人を集めるために求人広告の労働条件をよく見せて、実際には条件が違っていてトラブルに発展した、というケースは少なくありません。求人内容に偽りがあった場合、虚偽の求人だと追求されても仕方がないでしょう。
そこで本記事では、トラブルになりやすい求人票の特徴をまとめましたので、求人を出す前に該当していないかチェックしてください。
【目次】
応募内容と実際の条件が違うとトラブルになる
求職者からすると、条件が良さそうな会社と思って応募したのに、実際働いてみると条件が違っていた…という会社は非常に困ります。他の会社の内定を断った求職者もいるでしょうし、生活があるので辞めるに辞められない求職者もいるでしょう。
異なる条件で求人広告を出すということは、求職者の生活、ひいては人生まで影響を及ぼすということを忘れてはいけません。
なかなか人が集まらず、条件をよく見せかけてしまったがためにトラブルに発展し、結局求人活動自体がやり直しになると、時間も労力も無駄になります。裁判に発展したケースもありますので、虚偽の求人情報を掲載するのは絶対にしないでください。
トラブルになりやすい求人票の特徴
残業の有無
面接では残業はほとんどないと言っていたのに、入社してみると残業が非常に多いことが発覚した。これはトラブルになりやすい事例です。
残業時間は1ヶ月45時間、1年で360時間という上限があるので、それを超えてはいけません。
家庭の事情で残業が難しい方もいるでしょうし、残業がない、またはほとんどないことが入社の決め手になった方もいることでしょう。実際には残業が多いのに、残業は少ないと偽ると入社後のトラブルになりますので、残業の有無は正確に伝えましょう。
残業代
面接では残業代は出ると言っていたのに実際には払われない、または残業代の割増がされていない。これもよくトラブルに発展する事例です。労働基準法では残業代の割増率が定められていて、8時間を超える通常の残業は25%増しになります。
固定残業代(みなし残業手当)を基本給に含んでいるケースは判断が難しいところですが、無償で残業させるのは違法にあたります。賃金は労働の対価であり、残業に対しても正しく賃金を支払うべきです。
明らかに労働時間内に終わる量ではない仕事を割り振るのは会社の責任ですので、残業が多い社員の仕事量を見直す必要があります。
手取りと額面の認識の違い
手取りと額面では従業員が実際に受け取る金額が全然違ってきます。
手取りというのは税金や保険料を差し引いた残りの金額です。額面は税金や保険料が差し引かれる前の金額で、通常は額面の方が多くなります。
たとえば手取りで20万円と額面で20万円では大きな差があります。手取りはすでに税金や保険料が差し引かれているので20万円が従業員の手元に入る給与になりますが、額面は20万円から税金と保険料を差し引くので手元に入る給与はもっと少なくなります。
手取り20万円と聞いていたのに実際は額面20万円だった…という場合、従業員は生活費の予定が大幅に狂います。企業と従業員の間で認識の違いによってこのトラブルは発生するので、手取りであるか額面であるかは正しく伝えましょう。
仕事内容が異なる
求人広告に書かれていた仕事内容と実際の仕事内容が異なる。面接で希望とは異なる部署に配属される可能性があると伝えることもせず、全く異なる仕事内容で人を集めるのは悪意があると言わざるをえません。
求職者からすれば、その仕事がしたいから応募したのに、またはその仕事ならできると思ったから応募したのに、実際の仕事内容が異なっていると騙されたと感じてしまいます。騙すつもりがなくても、説明不足で仕事内容が正しく伝わっていないのは企業側の責任ですので、求人票や面接では仕事内容を正しく伝えるよう心がけてください。
おわりに:虚偽の求人内容が職業安定法違反になる恐れ
職業安定所で虚偽の求人が多数報告されている現状を受け、厚生労働省は職業安定法の改正に乗り出しています。とはいえ現状は、虚偽の求人に対して行政指導はできるものの、罰則がない状況です。
しかし、改正案が正式に採用されると、虚偽の求人を出した企業は職業安定法違反になります。悪意がなかったとしても、知らなかった、勘違いしていたでは済まされなくなるので、求人内容は充分に精査してから出すようにしましょう。