社員が満足する人事考課制度を作ることは経営にとって大切なポイントです。しかし、非常に難しい問題のひとつでもあります。
人事考課の内容が公正さを欠く場合、不満を感じる社員はどんどん増えていってしまうでしょう。そのため、公正な人事考課を心がけなければなりません。そこで本記事では、社員の不満の原因になる8つの人事考課エラーをまとめました。経営者の方はこの機会に人事考課を見直してみましょう。
【目次】
人事考課で経営者が理解しておくべきことは多い
そもそもなぜ人事考課が必要なのでしょうか。人事考課は給与を決めるためだけのものではありません。納得感のある評価をすることで、従業員のモチベーションを高め、成長を助ける役割があるのです。
人事考課が正しく機能しておらず、いくらがんばっても評価されないと感じられるようになってしまうと、やる気や成長意欲のない従業員ばかりになってしまい、企業全体の生産性が低下してしまいます。反対に、公正に評価をされて、またどんな風にがんばれば評価をされるのか明確になっていれば、従業員のモチベーションが高まり生産性が向上します。
人事考課は経営のキモといっても過言ではありません。経営者は自社の人事考課が公正に行われているか、従業員が納得感を持ってそれを受け入れられているか、常に配慮する必要があることを忘れないでください。
従業員の不満の原因になる8つの人事考課エラー
これよりご紹介する8つの人事考課エラーには、ふたつの共通点があります。それは「公平性を欠いている」「客観的事実を無視している」評価になってしまっているという点です。人事考課では、公平性と客観的事実に基づいた公正な評価を行うことが重要です。
1. ハロー効果
「ハロー効果」は心理学者エドワード・ソーンダイクが名付けた心理学用語で、対象を評価する際、特徴的な一面に大きく影響を受けて他の側面を歪めて評価してしまう現象です。平たくいえば、学歴、肩書き、外見などの特徴に引きずられて、「その人はこうであると決めつけてしまう」現象のことです。
たとえば、「高学歴だから頭がいい」「中卒だから長続きしない」といったように、偏見で判断してしまうと正しい評価ができません。実績以上に高く評価される従業員がいると、他の従業員からしてみれば「大した仕事もしていないのに」という不満を感じます。実績に見合わない低評価をされると、「こんなにがんばっているのに」という不満になります。
このように、ハロー効果はポジティブなもの(良い部分を過大に評価)とネガティブなもの(悪い部分を過大に評価)があります。いずれにしても人事考課エラーであることには変わりません。
2. 論理誤差
論理誤差とは、事実を確認せずに、ひとつの事項から推測で他の事項を評価してしまうことです。たとえば、「知識が豊富だから理解力にも優れているはず」というように、論理的に関係がありそうな事項を勝手に結びつけて判断してしまうことを指します。
本来はひとつずつ精査して評価すべきところを、論理誤差によって推測で判断してしまうと、正しい評価になりません。
3. 対比誤差
対比誤差は、評価者が自分自身の能力や価値観を基準にして評価することです。自分が得意とする分野は厳しく評価する一方、苦手な分野は甘く評価してしまう傾向があります。
このように評価者を基準にしてしまうと、評価者が変わるたびに評価が変わってしまうことになるため、公正な人事考課とはいえません。
4. 中心化傾向
中心化傾向は、当たり障りのない無難な評価をしてしまうことです。極端な評価で反感を買わないように無難にやり過ごしたい人、評価することに自信がない人にこの傾向がみられます。
中心化傾向は本来の評価よりも高い、または低く評価される人が出てくるため、結局は不満を招いてしまいます。「知識がないから評価ができないので、とりあえず平均的な評価にしておこう」という評価の仕方は適切とはいえません。
5. 極端化傾向
中心化傾向とは反対に、評価が極端に偏ることを極端化傾向と言います。差をつけなければと思うあまり、事実よりも極端な評価をしてしまい、最高か最低かの二極化してしまいます。
無難な中心化傾向は良くありませんが、極端に評価に差をつける極端化傾向もまた適切とはいえません。
6. 寛大化傾向
寛大化傾向は、対象者への気遣いや反発への恐れから甘い評価をしてしまうことです。自分の部署や直属の部下を有利に評価するなど、ひいき目で評価する現象を寛大化傾向と呼びます。
近い存在であるために、良く思われたいといった理由で甘い評価をしてしまうと、人事考課の公正さを欠いてしまいます。身内のひいき目で甘く評価したい気持ちはわかりますが、評価はあくまで客観的事実に基づかなければなりません。
7. 厳格化傾向
寛大化傾向とは反対に、厳しい評価をすることを指します。高い能力を持つ評価者にみられ、自分の能力や経験を基準に評価してしまうため、全体的に厳しい評価になってしまいがちです。こちらは対比誤差に近い、人事考課エラーとなっています。
8. 期末誤差
期末誤差は、人事考課に近い時期の仕事ぶりや出来事で評価してしまうことです。直近の出来事が評価に大きく影響なるあまり、それ以前の出来事が評価されなくなります。
人事考課の時期に近づいてきて急にやる気を出してきた部下と、日頃からがんばっている部下では、どちらを評価すべきか言うまでもありませんよね。期末誤差を避けるには、人事考課に近い時期の仕事ぶりだけを見るのではなく、普段から仕事ぶりを見るようにしましょう。
まとめ:もし人事考課エラーを発見したら
人事考課はトライ&エラーの繰り返しで良くなっていきます。誰にとっても完璧な人事考課にすることは不可能ですので、修正をしながらできるだけ公正に評価できる制度を作っていきましょう。そうして改善に取り組む姿勢自体も、従業員の評価に対する納得感を増すことに役立つでしょう。