されている現在である。病院にかかっても、その支払いができずに困っている人が増えているのではないかと容易に推測できる。
そこでこのビジネスである。 支払いの滞っている人に病院から督促状を送る。
もちろん、これまでもしているだろうが、それを弁護士の名前で送付するというのである。
【過払い金請求の時効】
ここ数年、テレビCMでもよく見かけてきた消費者ローンの「過払い金請求」だが、最高裁判所が過払い金の返還請求を全面的に認めたのが2006年。時効10年とする賃金業法の改正が決まったのが2007年なので、2017年までにほぼすべての過払い金が時効を迎えることになる。
個人をクライアントにして、過払い金請求で商売していた弁護士は、ではこれから何をするか。
そこを突いた新ビジネスが、いろいろと出始めている。
先の督促状に関わるビジネスでは、病院だけでなく、その他同様の問題に悩む複数の業界に向けて、弁護士を使ったシステムを売り込もうとしている。「だって弁護士から督促状が来れば、誰だってびっくりするでしょう」。
【中小企業にも訴訟の波】
弁護士の動きに影響を受けるのは個人の債務者だけとは限らない。
これまで「ローコストオペレーション」を追求してきた中小企業も無縁ではない。 大手のチェーン店などで違法な残業が次々に取り上げられているが、例えば、残業未払い請求なども、弁護士に酷な言い方かもしれないが、「商売のタネ」になりそうだ。
企業が労働基準法違反で起訴され、少しでも瑕疵があると敗訴は免れない。
まして中小企業にとっては、売り上げへの直接の影響もさることながら、そこから受けるイメージダウンは生死を左右しかねない。
【増え続ける弁護士】
平成26年3月末現在の弁護士数は約3万5000人。平成6年から平成26年までの20年間の動きを見ると、弁護士数は約2万人の増加で2.4倍となっている。
もともと司法制度改革が目標としていたのは年間3,000名の司法試験合格者を出し、法曹人口を5万人規模にすること。
年間3,000名の合格者というのはどうやら見直されるようだが、今の傾向が急に変わることはなさそうだ。
良かれと思って経営してきた真面目な中小企業の経営者であっても、訴訟社会でエネルギーを費やす前に、今一度会社の仕組みを見直した方が良いかもしれない。